日本のキャッシュレス割合は20.0%と低く、まだ現金払いが主流になっています。クレジットカードやデビットカードに加え、電子マネーやスマホアプリ決済など新たな支払い方法が登場していますが、今のところ大幅な利用率アップには結びついていません。その理由をはじめ、各キャッシュレス方法の人気度や利用割合などについて紹介します。

キャッシュレスが普及しない理由や背景は?

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(画像=PIXTA)

日本人のお金に対する信頼と勤勉さが現金主義につながっている

世界レベルでは急速にキャッシュレス化しているものの、日本のキャッシュレス普及率はまだ十分とはいえません。日本でキャッシュレスが普及しにくい理由としては、社会背景や国民性が挙げられます。

他国に比べ日本は治安がよく、現金を紛失しても戻ってくることが多いとされています。偽札の流通もほとんどなく、多くの人が現金に対して高い信頼性を抱いています。各所に金融機関のATMが置かれているためどこでもたやすく現金を入手でき、店舗のPOSレジの処理能力が迅速で正確であるなどもその理由です。

また、勤勉で潔癖であるという国民性から見ても、後払いが多いキャッシュレスではなく現金による支払いを好むといわれています。キャッシュレス払いにまつわるセキュリティ面やプライバシー面に不安を抱く人や、使いすぎを心配する人も多いようです。

諸外国と比べ日本のキャッシュレス割合は20.0%とまだ低め

経済産業省が2018年にまとめた「キャッシュレス・ビジョン」によれば、2016年の国内キャッシュレス割合は20.0%となっています。年々伸びてはいるものの、90%を超える韓国をはじめ諸外国と比べるとまだ低めといえるでしょう。

来年開催される東京オリンピック・パラリンピックも踏まえ、政府は2027年までの10 年間にキャッシュレス決済比率を2倍の40%程度まで引き上げることを目標に掲げています。

クレジットカードが主流も電子マネーの利用率が倍増

前述の「キャッシュレス・ビジョン」によると、日本では2015年時点でクレジットカード、デビットカード、電子マネーを合わせて1人あたり7.7 枚のカードを保有しています。シンガポールに次ぐ2位となっていて、世界的に見ても多種・多様なキャッシュレスの支払い手段を保有していることが分かります。

2016年のキャッシュレス利用調査による割合は、クレジットカードが61%、電子マネーが29%、デビットカードが3%となっています。前回調査の2013年はクレジットカードが58%、電子マネーが18%、デビットカードが2%だったため、2倍に拡大した電子マネーの伸びがひときわ目立ちます。

クレジットカードの高い利用割合は揺るがないものの、電子マネーやQRコード決済といった新しい決済サービスが確実に成長し裾野を広げていることが分ります。

小額決済は70%以上が現金、やや高額な場合はクレジットカードを利用

ICT総研が2018年に実施したアンケート調査では、1,000~3,000円の小額決済の場合、71.6%の人が現金を利用すると回答しました。クレジットカードの利用は43.6%にとどまっています。一方、1~3万円の比較的高額な決済をする場合は現金の利用率は44.7%まで下がり、クレジットカードを利用する人が68.3%と増加します。

このようにやや高額な決済をする場合は、従来型のサービスであるクレジットカードの信頼性が高いことが分ります。国内におけるキャッシュレス払いの多くはクレジットカードによるもので、日本では長年クレジットカードが牽引してきたといえるでしょう。

電子マネーを「カード型電子マネー」「スマホアプリ電子マネー」「スマホQRコード決済」の3種類を合わせた利用割合で見た場合、1,000~3,000円の小額決済では合計で31.0%、1~3万円の比較的高額な決済では合計で11.7%となりました。小額の買い物では、電子マネーやスマホ決済の利用度がかなり高いことが分ります。

スマホのIC決済・QRコード決済利用者は3年後にそれぞれ2,000万人近くまで増加

スマホアプリ決済には非接触IC決済とQRコード決済の2タイプがありますが、現状ではタッチすると一瞬で支払える非接触IC決済を利用する人が主流のようです。

ICT総研は、今後成長が見込まれるスマホを利用したキャッシュレス決済の市場規模を予測しています。それによると、スマホアプリの非接触IC決済サービス利用者は2019年3月末で1,157万人に増加し、2022年3月末には1,953万人まで増える見込みです。また、スマホアプリのQRコード決済サービス利用者は2019年3月末で512万人に増加し、2022年3月末には1,880万人に達するとしています。

スマホ決済は交通系の「Suica」や加盟店が多い「楽天Edy」などが代表格

スマホアプリの非接触IC決済サービスでよく利用されているのは通勤・通学に便利な交通系の「Suica」(JR東日本)や「PASMO」(パスモ)、加盟店舗が多くポイントが貯まりやすい「楽天Edy」(楽天)、スーパーやコンビニで日常的に使える「nanaco」(セブン&アイ)や「WAON」(イオン)などです。

スマホのQRコード決済サービスでは「楽天ペイ」(楽天)をはじめ「PayPay」(PayPay)や「LINEPay」(LINE)、「d払い」(NTTドコモ)、「OrigamiPay」(オリガミ)などが人気となっています。

「使ってみたい」という気持ちが普及を後押し

このように、従来はクレジットカードを軸としたカードタイプのキャッシュレス決済が中心でしたが、今後はスマホを使った決済も増えていくと思われます。ただ、多くのスマホ決済サービスが相次いで参入しているため、利用者にとっては選ぶのが難しいという面もありそうです。

一方で、実際に利用してみればスマホによるキャッシュレス決済の満足度はかなり高いという調査結果も出ています。身近なシーンで「使ってみたい」というきっかけを利用者が持つことにより、スマホ決済の割合は急速に広がっていくのではないでしょうか。

文・渡辺友絵(ライター・編集者)/fuelle

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