コアCPI上昇率は前月から0.1ポイント低下

消費者物価
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総務省が3月22日に公表した消費者物価指数によると、19年2月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.7%(1月:同0.8%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント縮小した。事前の市場予想(QUICK集計:0.8%、当社予想は0.7%)を下回る結果であった。

消費者物価
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生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比0.4%(1月:同0.4%)となり、上昇率は前月と変わらなかった。生鮮食品が前年比▲11.0%(1月:同▲11.1%)と2ヵ月連続で前年比二桁の大幅下落となったため、総合は前年比0.2%(1月:同0.2%)と引き続きコアCPIの伸びを大きく下回った。

コアCPIの内訳をみると、電気代(1月:前年比7.2%→2月:同7.7%)、ガス代(1月:前年比5.6%→2月:同6.2%)の上昇幅は拡大したが、灯油(1月:前年比6.3%→2月:同1.6%)の上昇幅が大きく縮小し、ガソリン(1月:前年比0.6%→2月:同▲1.3%)が2年3ヵ月ぶりの下落となったことから、エネルギー価格の上昇率は1月の前年比4.9%から同4.5%へと縮小した。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

一方、電気掃除機(1月:前年比▲15.1%→2月:同19.3%)、電気洗濯機(1月:前年比▲0.6%→2月:同2.3%)、ルームエアコン(1月:前年比▲1.1%→2月:同4.1%)が下落から上昇に転じ、家庭用耐久財(1月:前年比0.2%→2月:同3.5%)の上昇幅が拡大したことがコアCPIを押し上げた。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.36%(1月:0.39%)、食料(生鮮食品を除く)が0.14%(1月:0.16%)、その他が0.20%(1月:0.25%)であった。

上昇品目数が減少

消費者物価指数の調査対象523品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、2月の上昇品目数は268品目(1月は272品目)、下落品目数は188品目(1月は185品目)となり、上昇品目数が前月から減少した。上昇品目数の割合は51.2%(1月は52.0%)、下落品目数の割合は35.9%(1月は35.4%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は15.3%(1月は16.6%)であった。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

上昇品目数の割合は18年8月に50%を割り込んだ後、9月以降は再び50%を上回っている。しかし、17年までに比べるとその水準は低く、物価上昇に裾野の広がりは見られない。先行きは、輸入物価下落の影響が国内物価に波及することにより、下落品目数が増加することが見込まれる。

コアCPI上昇率はさらに鈍化へ

コアCPIは19年1月に4ヵ月ぶりに伸びを高めたが、2月は再び伸びが低下した。原油価格(ドバイ)は18年末に50ドル程度まで下落した後、足もとでは60ドル台後半まで持ち直している。このため、ガソリン、灯油の前年比上昇率は再び高まることが見込まれるが、原油価格の動きが遅れて反映される電気代、ガス代は今後上昇率が鈍化し、エネルギー価格の上昇率は19年夏頃には前年比でほぼゼロ%程度となる可能性が高い。

消費者物価
(画像=ニッセイ基礎研究所)

また、サービス価格との連動性が高い賃金は伸び悩みが続いているが、19年の賃上げ率は前年を若干下回ることが見込まれる。基調的な物価上昇圧力が高まる材料が見当たらない中、物価は当面低空飛行を続けることが予想される。現時点では、コアCPI上昇率は19年度入り後にはゼロ%台半ばまで鈍化すると予想している。

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斎藤太郎(さいとう たろう)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長・総合政策研究部兼任

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