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(画像=味噌らぁめん(730円)には、信州の麹味噌や長崎の麦味噌など5種類をブレンド)

関係者も驚いた『ミシュランガイド』ビブグルマン選出

2017年から2年連続で『ミシュランガイド』のビブグルマンに選ばれたことにも納得できるこのラーメン。しかし、ビブグルマンに選出されたことは「青天の霹靂」だったそうで……。

「もうビックリしました。色々な方から『覆面調査員の人ってきた?』みたいなことを聞かれるんですけど、まったく分かりませんでした。受賞パーティーのはがきが届いたときなんかは、パートの方に『騙されてるんじゃないか』ってすごく心配されて(笑)。パーティーには錚々たるメンバーが集まっていて、私なんかが来ていいのかと思いました。そこで店が掲載されている本をもらったんですけど、『うちなんかが載っていいのか』って。そんな感じなので、他のお店にアドバイスできることはないんです。自分へのご褒美のような感じに受け取っています」

様々なメディアで取り上げられたことも手伝って客足はここ数年で急増している。それでも「今だって儲かっているわけではないんですよ」と石田さんは苦笑する。

「もうこの歳だから昼間にしか営業ができないんです。だから儲かりはしませんよ。昼の2時半に閉めるんですけど、仕込みやお掃除などで、結局昨日も自宅に戻ったのは夜中の1時半。どうしても時間がかかります。母が亡くなってからずっと1人でやってきたんですけど、10年前くらいかな……、体調が優れない日が続いたのでパートさんを募集したら、近所の主婦の方で良い人がきてくれたんです。今はお昼には誰かしら手伝いにきてくれています」

デリケートな問題ではあるが、「次の世代に託すことは考えてないのか」と率直に聞いたところ、キッパリと「ない」という返事が。昨今、後継ぎ問題などで有名店の閉店が相次いでいる。この味を後世につないでいってほしいと思うのは自分勝手なことなのかもしれないが、いちファンとして思いを伝えたところ、石田さんは恐縮しながらこう話す。

「何度もお伝えした通り、そんなに大したお店ではないんです。子供もおりませんので、これで終わり。それに実際に儲かるわけではないので、おすすめできないんですよ。すごく儲かって、良い生活ができますよっていうならどなたかにお願いしますけど、そんな大した売上ではない。だから、どなたかに継いでいただきたいとは考えていません。でも、そう言っていただけることは嬉しいですね。ありがとうございます」

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(画像=にこやかな笑顔で質問に答えてくれる石田さん)

シビアな話をしながらも、最後には花が咲いたかのような笑顔を見せる石田さん。店の中にも、ところどころ美しい花がさりげなく飾られている。これも「ホッとしてほしい」という思いからきているものだろうか?

「単純に私がお花好きなんです(笑)。だから私のためでもあるんですけど、花が少しでもあると和むじゃないですか。『少しでも安らいでくれたら』とは思っていますけど、お花に関しては自分が好きなことも関係していますね」

石田さんの作る優しいラーメンと温かな空間。石田さんの真心こそが「長年愛されてきた秘訣」なのだろう。2020年には30周年を迎える『らぁめん 一福』。いつまでも元気でいて欲しい、と切に願う。

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(画像=カウンターにさりげなく置いてある花)

『らぁめん一福』
住所/東京都渋谷区本町2-17-14 小泉ビル
電話番号/03-5388-9333
定休日/毎週月曜(祝日の場合火曜) 、第二・第四火曜
席数/13

(提供:Foodist Media

執筆者:逆井マリ