★週末、S&P500が50日線を突破。 驚いたことに、週末の米国株市場では、総合株価指数(日本で言えば、TOPIXに位置づけとしては近いものです)のS&P500がなんと50日移動平均線を突破しました。これで、S&P500を阻むものは何もなくなり、実質的な青天井になったといってもいいでしょう。 もちろん、4月につけた史上高値がまだ残っているわけですが、その差わずか2.8%しかありません。

★その他定点観測。 グローバル指数のダウ工業株は、ほぼ50日線に到達しつつあります。 遅れているナスダック・コンポジット指数は25日線を突破。 ダウ輸送株、ラッセル2000小型株市場は上がったといっても微弱で、持ち合いに近いです。 半導体SOX指数はまだマシで、25日線に接近中。前日びっくりさせられた半導体大手のベンチマークの一つ、AMDは続伸して戻り高値更新。これで、ほぼ昨年9-10月の急落直前の水準に戻ったことになります。重要な先行指標が、10-12月の相場急落は「無かった」状態に回復しているわけです。この意味するところは重要でしょう。

★ジャンクボンドが、50日線に到達。 市場全体の最大のリスク指標であるジャンクボンドは、週末50日線に到達しています。すでに25日線突破をしているので、実質的には市場にリスクは無いと言っているわけですが、50日線を週明けにでも突破したら、完全にリスクはゼロ状態になります。 マネー循環を示す米10年国債利回りですが、こちらは底辺で停滞しています。最終的には2.084%でしたが、ザラ場では2.05%と、3日の2.08%を割り込んでいます。 今年の米国経済の成長率予想が、おおむね2.5%前後だとして、株が戻って来ているにもかかわらず、長期金利が最低水準の2.0%台すれすれで停滞しているということは、週報で解説していますように、いわゆる不必要な金融政策による過剰流動性を生み出す淵源となってくるでしょう。

★雇用統計で、利下げ期待強まる。 株価上昇の原動力は、やはり利下げ期待だという市況コメントが多いようです。 この利下げ期待が週末に一段と強まったのは、雇用統計が悪化していたためです。 完全失業率状態ですし、もともと季節的に夏に向けて雇用統計は悪化する傾向があるもで、これは本来利下げ期待に直接つながる話ではありません。 が、悪化という結果を以て、やはり市場は利下げ期待につなげたと考えられるので、株を買うための都合のようい好材料に仕立てあげた、というのが本当のところでしょう。

★メキシコ・リスクを度外視して、相場上昇。 にわかに降ってわいた対メキシコ関税引き上げ問題(本質は不法移民対策問題)で、10日に予定される関税引き上げが延期されるかどうか、疑心暗鬼が増大しているにもかかわらず、週末の米国株市場は大幅続伸。およそ、ただのショートカバーとは言い難いほどの勢いでした。

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★景気循環の終焉と、ロスタイム。 もともと、ただでさえ、日米景気循環がいったん後退期に入るところですから(昨年から今年にかけてが戦後の循環平均ではピークの「はず」)、現在はそもそもがロスタイム状態だと常々述べてきました。 今のところ、景気の遅行指標である、年率実質GDPは1-3月で3.1%ですから立派なものです。また失業率はこの10年一貫右肩下がり、逆に賃金は一貫右肩上がりです。 このように、遅行指標は明らかに景気拡大が続いていることを示しています。 一方、問題になるのは先行指標です。 重視すべきだとすれば、やはり各種の消費動向です。企業や家庭の大型商品の購入額である耐久財受注額は、失速寸前まで悪化しています。 また高額品ということでは自動車と不動産があるわけですが、自動車は昨年10月前後をピークに、漸減傾向です。住宅の中でも圧倒的な市場規模を占める中古住宅販売は、一昨年末をピークに漸減傾向です。 センチメント指標は、株式相場の変動に大きく左右されるので、一概にはアテになりませんが、傾向はやはり漸減傾向です。たとえば、非製造業ISM指数は昨年秋ごろから減退。 これに伴ってハードデータの悪化も見られます。鉱工業生産は昨年夏場から後退。設備稼働率も昨年11月ピークに後退。

★中央銀行は、行動を始めた。 このように、いつ失速してもおかしくない、景気循環の終局にあって、できるだけそれを延命させようとしているその最大の目的は、現在の政権与党・共和党のトランプ政権の二期目を確実にさせるためです。 その要請に対して、連銀はまずその任務を果たし始めました。それが先述の利下げを視野に入れた発言です。リップサービスですが、それで十分なほど、米国経済はまだ強いのです。

★では、実際に、連銀が利下げするのはいつか。 市場はしかし、できるだけ最悪の状況を想定するものなので、悲観論に傾斜しすぎた結果 、完全に利下げ織り込み、しかも年3回を織り込み済みです。 7月、9月、そして12月と言われていますが、私見ではできるだけ利下げをせずにがんばって現状を引っ張り続け(リップサービスは頻繁にするでしょう)、やっと利下げに踏み切るのは12月の一回だけであろう、と推察しています。「予防的措置」として利下げも視野に入れるといっているだけです。

★ここで利下げをして発生する副作用~バブル。 が、実際に利下げをしてしまえば、確実に過剰流動性を引き起こすわけですから、バブルのリスクを回避するのが非常に難しくなるわけです。 寄って、連銀が想定している利下げというものは、現状できるだけファンダメンタルズが自助努力で回復、再浮上するのを待ち、いよいよテコ入れが必要だというタイミングではサプライズとなる一発の利下げを行いたい、そう思っているのではないでしょうか。

以上(提供:Investing.comより)

著者:増田経済研究所 松川行雄