まず、前提として知っておいていただきたいことは、「遺言書に書いたことすべてが、法的に拘束力を持つわけではない。」ということです。

では、遺言書の内容でもどのような事項が法的に拘束力を持つのでしょうか。

1.相続に関する事項

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(画像=(写真=William Potter/Shutterstock.com))

①相続分の指定、又はその委託

法定相続分とは異なる割合で遺産分割を指定できます。また、その指定を第三者に委託することも可能です。(遺留分※に注意が必要です。)
※遺留分とは、民法が法定相続人に保証している最低限の財産を相続する権利をいいます。 配偶者や子は法定相続分の2分の1、親のみが相続人である場合は法定相続分の3分の1を請求することができ、遺留分の権利を主張することを、「遺留分減殺請求」といいます。

②相続人の廃除、又は廃除の取り消し

遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待や、重大な侮辱を加えたり、その他の著しい非行があったときにおいて、財産を相続させたくない場合は、その人を相続人から廃除することができます。また、廃除した事実を取り消すことも可能です。

③特別受益分の持ち戻しの免除

生前に贈与したものを、遺産の前渡し分として計算する、「特別受益」という制度があります。通常、特別受益の分は、相続財産に戻したものとして相続分が計算されます。これを「持ち戻し」というのですが、これを遺言によって免除する事ができます。

④相続人相互の担保責任の指定

遺産分割後、誰かの受け取った財産に過不足や問題があった場合に備えて、民法に定められたものとは違った担保の方法を指定できる。

⑤遺留分※1の減殺方法の指定

法定相続人が、遺言によって侵害された遺留分を戻すよう請求したときに備え、どの財産から戻していくのか、その順番と割合を指定することができます。

⑥祭祀承継者の指定

墓地や仏壇を受け継ぐ者を指定することができます。

⑦遺言執行者の指定

遺言を執行させるため、弁護士や行政書士などの専門家を遺言執行者に指定することができます。また、その執行者の指定を第三者に委託することもできます。

2.財産処分に関する事項

①遺贈

法定相続人以外の人に遺産を与えたい時などに利用します。

②寄付行為

財産のすべてまたは一部を、社会事業に寄付する、財団法人の設立のために提供することができます。

③信託の指定

財産管理やその運用を、指定した信託銀行に委託することができます。

3.身分に関する事項

①子の認知

婚姻外で生まれた子(いわゆる隠し子、愛人の子など)を認知することができます。認知された子には相続人となる権利が発生します。

②未成年の後見人を指定

未成年の子の生活や教育、財産管理などを委託する後見人を指定することができます。

③後見監督人の指定

後見人が責任を果たしているかを監督する後見監督人を指定するすことができます。

次に、遺言書に書いても法的拘束力を持たない事項は以下のとおりです。

1.相続人の結婚や離婚について
当事者の合意が必要なので、遺言で強制することはできません。

2.養子縁組
遺言で指定しても、当事者の死後に養子縁組を行うことはできません。 もし養子縁組しておきたい人がいるのであれば生前に手続きをしておく必要があります。

3.遺体解剖や臓器移植
遺体は家族の所有物とみなされるので、遺言で望んでも家族の同意がなければ実行されません。

4.葬儀や香典に関する指示
法的拘束力はありませんので、信頼できる人を祭祀承継者に指定しておくといいかもしれません。

(提供:チェスターNEWS