増える本社の移転
2012年から2013年にかけての東京都心部での大型オフィスビルの建設ラッシュ以降、大手企業が本社移転をするケースが増えています。東日本大震災の経験から、企業は耐震性能や防災面を重視する傾向となっています。長年入居していたビルの老朽化と大型オフィスビルの大量供給が重なり、ニーズに合う新築ビルへの移転が進みました。2014年以降も大型開発は続いており、本社移転の動きは続くとみられています。
かつて2000年代は、六本木ヒルズ森タワーに本社を置く企業の経営者は、ヒルズ族と呼ばれ、トレンドとなりました。大手企業のオフィスの移転先をもとに、今の本社移転のトレンドについて考察していきましょう。
IT業界、ヤフーは赤坂、楽天は二子玉川へ
世の中のトレンドを反映するIT業界では、ヤフーが赤坂の西武ホールディングスが再開発を進めるビルに移転予定です。赤坂プリンスホテル跡地で「紀尾井町プロジェクト」として進められている事業で、2016年夏に完成予定、地上36階・地下2階建てのオフィスとホテルの複合ビルです。オフィス部分24フロアのうち、20フロアをヤフーが占めることになっています。
現在ヤフーは、本社は東京ミッドタウンにありますが、六本木のアークヒルズにも事務所が設けられており、移転によってオフィスの集約が図られる形です。
一方、ライバルとされる楽天はこれまでオフィス街としてのイメージが薄かった世田谷区の二子玉川に移転する予定です。東急電鉄と東急不動産が再開発を進める二子玉川ライズのオフィス・ホテル棟は、2015年6月に完成予定、8月に地上30階のオフィス棟のうち、全26フロアに楽天が入居します。楽天は、商業施設や住居、オフィス、ホテルという二子玉川の複合開発における顔といった存在になるとみられます。
楽天は、2003年に六本木ヒルズに本社を移転後、2006年から品川シーサイドフォレストに移っています。比較的短期間にこれまで移転を繰り返して来ていますが、今回予定されている移転は、8000人規模となった従業員の増加を要因とし、本社機能の集約を図るものです。