老後の暮らしの支えになってくれるのが「年金」です。企業にお勤めの方なら、国の制度である「国民年金」と「厚生年金」に加え、さらに勤務先の会社が独自で用意している「企業年金」を受け取れるかもしれません。企業年金には税金がかかりますが、その金額は受取方法によって変わります。詳しく見てみましょう。

企業年金の受取方法には「一時金」と「年金」がある

企業年金,税金
(画像=PIXTA)

お勤めの会社にもよりますが、企業年金を受け取るときは、まとめて一括でもらう「一時金」方式か分けてコツコツもらう「年金」方式、どちらにするか自分で選べることが多いです。中には、「一部は一時金として受け取って、残りは年金として受け取る」など両方を合わせたような方法を選べることもあります。

いろいろな選択肢があるのはいいことですが、どれを選べばいいのか迷ってしまうかもしれませんね。まずは、どちらがお得なのか、受け取り方による税金額の違いを比べてみましょう。

企業年金にかかる税金はどのくらい?

企業年金を受け取るときの税金には優遇措置があり、一時金なら「退職所得控除」、年金なら「公的年金等控除」が受けられます。「控除」には支払う税金額を安く抑える効果があります。それぞれの控除額は以下のとおりです。

一時金で受け取る場合

一括で受け取る金額が「退職所得控除額」以下なら、税金はかかりません。それ以上の金額を受け取った場合も、実際に課税対象になるのは超えてしまった分の2分の1だけです。退職所得控除額の計算では「勤続年数」がポイントで、長く働いているほど税金がお得になります。具体的には以下のとおりです。

勤続20年以下……40万円×勤続年数(80万円に満たない場合には、80万円)
勤続20年超……800万円+70万円×(勤続年数-20年)

例えば、30年間働いてきた人が2,000万円を一括で受け取る場合の退職所得控除額800万円+70万×(30年-20年)=1,500万円です。さらに、退職所得の計算は「退職金2,000万円-退職所得控除額1,500円×2分の1」となり、250万円が退職所得として課税される金額になります。

年金で受け取る場合

年金として受け取る場合は「雑所得」として課税されます。その課税金額は、下の表の「(a)公的年金等の収入金額の合計額×(b)割合-(c)控除額」で計算します。

企業年金,税金

例えば、60歳から年間150万円ずつ受け取る場合、150万円×75%-37万5,000円=「75万円」が雑所得となり、他の所得と総合課税され税率がかけられます。ちなみに、「企業年金を何歳から受け取れるか」「何年間受け取れるか」は勤務先の会社によっても自分がどう設定したかによっても違いますよ。

年金受取は確定申告が必要な場合も

国民年金、厚生年金、企業年金など公的年金などの合計額が年400万円を超えるか、公的年金等以外の所得金額が20万円を超える場合は確定申告が必要です。また、上記にあてはまらず確定申告をする必要はない方でも、しておいた方が還付金を得られてお得になるケースがあります。例えば、下記のような場合は所得税が還付される可能性があるので押さえておきましょう。

・1年間で一定額以上の医療費を支払った場合(医療費控除)
・ふるさと納税など寄附をした場合(寄付金控除)
・生命保険や地震保険を契約している場合(生命保険料控除・地震保険料控除)

利用できる「控除」がある場合はできれば確定申告しましょう。

結局、どっちがお得?

勤続年数などにもよりますが、税金の面からみると「一時金」で受け取る方が優遇されていてお得に見えますね。ただ、それだけで決めてしまうのは早計かもしれません。確かに、まとまったお金で受け取ると、日々の生活費としてだけではなく住宅ローンの繰り上げ返済にあてることができたり、長期の旅行など老後にやりたかったことを実現するための資金になってくれたりするメリットがあります。

ただ、それは逆に年金としてコツコツともらうよりも散財してしまいやすくなるという点はデメリットです。また、定年や早期退職などで退職金をもらっている場合、そちらで退職所得控除枠を使ってしまっているケースもあります。いざ年金を一括でもらおうにも枠があまり利用できないということにならないよう、事前にしっかり確認しておきましょう。

年金の場合は、長い期間にわたって少しずつ受け取っていくので、その間も利息が上乗せされ、自分で運用しなくても増えていきます。また、一生涯もらえる終身年金タイプを選択していれば、長生きすればするほど受取総額が大きくなっていきますので、一時金よりお得になるでしょう。

自分が加入している企業年金の種類と、受け取り方それぞれのメリット・デメリットを考えて、一度シミュレーションをしてみることをおすすめします。

受取方法は老後のライフプランにあわせて選ぼう

「年金」と「一時金」、どちらを選ぶべきなのかは受け取る人の所得状況や家族の有無によっても異なります。

・退職するとき企業年金以外の収入や貯金はどのくらいあるのか
・老後にどんな生活を送りたいのか
・お金の管理ができそうか
・何を重視するのか

例えば、上記のようなことを受け取る前に検討しておくことも大切です。自分の会社ではどのような方法が選べるのかを確認したうえで、自分にとってメリットが大きい受け取り方を選びましょう。家族で話し合ったり、頼れるプロに相談したりするという方法もあります。ようやく今までがんばって働いてきた分を受け取れる段階に入るのですから、損しないよううまく活用したいですね。

文・馬場愛梨(ファイナンシャルプランナー・心理カウンセラー)/fuelle

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