カリスマコンサルタントの「20年の集大成」

インパクトカンパニー,神田昌典
(画像=THE21オンライン)

『非常識な成功法則』『2022-これから10年、活躍できる人の条件』など数々のベストセラーを輩出し、「日本のトップマーケター」にも選出されたカリスマ経営コンサルタント・神田昌典氏。

その神田氏が、コンサルタント活動20年目の集大成として満を持して送り出すのが、最新刊『インパクトカンパニー』だ。成熟業界、衰退業種の中小企業であっても、「インパクトカンパニー」となることで復活し、世界を目指すことも可能になる。では、そもそも「インパクトカンパニー」とはどういうものなのか。新著から抜粋してお届けする。

法人の99%、従業員の7割……日本は「中小企業」の国である

インパクトカンパニーとは、経済的に成長しながら同時に、事業を通じて社会問題の解決を目指す中小企業のこと。大企業やベンチャー企業ほど目立たない存在ではあるが、これからの社会にとって決定的な影響力(インパクト)を及ぼす。

なぜなら、圧倒的に、その母数が多いからだ。中小企業は、日本の全法人数の99・7%、全従業員数の69・7%を占める。大都市圏を除くと、中小企業に勤める従業員比率は85・0%と、さらに増える。

この巨大セグメントが、新しい時代への適応に遅れたら、地元の雇用は少なくなり、地域社会の衰退はまぬがれない。

逆に、ほんの一部の会社でも、社会問題の改善をもたらしながら、成長を実現する事業に取り組み始めたら……これは、とても面白いことになる。高齢化社会・先進国の日本だからこその、地域社会創生のモデルを、世界に向けて描き出せるといっても大げさではないだろう。

「会社存続の危機」を迎えた会社こそ、変わることができる

「インパクト」という言葉は、すでに金融分野で使われている。「インパクト投資」とは、経済的利益を確保しながら同時に、貧困や飢餓、差別、環境破壊といった社会的問題の解決を目指す投資手法だ。同様に「インパクトカンパニー」は、自らの事業展開を通じて、社会問題の解決に取り組む会社のことだ。

ベンチャーが0から事業を立ち上げるのに対して、インパクトカンパニーは、成熟した既存事業から、新しい成長を創り出す。その際、既存事業の延長で成長するのではなく、ビジネスモデル自体を劇的に進化させるのだが、そのプロセスには、一定のパターンがある。

大抵の場合、それは会社存続の危機から始まる。

業績が壁にぶつかった結果、捨てるべき事業、引き継ぐべき事業が総点検される。事業を絞り込んだ後、ほどなく自分たちにしか実現できない未来が浮かび上がる。価格競争を繰り返す会社の日常が、社会的要請に突き動かされる日常に変わる。個人プレイがチームプレイへと進化する。マスコミに頻繁に報道され、地方の小さな会社でも、世界から注目されるようになるといった具合だ。

要は、限られた市場の中で硬直しかねない事業が、未知なる領域へと飛び出し、未来から応援される事業へと変わるのであるが─―、私の観察によれば、インパクトカンパニーへと進化し、本格的な成長をスタートできるかどうかの転換点が訪れるのは、創業20年へと向かうタイミングである。