前日については、トランプ政権が中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の通信機器の使用や同社への輸出を規制したことへの報復として、「ファーウェイとの取引を停止した企業とは、取引を控える可能性がある」との声明を出したことにより、米中貿易摩擦の激化が強まるとの懸念から、ドル円は一時109.812円まで下値を拡大しました。一部では、グーグルがファーウェイとの取引を一部停止したとも報道されています。NYダウについても、一時200ドル超安となるなど、リスク回避の動きが強まってはいたものの、米10年債利回りが2.41%を回復するなど、リスクオフの動きにはならず、自律反発に近い形でドル円は110円台を回復する動きとなりました。
週末の総選挙で予想外の与党勝利のサプライズがあった豪ドルですが、本日の東京時間に豪州規制当局絡みの報道として、「借り手が7%の最低金利を使用して返済できるかどうか銀行が判断すべきというガイダンスを削除することを豪規制当局が提案」とのヘッドラインが伝わると、豪ドル買いがやや強まりました。一部では、低迷する住宅市場の改善に寄与し、借り手が増えるのではないかとの期待感がある模様。今後、明確にプラスになるとの報道があれば、豪ドル買いが強まる場面があるかもしれません。
トルコリラについては、トルコ政府より、先週0.1%の外貨購入税が個人に対して導入されることが報じられたばかりですが、一部報道によると、個人の銀行から10万ドル相当以上の外貨購入に関して、決済日が1日延期されると報じられています。エルドアン大統領が露製ミサイルの導入決定の方針を再び表明したことにより、リラ安懸念が強まっていましたが、トルコ政府は外国への資本流出を防ぐための施策を立て続けに公表しており、現時点ではリラ安に歯止めがかかっていると考えられます。
今後の見通し
欧州議会選挙が、5/23-26にかけて行われ、結果は26日(日曜日)に明らかとなります。EUではポピュリスト的な政党が支持を拡大させており、今回の選挙結果にも反映されることが見込まれていますが、世論調査によるとポピュリスト政党は欧州議会の総議席数の30%程度は確保できそうですが、強い影響力を与える程には至らない公算です。欧州議会選挙前に、ドイツ連銀が月報にて第1四半期こそ前期比で+0.4%、前年同期比で+0.7%と、底堅い成長を見せたものの、第2四半期には同じ成長ペースを維持するのは困難との見方を示しています。また、オーストリアの極右・自由党党首のシュトラッヘ副首相が辞任の表明を行ったことで、クルツ首相は連立解消とともに、9月初めに総選挙を実施すると発表したこともあり、選挙直前の報道だけに、少なからず欧州議会選挙に影響を与えそうです。
英国のEU離脱を巡る英与野党協議が決裂したため、EU離脱問題の先行き不透明感が一段と強まり、ポンドが売られやすい地合いとなっているなかで、ブロードベント英中銀副総裁は、英国が合意ないままでEUを離脱することになれば、これまで先延ばしにされて保留となっている企業の投資計画が単純に中止される可能性は大きいとの見解を示しました。10月末まで時間的猶予はあるものの、離脱協議については前進どころか、寧ろ後退していることがの方が目立つこともあり、基本的には様子見姿勢も、売りバイアスがかかっている状況に変化はないと考えられます。
与党勝利サプライズの影響は1日で落ち着きを取り戻している
豪州総選挙の与党勝利のサプライズの熱も、前日で完全に落ち着きを取り戻しています。落ち着きが出てきた以上、ファンダメンタルズ的にはRBAの利下げが意識されると考えられるため、豪ドルについては、基本的にはショート戦略が機能すると考えています。、76.30円での豪ドル円ショート、利食いについては、75円割れを想定し、74.50円付近を利食い目途、損切りについては76.80円付近を考えます。
海外時間からの流れ
豪ドルの動きが為替市場の中心となっていますが、本日のRBA議事要旨については、RBAの理事会が行われたのが豪・4月雇用統計前であったこともあり、先日の雇用統計の結果は今回の議事要旨に含まれないため、特に注目する材料はない公算ですが、本日は、ロウ・豪準備銀行(RBA)総裁の発言が予定されており、議事要旨にないことを前もって話すことはないというのがコンセンサスではあるものの、利下げ関連の話題を取り上げるようであれば、想定外に豪ドルの動きが活発化するかもしれません。
今日の予定
本日は、米・4月中古住宅販売件数などの経済指標が予定されています。また、要人発言として、カーニー・英中銀総裁、エバンス・シカゴ連銀総裁、ローゼングレン・ボストン連銀総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。