10日に発生したエチオピア航空機の墜落によって乗客157人全員が死亡した。今回のボーイング(Boeing) (NYSE:BA)機の事故は5ヶ月間で2度目となる。1968年初期に登場して以来、民間機としてベストセラーとなった737型機の最新版である737 MAX 8型機は、さらなる惨事を引き起こしてしまった。51年間で当モデルは1万機販売されている。

10日の事故発生以降の発表された報告によると、今回の事故はフライトコントロールシステムに問題があったとされている。事件後、多くの航空会社やヨーロッパ、アジア、中南米の規制当局は737 MAX 8型機の使用を禁止している。米議会では米国内での同機材の使用を自主規制するよう求めているが、FAA(アメリカ連保航空局)は現在のところ同機材は「運航可能」と発表している。

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(画像=Investing.com)

TradingView: Boeing

11日の米国株式市場が開けてから、ボーイング株は激しいボラティリティにさらされた。取引開始当初、同社株は8日の終値422ドルより12%安い371ドルで窓を開けて下落したが、終値は7.8%安の400ドルで取引を終えた。12日には前日比6%安の375.41ドルで取引を終えた。現在の下落局面は、今後の更なる下落の始まりに過ぎないのか?

パニックによる売り、その後は回復すると予想できる

昨年10月に、インドネシアのライオン航空での737 MAX 8型機の事故が発生した時の株式市場での反応と同様の動きを今回もしていた。当時事故の報道が流れた際、ボーイング株は下落したが取引終了時に向けて株価は回復基調となっていた。報道によるパニックによって株価は8.8%安となったが、その後48時間以内には事故発生前の株価水準まで回復した。

同様の事例は2013年にもあった。欧米の航空局がボーイング787 Dreamliners型機のリチウムイオン電池に不備があるとして、使用を禁止した際にも同社株は同様の動きをしていた。同報道によって、同社株は6.5%安となったが翌営業日には反発し、年度末には97%の上昇となった。

このようにボーイング社は似たような事例を経験しており、今回も同様に順調に回復することが見込まれる。

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(画像=Investing.com)

投資家やアルゴリズム取引では、「ボーイング機が事故を引き起こしたので売られやすい」という単純な理由で動くことがある。

しかし、その根拠は誤っている。飛行機事故には多くの原因が考えられるが、たいていの場合はボーイング社の航空機の不備ではなく、航空会社側の不備によるものであるからだ。

また、事故が発生してから詳細な調査報告が発表されるまで、数年とは言わないが数ヶ月を要する。事故現場から情報を収集することは単純な作業ではなく、決定的な結論を突き止めるのは難しい。多くの場合結論には至らず、報告書は証拠にかける場合が多い。

前例として、5年前にマレーシア航空機が事故を引き起こしてから今日に至るまで、決定的な原因は未だ見つかっておらず、停電やハイジャックといった全く違う説が挙がっている。

今回のケースは以前と異なる可能性があるのか?

答えは、はい、いいえどちらとも言える。5ヶ月間で同737型機が墜落したケースは未だかつてないため、今回の問題は深刻に捉えられるはずだ。また、世界の規制当局は一時的に同機材の使用を禁止していることも大きな懸念要因となっている。

ボーイングはエアバス(Airbus Group) (PA:AIR)と共に航空機器製造産業を複占している。参入障壁が高いため、新規で参入される恐れが無いことは強みである。

加えて、エアバス、ボーイング共にそれぞれの政府からかなりの補助金を受け取っている。ボーイングの場合は米政府から、エアバスの場合はフランス、ドイツ政府から減税という形で受給している。それは少なからず、航空産業を管理することで軍事、民間用それぞれにおいて恩恵をもたらすからであろう。同産業の今後の方針を掌握することで、国レベルで航空開発で優位に立つことができ、将来の衝突においてかなり有利となる。

米政府がボーイングを引き続き擁護していく限り、同社は長期的に再起するだろう。また、ちょうど先月にエアバスがA380の生産中止を発表したため、ボーイングは大型機市場で独占的な位置づけとなった。

また同社は5000機を上回る737型機の発注を受けている。2015年に同社は「今後20年間でボーイングは3万9600機の発注を予想しており、その規模は5兆9000億ドルを超す」と発表している。同社の発表によると、航空機の需要は今後数十年間でさらに高まるという。

12日のウォールストリート・ジャーナル紙の報道によると、「ボーイングは現在737 MAX機のフライトコントロールシステムの大幅な変更を行っており、同社の対応は専門家の想像以上である」と伝えている。また、同記事では米航空当局が「4月末までの変更を命じる」ことが予想されると述べている。

2013年にボーイングが787型機の修理に3ヶ月を要した時の事例をもう一度挙げると、問題が解決した後には同社は引き続き順調に営業を続けていた。そのため、同社は安全性の問題を解決する能力を有するとはっきり言える。

要点

これらの要素を考慮すると、ボーイング株は保有すべきであると考えられる。現在の政治環境に関わらず、同社の順調な経営は米国にとって恩恵となる。

加えて、同社は創業当初から102年間、安全性に関する様々な問題に直面してきた。1985年に520人が亡くなった日本航空123便の墜落事故、乗客283人と乗員15名が死亡した2014年のマレーシア航空17便の事故といった大きな問題を同社は乗り越えている。

1970年代の年間平均死亡者が2000人を大きく上回っていたのと比較すると、昨年は399人となっており、航空機の安全性は向上していることは明らかである。航空産業が前進する中では、ボーイングは自社の開発によって大きな収益成長が十分見込まれるだろう。(提供:Investing.comより)

著者:クレメント チボー