• 株式市場は上昇するも出来高と値幅は減少
  • WTI原油は2017年以来の5週連続上昇
  • トランプ大統領が量的緩和を要求し、国債利回りがフラット化

金曜日に2日連続で国債利回りが下がり、ドルは上昇したが、 非農業部門雇用者数の発表で雇用市場の堅調さが示され、トランプ大統領が金融政策をさらに緩和するようFRBに圧力をかけていることを受けて、米国株式市場は上昇した。しかし、株式市場の上昇幅の割に出来高が少なく、上昇が止まる可能性が高まっている。

株価が高騰する中、下落の警告サインが出ている

金曜日の S&P 500は0.46%上昇し、7日連続で上昇した。トランプ大統領が貿易協議は順調だったが、合意できるかは4週間以内にわかると述べ、輸出に敏感な素材セクター以外のすべてのセクターでS&P 500は上昇した。また、2018年11月5日以来初めて、63ドルを超えるWTI原油につられ、エネルギーセクターは大きく上昇した。貿易交渉が順調に進み、経済成長への懸念が緩和されたためだ。

S&P 500は週間で2.06%上昇し、2週間では3.29%の上昇となった。デフェンシブセクターである 一般消費財は-0.93%、 公益事業は- 0.12%と通算では下落となった。これとは逆に金曜日の下落にもかかわらず、素材セクターは4.18%の上昇、続いて金融セクターは3.46%と大きく上昇した。

FRBのハト派なスタンスの中、大統領がFRBに政策金利の据え置きではなく利下げの圧力をかけるという銀行にとってよくない状況にもかかわらず金融セクターが上昇したのは驚きだ。また国債利回りの低下は利下げの見通しに通じ、それは金融機関の利益低下を示唆している。このような状況でも上昇した理由は、おそらく先々週前半までの下落によって銀行銘柄が割安となり、投資家が魅力に感じたということなのだろう。

chart
(画像=Investing.com)

SPX Daily

テクニカル的には、仮にS&P500が9月20日の最高値に挑戦するとしても、その多様な銘柄のあちこちでは警告サインが点滅している。MarketWatchによると、米国の株式ファンドの資金は減少しており、1月から今日まで391億ドルが流出している。今の株式市場の上昇は強い割には出来高が大きくない。確信は持てないが、私たちは上昇が2,900を超えずに終わると予想しており、今回の上昇は自社株買いを含めた買い戻しなのだと理解しようとしている。

chart
(画像=Investing.com)

SPX Weekly SPX Weekly

MarketWatchの記事には記載されていないが、RSIも注意が必要だ。9月の価格が1月の高値を超えたのに、RSIは1月以上の高さにすることができなかった。ただし現時点では、9月よりもまだ低いものの下降トレンドラインを抜けておりモメンタムは上昇する可能性がある。

金曜日の ダウ平均は0.15%上昇し、10月8日以来の最高値をつけた。先週は1.91%高となり、2週間では3.62%の上昇となった。テクニカル的には、上昇型の三角持ち合いを完成した後、金曜日の取引で反落の可能性のある十字線を作った。値幅や勢いはS&P500と同じように下落に動く可能性がある。

先週の ナスダック指数は0.59%高となり、2週間で3.9%上昇した。水曜日の十字線でレジスタンスラインが見えており、他の指数と同じような形状となっている。

chart
(画像=Investing.com)

UST 10-Y WeeklyUST 10-Y Weekly

国債利回りの低下も注意したい。金曜日の力強い雇用統計の後でさえ、利回りが低下しているのだ。先週2年債利回りは直近5か月で最大の週次の上昇を記録しており、これは投資家が国債保有を減らすときに起きたと考えられる。通常トレーダーはリスクオンの際、資金を債券からリスクに応じて株式に移し、リスクオフにすると債券に資金を戻すため、株と債券利回りは逆相関する。

それでは、なぜ、米国債利回りは株式と共に上昇しているのだろうか。可能性のある説明としては、インフレが弱いためにハト派なFRBが、次第に政策金利をより低くする可能性があり、現在の金利がより魅力的になっていることが考えられる。

しかし、長期的には、インフレ率の低下が経済や企業の利益を圧迫する可能性がある。そのシナリオだと、株を押し上げていたトレーダーが一斉に逃げ出し、株式市場が暴落することになる。つまり、最終的には、利回りも株価に悪影響を及ぼす可能性がある。

しかしファンダメンタル的には、非農業部門雇用者数は19万6,000人となり、失業率は歴史的に低い3.8%にとどまっている。これは最も長期にわたる労働市場と経済成長の拡大の1つとなっている。それでは、どのようにして複数のテクニカルな警告サインと強いファンダメンタルズと整合するのだろうか。

テクニカルの面でいえば、景気の波の中間ではファンダメンタルズとテクニカルは一致するが、終わりには違いがでるということになる。言い換えれば、テクニカルの変化はファンダメンタルの変化に先んじるということだ。

chart
(画像=Investing.com)

DXY WeeklyDXY Weekly

雇用統計後、ドルインデックスは3週続けて上昇した。 11月上旬以降の中期的な上昇トレンドへのレジスタンラインにぶつかっており、ヘッドアンドショルダーの底へと向かう可能性もある。

chart
(画像=Investing.com)

Oil DailyOil Daily

原油は11月5日以来初めて63ドルを超えて終値を迎え、200日移動平均線より上で動いている。これは原油の5週連続の上昇であり、2017年以来の長さとなっている。

今週の経済指標

月曜日

午後11時  米製造業新規受注 0.5%の減少予想

火曜日

午後11時  JOLT求職予想では756万5000に先月より下がる

水曜日

午後5時30分  英国GDP 0.2%の予想

午後5時30分  英製造業生産0.2%の予想

午後11時30分  米原油在庫量: 前回は723万8000バレルだった

木曜日

午前3時  FOMC議事要旨: トランプ大統領による利下げとバランスシート拡大要求がある中、FRBはさらなる緩和を示唆しているのか?

午後9時30分  PPI0.3%へ上昇予想

土曜日

午前2時 ベーカーヒューズ石油リグ稼働数:米国の原油生産はサウジアラビアを凌駕し、米国を世界最大の生産国にし、石油価格を操作するOPECプラスの力を弱めている。リグ数が増加し、米国の生産量増加と他国のとの競争拡大を示唆するのか?(提供:Investing.comより)

著者:ピンカス コーエン