16日、アップル(Apple) (NASDAQ:AAPL)と半導体メーカーのクアルコム(Qualcomm) (NASDAQ:QCOM)の2年強に渡る法廷闘争は和解に至った。アップル株はこのニュースに対して反応しなかったが、クアルコム株は時間外取引の6%高と合わせて約31%上昇した。

chart
(画像=Investing.com)

TradingView: クアルコム

この法定闘争は2017年1月にアップルが、米国でクアルコムは特許使用料を過大に請求し、特許料の払い戻しの一部である10億ドルが未払いであるとして訴えたことから始まった。アップルはクアルコムの最大の顧客の一つであった。

さらにアップルは、クアルコムがベースバンドチップの大手メーカーとしての地位を利用して、競合するサプライヤから部品を調達することを防止するなど、不当なビジネス慣行をしていたと主張していた。このように、クアルコムは半導体からの売上と特許ライセンスの両方から収益を得ていた。

chart
(画像=Investing.com)

この法定闘争は、過去2年間でクアルコムにとって大変痛手であった。株価の観点から見ると、クアルコム株は、過去2年間においてほぼ65ドル以下で推移し、49ドルまで一時下落していた。

一方、アップルは同じ期間に上昇軌道を続け、1兆ドルの時価総額に達する最初の企業にさえなった。

なぜこの法廷闘争はアップルよりクアルコムは打撃を受けたのだろうか?

ファンダメンタルの観点から見ると、ライセンス収入はクアルコムのビジネスモデルの大部分を占めており、クアルコムはこれらの収入を完全に失う懸念があったためである。

アップルは法廷闘争の間にクラルコムに対する約80億ドルの支払いを差し控え、2019年度第1四半期のクラルコムの売上高は前年比約20%落ち込んでいた。

和解の詳細はまだ不明である。両者のプレスリリースをによると、係争中の全ての訴訟を取り下げ、6年間のライセンスやチップの供給、そしてアップルからクラルコムへの和解金を払うことが発表されている。クアルコムはこの合意により1株当たり利益が約2ドル増加する可能性が高いと述べた。

アップルはこの法廷闘争で悪影響を受けていないのに、なぜ急に和解に至ったのか?答えは、5Gモバイルテクノロジーにおいてクアルコムは独占しているからだ。

5G技術が導入されると、モバイルデバイスの通信速度は一気に高速されるだろう。ファーウェイ(Huawei) (SZ:002502)、MediaTek (TW:2454)、サムスン(Samsung) (KS:005930)に加えて、クアルコムは数少ない5G通信半導体を提供する企業である。

スマートフォンのイノベーションにおける世界的リーダーとして、アップルが自社のモデムチップの開発を始めない限り、アップルはクアルコムを必要としているだろう。

アップルは特にインターネット速度においては、競合他社のデバイスとの競争を遅らせることはできないだろう。サムスンの新しいGalaxy S10 5Gはすでに5Gに移行している。

16日の和解により、アップルは法廷闘争に悩まされることなく通常ビジネスに戻ることができ、一方クアルコムの見通しも、はるかに明るくなっただろう。

クアルコムは最大の顧客のアップルが戻ってきたことで、売上高と利益は大きく後押しを受けるはずだ。

また和解が発表された直後に、Intel (NASDAQ:INTC) は5G通信半導体から撤退することを発表した。クアルコムは唯一の主要5Gプレーヤーとなる可能性がある。法廷闘争は終結し、JPモルガンはクアルコム株の目標株価を88ドル、バークレイズは100ドルと引き上げている。(提供:Investing.comより)

著者:クレメント チボー