こんなにもアメ車っぷりを感じるモデルは他にない!
グローバル戦略の名のもとに、車はどんどん均一化されてきていると思う今日この頃。
キャデラック コンコースほど“アメ車っぷり”を感じさせてくれる車は、もう登場しないのかもしれない。
中でも注目しているのは日本最後の正規輸入となった、7代目「コンコース」である。
アメリカでは「ドゥビル・コンコース」と呼ばれていたもので、日本では1993年から99年まで販売されたものだ。なお、後継モデルは「ドゥビル」の名称だった。
全長は5.3mオーバー、排気量は4.6L、とアメリカの広大さを感じさせるサイズ感であることは事実だ。
とはいえ、よほど狭い道を走ったり、キツキツのコインパーキングに止めようとしたりしない限り、目くじらを立てるようなものでもない。
おまけに最近では珍しくなったフロント3名、リア3名の6名乗車が可能。肩肘寄り添わせて運転できる車、そうそうあるものではない。
もっとも、コンコースはキャデラックのフルサイズの高級セダンである。
オーナーがドライバーとしてステアリングを握っても、オーナーがリアに座ってショーファードリブン(運転手付き)として使うことも考慮されている。
実際、コンコースは高級フルサイズセダンとしては珍しく、FFを採用しており、ホイールベースも2890mmと長めなので広さで文句はない。
一般的にリアシートのリクライニング機構は、ロングホイールベースに個別に設定されるものだが、コンコースにはフツーに装備されている。
タイヤをボディ四隅のギリギリに配置して運動性能を……、なんてうんちくは一切ない。
スポーティに走ることは想定されていないからだ。
絶対的な性能は同時期のライバルに劣るが……
オーバーハングはフロントもリアも長めで、高級セダンとして美しいスタイルを実現させているのと、たっぷりの荷物をトランクに収めることができるようになっている。
同時期のフルサイズセダンといえば、メルセデス・ベンツ Sクラス、BMW 7シリーズ、アウディ A8、レクサス LS(日本名:セルシオ)、インフィニティ Q45(日本名:日産シーマ)などが挙げられる。
悲しいかな、絶対性能を比較してコンコースの優位性を見いだすことはなかなか難しい。
ものすごくネガティブなことを記しながらも、振り返ってみればコンコースは個性で満ちあふれていた。
高級セダンという軸足からまったくブレがなかった。少なくともキャデラックが考える「高級」からは。
足回りは柔らかいセッティングでフラットライドを追求し、アメリカの広いハイウェイをひたすら快適に走ることを前提としていたのだろう。4.6L V8エンジンは300ps弱で必要十分。
車重は1.8トンほどあるので軽快感はなく、前述のとおりスポーティさも考慮されていない。
「ゆったり、おおらかに、エレガントに」が当時のキャデラックが思い描いていた高級感なのだろう。
フロントがベンチシートなのも、ソファ感覚さながらゆったり、おおらかに、エレガントに、座ることが考えられていたと今は思える。
1モデルで複数のマーケットをターゲットとする昨今、これほどまでに独自路線で、唯我独尊な雰囲気を味わえる車は少なくなっている。
そして、すでに20年選手となり中古車物件も激減している。
ちょっとでも気になった方は、中古車物件をチェックしてみてほしい!
絶滅危惧車のキャデラック コンコースを探してみる
▼検索条件
キャデラック コンコース(1993年10月~1999年12月生産モデル)
text/古賀貴司(自動車王国)
photo/ゼネラルモーターズ
(提供:カーセンサー)