- すべての米国株式指数はヘッド&ショルダーを形成しつつあり、ラッセル2000はダブルトップの可能性もある
- 米国経済は史上最長の景気拡大に向かっているが、減速しつつある
- 市場は、引き続き市場で語られる風潮とは相反する値動き
先週金曜日の5月24日では、4つすべての米国株式の主要指数は小幅高となった。しかし、前週比ではどの指数もマイナスとなった。
米中貿易戦争で揺れる市場心理により、 S&P 500、ダウ, ナスダック、ラッセル 2000 は、今後引き続き週次で下落していく可能性があり、中期的に下降トレンドを確立すると考えられる。
米国債の利回り低下は24日に下げ止まり、 米ドルは2日連続の下落となり週次でも値下がりを見せている。
英国ではメイ英首相が辞任を発表したが、英ポンドは反発している。
週次のポンドルチャートをテクニカル的な観点で見ると、大きなヘッド&ショルダーボトムを形成しつつある。8月18日の安値はヘッド&ショルダーの右肩として機能しつつ、現在のサポートラインとなっている。
米中貿易戦争による、米国および世界経済への影響
ドイツ IFO景況指数発表によりドイツ経済への信頼感が落ち込んでいることが示され、米中間貿易戦争のグローバル経済への影響が明らかになった。また5月23日に発表された米国製造業PMIは予想を下回る結果となり、貿易戦争の米国経済への影響も窺えた。ドル高の下で小型株のパフォーマンスが振るわないなど、通常の市場構造は崩れつつある。本来貿易戦争の激化は、国内にフォーカスする小型株にはポジティブに働くとされている。
24日、S&Pは0.14%高となった。ベンチマークの11部門のうち8部門が値上がりで終わった。 金融セクター(+ 0.79%)がアウトパフォームする一方、生活必需品(-0.36%)は小幅安となった。
週次ではSPXは1.17%安となり、8つのセクターが値下がりした。世界的な貿易戦争の中、米原油在庫の拡大が原油の需要減の見通しを強めたため、エネルギーは3.34%安となった。同指数は3週連続の下げとなった。テクニカル分析においては、2,800ドルの水準を下回ると、中期的な下落トレンドが始まることが考えられる。
昨年12月上旬以来、市場の中期的な見通しについては弱気である。1990年代の堅調な拡大を上回り、GDPのプラス成長の最長記録を6月には更新するであろうほど経済は活況であるが、潜在的な問題を抱えている。
米国は、実質GDPは13年連続でプラス成長となるものの、成長率が3%に達しないとみられている。また、失業率は過去50年間で最低の3.6%となっているが、テクノロジーの急速な進化により人間による労働の必要性が低下していくと予想される中で、この失業率に持続性があるのかは疑問だ。
一方、現在の市場は2009年の安値から400%以上のリターンを生み出している史上2番目に収益性の高い強気相場であることは間違いない。ただ、これを市場に参入する適切なタイミングと言えるのだろうか。
S&P 500は3月以降維持されている2,800ドルの水準を下回らないとみられている。 200日移動平均線は、この水準の真下で横ばいになっている。
しかし、200日移動平均線が下抜きになりつつあるのと呼応して、今月初旬にペナントを下抜けした。200日移動平均線を下回る程の下落はヘッドアンド・ショルダーズトップを形成し、ピークと谷の下降傾向を作りながら中期的な下降トレンドを形成するだろう。
RSIは値が2,400ドル台であった年初以来最低水準となっている。モメンタムが価格に先行するため、モメンタムの低下は価格も下落する見込みを強めている。
24日のダウ平均株価は0.37%高となったが、週次では0.69%安となり5週連続の下げとなった。2011年以来最長の値下がりとなり、合計で3.67%安となっている。23日に200日移動平均線テスト後、値下がり幅は抑えられた。3月11日の2,5208ドルを下回る値下がりと共にヘッドアンド・ショルダーズを構成する。
ナスダックは24日0.11%高となり他の指数より出遅れたが、米政府によるファーウェイへの制裁に対する中国の報復措置によるテック企業への影響を懸念したものとみられる。週次では2.29%の値下がりとなり、アンダーパフォームしている。同指数は3週連続の値下がりで6.46%安となっている。
24日のラッセル 2000は再びアウトパフォーマーとなり、1.03%高となった。しかし週次で1.41%安となり、3週間連続の値下がりで合計6.19%安となった。
我々は、貿易に関する見方は国内の市場構造と整合的ではないという指摘を過去数ヶ月言及してきた。もしそうであれば、通商合意の成立見込みが薄くなった場合、大型株とテック株は下落する一方で小型株は上昇するとみられる。
今の売り圧力はマーケットテーマによるものなので、貿易関係やグローバルでの輸送に関する問題などに影響されづらい性質などを鑑みると、小型株のパフォーマンスはかなり高い。
米10年国債の利回りは2017年10月以来最低のポイントまで下がり、200WMAを下回った。これは、投資家が経済成長を見込んでいることを示してはいない。
先週の原油価格は6.58%安となっており、昨年12月中旬以来最低のパフォーマンスとなっている。チャートを見ると、WTI原油は中期的に下降トレンドとなっている。(提供:Investing.comより)
著者:ピンカス コーエン