昨年、テンセント(OTC:TCEHY)は様々な苦難を乗り越えた。収益性の高いゲーム事業は中国政府の規制によって大幅な減収に直面した。同社は資金投下を抑え、広告事業も大きく打撃を受けた。

2018年、世界最大のゲーム市場である中国では青少年の近視率が上昇したことを受け、政府が新規ゲームの承認を凍結した。結果、テンセントの12-3月期においての純利益は前年比32%の減少となった。これは2004年の上場以来最大の減少幅となった。

しかし、テンセントは回復の兆しも見られている。「フォートナイト」や「プレイヤーアンノウンズ バトルグラウンズ」等のタイトルを中国政府が承認する見通しだ。実現すれば、テンセントは40%以上の売上げ増加となるだろう。

改善を見せるマクロ環境

これらの前向きな進展に後押しされ、今年に入ってテンセントの株は続伸している。ニューヨーク株式市場での昨日の終値は48ドルとなった。年初来株価は22%高となっている。

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(画像=Investing.com)

テンセントの株価回復の背景には、好ましい環境変化が重なっている。米中貿易協議進展により両国間の貿易戦争は終焉を迎えると見られる。加えて、税金引き下げや中小企業への貸付拡大等をうたう政府の景気刺激策によって中国経済は上向くと予測されている。

直近の決算は不振だったものの、基盤事業は手堅く、収益源も分散されている。10億人以上の月間アクティブユーザーを抱える人気アプリ・WeChatのシステムの優位性は高く競合他社を寄せ付けない。動画ブログ、インスタントメッセージ、そして決済システムを一挙に有するテンセントは、中国通信市場を狙う投資家を引き付けてやまない。

ロイターのCarson Lo氏とMichael Tam氏報じたところによると、WeChatは広告事業でより高い収益を生む可能性があるという。野村ホールディングスアナリストのJialong Shi氏は、「広告事業においてWeChatの収益性は高まるはずである」と語る。

また同氏は「WeChatはミニプログラムユーザー数の増加により、オンライントラベルエージェンシーやeコマース、教育系広告主といった業者からより多くの広告費を得られるだろう」と述べている。ミニプログラムとは、WeChat内部のアプリで、バンキングからライドヘイリングまで様々なサービスを提供している。

テンセント創設者の馬化騰が呼ぶところの「インダストリアル・インターネット」への投資は、テンセントの将来的な成長を後押ししている。多様化戦略の一環として、同社は9月にAI、クラウドサービス、ビッグデータおよびセキュリティを包括するスマート産業部門を設立した。

要点

2019年には入りテンセント株は上昇をつづけているものの、依然として長期投資家にとってはいい選択肢である。同社の長期的な見通しは明るい。ゲーム事業のパイプラインは強力で、収益基盤は順調に拡大している。テンセントは大抵の欧米企業よりはるかに耐久性のあるビジネスモデルを有している。(提供:Investing.comより)

著者:ハリス アンワル