金融市場(3月)の振り返りと当面の予想
●10年国債利回り
3月の動き 月初-0.0%台前半でスタートし、月末は-0.1%で終了。
月初若干のマイナスからスタートした後、日銀による国債買入れ減額への警戒や米中通商交渉合意期待から上昇し、5日に0.0%とマイナスを解消。しかし、日銀が国債オペの金額を維持したことで翌6日には再びマイナス圏に戻り、その後もECBの経済見通し引き下げや中国経済指標の弱い結果などを受けてマイナス幅を拡大、英EU離脱への警戒感の高まりもあり、13日には-0.0%台半ばへ。しばらく一進一退となったが、下旬にはFOMCのハト派的な結果や世界経済減速懸念から再びマイナス幅を拡大し、28日には-0.1%と2016年8月以来の低水準に。月末も同水準で終了した。
当面の予想
今月に入り、米中経済指標の改善や米中通商交渉合意期待からやや上昇し、足元は0.0%台半ばにある。ただし、米中合意には今しばらく時間がかかる模様である一方、9日公表のIMF世界経済見通しでは成長率見通しの下方修正が予想され、世界経済の減速が意識されそうだ。また、英国のEU離脱を巡る混迷も続き、長期金利に対する低下圧力が続きそうだ。従って、当面は-0.0%台半ばから-0.1%での展開を予想している。
●ドル円レート
3月の動き 月初111円台後半でスタートし、月末は110円台後半に。
月初は良好な米経済指標や米中通商交渉合意期待を受けて、7日にかけて111円台後半から112円で堅調に推移。その後、ECBによる経済見通しの引き下げや弱めの米中経済指標を受けてリスク回避の円買いが入り、11日には111円台前半に下落。しばらくは111円台でのもみ合いが続いたが、予想以上にハト派的なFOMC結果を受けてドルが売られ、22日には110円台に。米欧指標の悪化を受けた25日には110円を割り込んだ。その後は米中通商協議合意への期待などからリスク回避が一服、円がやや売られる形となり、月末は110円台後半で終了した。
当面の予想
今月に入り、米中経済指標の改善や米中通商交渉合意期待からリスクオンの円売りが入り、足元では111円台半ばへ上昇している。ただし、米中合意には今しばらく時間がかかる模様である一方、9日公表のIMF世界経済見通しでは成長率見通しの下方修正が予想され、世界経済の減速が意識されそう。また、月の下旬には、改元に伴う10連休中の相場急変に備えたポジション調整的な株売りと円の買い戻しが予想される。米経済が堅調を維持することで大崩れはしないと見ているが、当面のドル円は弱含むと予想している。
●ユーロドルレート
3月の動き 月初1.13ドル台後半でスタートし、月末は1.12ドル台前半に。
月初、1.13ドル台で推移した後、ECB理事会での経済見通し下方修正、利上げ(マイナス金利縮小)延期示唆を受けてユーロが売られ、8日には1.12ドル台前半を付ける。その後はユーロ圏の経済指標改善を受けて13日に1.13ドルを回復。さらに、ハト派的なFOMC結果を受けて、21日には1.13ドル台後半に戻した。しかし、その後はユーロ圏PMIの悪化や米中交渉合意期待に伴う米金利の下げ止まりを受けて下落し、26日には1.13ドル割れに。月末も1.12ドル台前半で終了した。
当面の予想
今月に入ってからは方向感を欠いており、足元も1.12ドル台前半で推移している。10日に開催されるECB理事会では、改めてECBの利上げに対する慎重姿勢が確認されることが見込まれ、一旦ユーロ売りが入る可能性が高い。ただし、FRBも負けず劣らずハト派的になっているため、ドルが積極的に買われる可能性は低い。従って、ユーロドルは当面方向感を欠く展開となりそうだ。ただし、英国のEU離脱問題が撹乱要因になる。秩序だった離脱や離脱の延期が決まれば、ポンド高につられてユーロにも上昇圧力がかかる。一方、合意なき離脱に向えば、ポンド安の波及でユーロも売られることになるだろう。
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上野剛志(うえのつよし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 シニアエコノミスト
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