• 追加関税は延期され、クドロー氏は中国との貿易合意を約束した。しかし、株式市場は弱気である。
  • 小型株は大型株より上昇している
  • 経済統計は景気減退を示す

3月1日、アマゾン(NASDAQ:AMZN)は食料品スーパーを全米で展開する準備を進めているというポジティブな報道や、アップル(NASDAQ:AAPL)の新製品に関する報道の後、テック株は上昇していた。3月1日の中国製品への追加関税の延期を米政府が表明したことも株価を下支えしている。

S&P 500、ダウ平均株価, ナスダック総合指数、ラッセル2000は上昇している。米国債利回りは持ち合いを上放れし、米ドルを上昇させた。

しかし、ドナルド・トランプ米大統領が貿易協議に対して前向きな見解を述べた後の市場の反応は薄かった。また、ラリー・クドロー国家経済会議(NEC)委員長は2つの経済大国が歴史的合意の真っただ中にいると述べた。これらを踏まえて、投資家は市場が上昇することを予想するはずであった。

追加関税の延期は既に織り込み済みであったとはいえ、特に実際の進展と報道が相反している時、投資家は米中合意の報道に関して飽き飽きしていると考えられる。

ナスダックはアウトパフォーム、小型株は続伸

3月1日のナスダックは0.83%高でアウトパフォームしている。アマゾンが新しいブランドで食料品スーパーマーケットの出店を計画しているとの報道や、アップルのティム・クックCEOが株主総会の場で「皆が驚くような挑戦的な新製品のために、準備をしていると述べたことがナスダックの上昇に寄与した。

ナスダックは週次では0.77%高で10週続伸となっており、12月の底値以来20.05%高となっている。これは、2000年にはじけたドットコムバブル以来で最長の強気相場である。テクニカル分析の観点では、3月1日の日足と週足の両方で首つり線を形成しており、その後の終値がそれぞれの実体を下回った場合、下落となるだろう。

3月1日のラッセル2000は0.71%高で2番目にパフォーマンスの良い指数となった。なぜ貿易協議が合意に近付いているのに、小型株が大型株をアウトパフォームし続けているのか。我々が以前から指摘していたように、貿易摩擦が始まって以来、ラッセル2000の値動きは不可思議ではあるが、このパターンを繰り返している。

貿易摩擦が最高潮に達していた時、投資家は貿易摩擦の影響を受けない小型株に投資していた。しかし、貿易摩擦への懸念は後退したものの投資家は大型株へ資金を移動していない。この理由については、以下のような可能性が考えられる。

  1. 市場が貿易協議の進展を好意的に受け取っていない。投資家は貿易協議が合意に達すると信じていない。もしくは、まだ広く知られていない何かが市場に織り込まれている。
  2. 投資家が市場に対する冷静な視点を失っている。

実際の理由が何であれ、不確実性は市場においていまだに根強い。ラッセル2000は、日次では上昇したものの、週次0.03%の下落となり、9週間の上昇を終えた。これは、6か月間で最長の上昇幅である。

ダウ平均も9週連続の上昇を終えた。3月1日の同指数は0.43%高でアンダーパフォームであり、週次では0.02%安となっている。仮に同指数が今週も上昇していた場合、1995年以来で最長の上昇幅となっただろう。

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(画像=Investing.com)

3月1日のS&P 500は0.69%高となっており、16週ぶりに2800のラインを上回った。今年度の最長の下落から立ち直っている。

3月1日のエネルギーセクターは、原油価格が3日ぶりの安値を記録しているにもかかわらず、1.84%高で12月3日ぶりの高値となっている。消費財セクターは0.18%安、貿易協議に敏感な素材セクターは0.13%安、不動産セクターは0.12%安となっている。

週次ではS&P 500は0.39%高となっている。貿易協議に敏感な素材セクターは1.43%安、エネルギーセクターは1.05%高となっている。テクニカル分析の観点では、2月25日の高値以来のレジスタンスラインで、3月1日の日足が首つり線となっている。週足では上下に長いひげを付けており、値動きの方向性が欠如していることを表している。

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(画像=Investing.com)

一方、米10年国債利回りは50日移動平均線を上回っており、今後1月18日の高値をテストするだろう。

高い利回りは国外からの米国債への需要を引き付けるので、米ドルも高値となっている。我々は200日移動平均線で3回反発した後、2月15日の高値を上回るかどうかを注意深く観察している。

景気減退が下押し

株式指数は続伸している一方で、モメンタムは衰えているように思われる。我々の考えでは投資家が本当に重視しているのは経済動向である。

世界の製造業は低調なままである。中国、日本、ユーロ圏は、製造業において減退の兆しが表れている。昨年第4四半期の米GDPは2.6%の上昇であったが2018年の2.9%を下回っている。同様に2019年第1四半期の見通しも約1.5%で昨年のほぼ半分となっている。

さらに、利上げの可能性も市場にとって逆風となっていると考えられる。加えて、ジェローム・パウエルFRB議長がFRBの方針について「忍耐強く」という言葉を使用した場合、FRBはハト派的な政策方針であると市場は受け取っている。

世界の製造業低迷の情勢や、利上げに対する懸念がもはや関係ないと仮定すると、何が投資家の食指を鈍らせているのか?投資家はいかなるレトリックではなくFRBによって明確な政策転換を待っているのかもしれない。

もしくは、挙げた理由の全てであったり、プロの投資家はFRBのハト派色が強まっても、まだ買いに入ってないのだろう。先週の議会証言で、上院銀行委員会に対してパウエル議長は以下のように述べた。

「私が忍耐強く対応するという表現を用いるとき、本当に意味していることは政策を転換するかどうかの判断を急いでいないということである。我々は忍耐強く対応し、事態が進展することを良しとしている。また、経済統計が新たに公表されることも待たれる」

これは、1月のパウエル議長の発言以来、我々が主張してきたことである。

今週はニューヨーク連銀のジョン・ウィリアムズ総裁、ボストン連銀のエリック・ローゼングレン総裁、クリーブランド連銀のロレッタ・メスター総裁そしてパウエル議長の発言が控えており、「忍耐強く」の本当の意味が焦点となる可能性がある。彼らは市場に対して政策の調整がすでに行われていることを説明するのだろうか。それとも、市場の混乱を避けるために、新たな経済統計が公表されるまではあいまいな態度を貫くのだろうか。(提供:Investing.comより)

著者:ピンカス コーエン