金に代わってパラジウムの時代が来た。パラジウムは1オンス1500ドルの記録を破り、2000ドルに達するかもしれないと、アナリストは語っている。投資家はオルタナティブ投資として金からパラジウムに変更する機会となっている。

パラジウムはガソリンエンジンの触媒や排ガス洗浄装置に使用される。アクセサリーやリスク回避時の安全な投資先として用いられてきた金の存在は、昨年12月からパラジウムに覆い隠されている。

5日のパラジウムのスポット価格は1オンス1530ドル台であったのに対して、金スポット価格は1290ドルとなっていた。

パラジウムが金を800ドルまで上回る可能性

パラジウムの価格は金を約250ドル上回っているが、パラジウムがアナリスト目標価格である2000ドルまで到達するとともに、金相場が停滞するか1200ドル以下に下落した場合、その差は800ドルまで広がる可能性がある。

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(画像=Investing.com)

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原油価格と同じように、鉱業のストライキや生産停止によって需要が供給を上回っており、パラジウムの価格が年初から25%上昇しているのはバブルであり、もうすぐはじけるという人もいる。また、米中貿易戦争が依然解決に至っていないことや、世界経済の懸念によって投資家は安全資産を保有することで、金相場は1300ドル台に回復する可能性があると主張している。

そういった考えはあるものの、多くのアナリストは自動車メーカーからの需要の急騰や供給量のさらなる減少によって、パラジウムの急上昇は今後も続くとみている。

バンク・オブ・アメリカがパラジウムの目標価格を22%引き上げ

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの貴金属ストラテジストは、今年度のパラジウムの目標価格を1オンス1800ドルへと22%引き上げ、ピーク時で2000ドルとした。

Investing.comのアナリストもパラジウムを「強い買い推奨」とし、今後も価格上昇が続くとみている。だが、ピーク時の価格は1オンス1608.9ドルとしている。

パラジウムに対して楽観的な見方をしているのはメリルリンチだけでなはない。

UBSの貴金属ストラテジストのジョニー・テーベス氏もパラジウムのピーク価格を2000ドルとしている。しかし同氏は価格の下落も十分起こりうるとブルームバーグに対して語った。

メリルリンチは4日、パラジウムの予想は「市場のファンダメンタルに基づいている」との見解を示した。

加えて、

「過去の需給や価格チャートによって、通常コモディティの今後の方向性を予想することができる。原油価格の場合、価格弾力性から今後数年間で1バレル50~70ドルで推移すると考えられる。しかしパラジウムの需給は非弾力的であるため、在庫量の減少による今後の価格の方向性を予想することが難しい」

同社は近年の在庫が継続的に減少していることで、パラジウム確保への懸念がますます高くなってきていると指摘した。

世界中の4分の5以上のパラジウムは、ロシア産のニッケルと南アフリカ産のプラチナの副産物として存在している。そのため、供給量は両資源からの生産が上手くいくかどうかにかかっているのだ。

プラチナ、ロジウムはパラジウムの代替資産とはならない

比較的容易に入手できるプラチナが代替資産として用いられる一方で、自動車メーカーがパラジウムを基にした触媒コンバーターを効率よく使用できるには技術の進化が必須だろうと、触媒コンバーターメーカーのジョンソン・マッセイ(Johnson Matthey) (LON:JMAT)は言う。プラチナの価値はディーゼルエンジンによって上がっているが、フォルクスワーゲンVolkswagen (DE:VOWG_p)が2015年に排気量の不正発表を行い、ヨーロッパのディーゼル車の生産が減って以降、価値を落とした。

ロジウム)はその代替資産となる可能性があるが、供給量は市場で取引できる規模ではなく、パラジウムに劣る。

先月発表された白金族金属の今後の見通しについてジョンソン・マッセイは次のように述べている:

「排ガス規制の強化が予想されることで、ヨーロッパ圏や中国の自動車メーカーからの二桁台の需要増を引き起こし、パラジウムの供給不足は2019年に拡大するだろう」

「スクラップから回収される2次的供給は増加すると見られている。しかし、1次的供給が横ばいであると予想されている一方で、2次的供給の増加率は2018年を下回る可能性が高い」

貿易交渉へのリスク回避として、金ではなくドルに流れる

金相場の問題は供給量ではなく投資家心理である。米中貿易協議の進展によって、金は1200ドル台へと下落している。Investing.comのテクニカルアナリストは、金スポットに対して「強い買い推奨」とし、今後の安値を1266.84と予想している。

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(画像=Investing.com)

金は長らくの不振から一転、1月20日に7ヶ月高値の1300ドルに突入したが、先週には再び下落に転じた。ブレグジット(英EU離脱)や世界経済の減速に警戒して、中央銀行が大量に金を購入したと最近報じられ、金に対して強気な見通しをしていた投資家は愕然としただろう。

金は米中貿易戦争のヘッジ資産としてドルに代替されてきたが、ドルの方がより安全資産であるとの認識から、ライトハイザー米通商代表が米中貿易協議での合意には未だほど遠いと発言した先週以降、金に代わってドルの価格が上昇している。

皮肉にも、4日には中国政府がライトハイザー通商代表の発言と反して、貿易協議はかなりの進展があったと発言し、米国債利回りの上昇とともにドルは再び上昇した。(提供:Investing.comより)

著者:バラーニ クリシュナン