要旨
● 4-6月期法人企業景気予測調査を見ると、19年度計画では、売上高が前回調査の前年比+0.1%から同+1.3%に上方修正される一方、経常利益が前回調査の同▲0.4%から同▲3.3%に下方修正されており、利益の下方修正が予想される。
● 業種別に見ると、19年度に前年比増収かつ前回調査から売上高の上方修正率が高い業種は「その他物品賃貸」「生活関連サービス」「建設」であり、特にサービス業の中でも人手不足等に伴う所得の増加や働き方改革等に伴う余暇時間の拡大を取り込んだ企業では上方修正が期待されよう。
● 一方、19年度計画における増益率の上方修正幅が大きい上位業種を見ると、燃料価格や原料の古紙調達価格が落ち着いた「紙・パルプ」、原油価格急落に伴うマージン悪化や在庫評価損で昨年度が大幅減益となった「石油・石炭製品」、昨年度に設備老朽化に伴う操業トラブルが相次いだ「鉄鋼」と続く。昨年度に原油をはじめとした市況価格急変動の悪影響を受けた企業がけん引役として期待される。人手不足の恩恵を受けやすい職業紹介・労働者派遣業が二けた増益計画を立てていることにも注目。
● 日銀が7月1日に公表する6月短観の収益計画(大企業)も今期業績見通しを読み解く手がかりとして注目したい。
今年度は増収減益の見込み
6月13日に公表された4-6月期法人企業景気予測調査は、5月下旬にかけて金融・保険を除く資本金10億円以上の大企業約4千社に対して行った景気予測調査であり、今期業績計画の修正度合いを予想するための先行指標として注目される。
そこで本稿では、7月下旬からの四半期決算発表で堅調な今年度計画が見込まれる業種を予想してみたい。
下図は、法人企業景気予測調査の調査対象企業(全産業、除く金融)の各調査時期における売上高と経常利益計画の年度見通しの推移を見たものである。まず売上高を見ると、19年度は前回調査から上方修正となるものの、直近2年間の同時期計画よりも増収率が低い計画となっている。このことから、四半期決算でも売上高が上方修正となる業種には注目が集まるものと推察される。
一方、経常利益は前回調査から前年比▲0.4%減益計画となっていたものの、減益率同▲3.3%と前回調査から大幅に下方修正されている。このことから、7月下旬からの四半期決算発表では、経常利益計画の下方修正も出てくることが予想される中、上方修正となる業種には注目が集まるものと推察される。
上方修正期待の高い「その他の物品賃貸」「生活関連サービス」「建設」
以下では、7月下旬からの四半期決算で売上高の上方修正が期待される業種を見通してみたい。表1は19年度の業種別売上高計画前年比を前回1-3月調査と今回4-6月調査で比較し、この3ヶ月の修正状況を見たものである。結果を見ると、増収業種の中で最も上方修正幅が大きいのは、自動車賃貸業やスポーツ・娯楽用品賃貸業等を含む「その他の物品賃貸」であり、前年比+1.4%→+12.7%と+11.3ptの上方修正となっている。それに続くのが、洗濯・理容・美容・浴場業や旅行・家事サービス・衣類裁縫修理・物品預り・火葬墓地管理・冠婚葬祭業を含む「生活関連サービス」の同▲1.1%→+4.6%、「建設」の同▲3.3%→+1.2%と、いずれもこの3ヶ月間で大幅に上方修正されている。
従って、特にサービス業の中でも企業の人手不足等に伴う所得の増加や働き方改革などに伴う余暇時間の拡大を取り込んだ企業では、四半期決算でも上方修正の可能性が高い業種として注目されよう。また、不動産も人手不足に伴うオフィス需要が旺盛のようだ。一方、足元の原油価格の下落に伴い、燃料調整費単価が下がる電気・ガス・水道業等では売上高が下方修正となることが予想される。
増収のけん引役は昨年度悪かった素材関連
続いて、経常利益計画から19 年度の業績を牽引することが期待される業種を見通してみよう。(資料2)。
結果を見ると、増益率が最も大きいのは、原油急落に伴うマージン悪化や在庫評価損で昨年度が大幅減益となった「石油・石炭製品」の+59.2%ptとなる。それに続くのが、燃料価格や原料の古紙調達価格が落ち着いた「紙・パルプ」の+36.2%pt、昨年度に設備老朽化に伴う操業トラブルが相次いだ「鉄鋼」の+15.9%ptとなる。
このように、今期の経常利益見通しでは、全産業の増益幅を牽引する業種として、昨年度に原油をはじめとした市況価格急変動の悪影響を受けた紙・パルプや石油・石炭製品、電気・ガス、鉄鋼に関連する企業がけん引役として期待される。これら以外の業種でも、人手不足の恩恵を受けやすい職業紹介・労働者派遣業が二けた増益計画を立てていることにも注目だろう。
なお、日銀が7月1日に公表する6月短観の収益計画(大企業)は法人企業景気予測調査に比べて聞き取りのタイミングが若干遅いことから、6月短観における大企業の収益計画も期末決算と来期業績見通しを読み解く手がかりとして注目したい。(提供:第一生命経済研究所)
第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部 首席エコノミスト 永濱 利廣