株式やFXとともに、分散投資のひとつとして不動産投資を始める個人投資家が増えている。不動産投資で収支をプラスにするには、物件購入前に利回りをしっかりと見極めることが大切だ。そこで今回は利益を出せる利回りの相場や、計算方法について詳しく解説していく。利回りについて理解し、物件選びの参考にしてみてほしい。

平均的な不動産投資の利回りは?

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(画像=PIXTA)

日本不動産研究所がおこなった「不動産投資家調査(2019年4月現在)」の調査結果によれば、東京都の中でも最も人気の港区、品川区、目黒区、大田区の4区で構成される城南エリアの期待利回りは、ワンルームタイプで4.3%となっている。2018年10月の同調査より0.1ポイント下がり、この調査で過去最も低い水準を更新した。墨田区や江東区など東京大手町まで15分以内の城東エリアの期待利回りは4.5%となっている。

主な地方都市にある賃貸住宅一棟の期待利回りは以下の表のとおり。

都市名 期待利回り
札幌 5.5%
仙台 5.5%
横浜 5.0%
名古屋 5.1%
京都 5.2%
大阪 4.9%
神戸 5.2%
広島 5.8%
福岡 5.2%

利回りの種類

利回りには、表面利回りと実質利回りなどいくつかの種類がある。それぞれの違いについて解説していこう。

表面利回りと実質利回り

表面利回りとは、物件価格と家賃収入のみを計算し、表面的な収益性を表した数値のことだ。それに対して実質利回りは維持管理費や税金など、物件を保有するコストも計上した利回りである。

表面利回りは「年間家賃収入÷物件の購入価格」で計算できる。これは物件に投資した金額を年間家賃収入でどれだけ回収できたかを示すものだ。しかしここでの計算に含まれるのは、物件の購入価格のみ。不動産を購入する際に必要な諸経費や、物件を維持するために支払う支出は想定されていない。

実質利回りは「(年間家賃収入-年間経費)÷(物件の購入価格+購入時諸経費)」で計算する。不動産を購入するには、税金などの諸経費が必要となる。また物件を維持するには管理料や修繕費用など、さまざまな支出が必要だ。これらを考慮していないと、実際に物件を所有し運用する際に、大きなマイナスとなる可能性がある。

では実際に表面利回りと実質利回りの差が出る場合をシミュレーションしてみよう。

マンションA マンションB
物件価格 2000万円 2500万円
家賃/月 8万円 10万円
表面利回り 4.8% 4.8%

表面利回りのみを比較すると、マンションAもBも同じ結果となった。しかしここに、維持にかかる年間経費を乗せていくとどうなるだろうか。

マンションA マンションB
物件価格 2000万円 2500万円
家賃/月 8万円 10万円
管理費/月 7000円 3000円
修繕積立金/月 1000円 1000円
集金代行手数料/月 2980円 1652円
実質利回り 4.1% 4.5%

実質利回りを見ていくと、マンションBのほうが利回りが高いことがわかる。管理費や集金代行手数料など毎月支払う支出の額によって利回りは変わってしまうのだ。不動産の情報サイトで物件を見るとき、実質利回りを計算することの重要性がわかる。

投資用物件情報には表面利回りのみが記載されていることがほとんどだ。その利回りに飛びついてしまい、実質利回りをきちんと計算していなければ、最終的には損失を出してしまうこともある。

物件購入の際は表面利回りだけでなく、実質利回りも考慮して決断することが大切だ。

-不動産会社が提示するのは想定利回り

想定利回りとは、不動産会社が提示する「周辺の家賃相場で満室になったと想定した場合の利回り」だ。表面利回りと同様に、ランニングコストは考慮されていない。さらに場合によっては実際に借り手がつく家賃よりもかさ上げされており、そのままでは借り手がつかないような場合もある。

周辺の家賃相場が高くても、物件が古い、設備が悪い、日当たりが悪いなどの条件が悪ければ、相場通りの家賃では借り手はつかない。想定利回りはあくまで不動産会社が見せる夢のようなものだと考え、厳しく現実を見極めて試算することが重要だ。

自己資金と借入金の利回りの差に注意

物件の購入資金にどれだけ自己資本を入れるのかは悩ましいポイントである。自己資本の割合は自己資本と借入金の利回りの差を考えなくてはならない。

同じ2000万円の物件で考えてみよう。賃料収入は年間200万円だ。すべて自己資本で購入した場合、表面利回りは10%となる。では自己資本は200万円、残り1800万円を借り入れた場合で考えてみよう。銀行への返済は利息と元本あわせて年間80万円とする。返済額を家賃収入から引いて考えると、「120万円÷2000万円」で利回りは6%になる。

しかしここで考えたいのは、不動産投資では、家賃収入から借入金を返済できていれば、借入金は投資効率から外して考えてもいいという点だ。借り手がつき、返済が賄えているのであれば、自己資本200万円で毎年120万円の利益を得ているということになる。利回りとして考えると60%とかなりの高利回りとなるのだ。

自己資本を少なくし、借入金を増やすと物件価格に対する利回りは低下するが、自己資金に対する利回りは上昇するということになる。投資効率という意味で考えると、物件の購入資金をすべて自己資本で賄うより、自己資本をある程度減らしてローンを組んだほうが効率がよいということだ。

また、不動産投資では、自己資本がゼロでも、きちんと借り手がつき、家賃収入を得ることができればOKである。ローンの返済額よりも家賃収入が上回っていれば、利益を出し続けることができるからだ。ローン審査でも、自己資本の多寡より投資物件の収益性や安定性が重視される傾向にある。

しかし家賃収入が思ったように得られるかどうかは保証されていない。最初は借り手がついたとしても、途中で空室が出て家賃収入が途絶えたとき、借り手が見つかるまで持ちこたえられるように、余裕のあるキャッシュフローを組むことが大切だ。そのためには、自己資本を増やし返済額を減らすことが必要である。また物件の築年数が古くなれば借り手がつきにくくなり、家賃を下げる必要が出てくる場合も。それらのことを考慮し、投資効率と安全性のバランスを見て自己資本の比率を考えておく必要がある。

実質利回りの算出に必要な要素

実質利回りの算出にはどのような要素が必要なのだろうか。確認しておきたい点をチェックしていこう。

ランニングコストを把握する

ランニングコストとは物件を維持するために必要な支出のことだ。物件の管理費、補修積立金、固定資産税など、物件を所有する限り支払い続けなくてはならない支出がこれにあたる。かかる税金もきちんと把握し、費用に織り込んでおくことが大切だ。固定資産税については不動産会社で試算することが可能である。

その他、組合費、町内会費、エレベーター保守点検費、ケーブルテレビ代など物件ごとに異なるランニングコストが必要となる。物件を購入する前に不動産会社にこれらのランニングコストがどれほどかかるのか確認し、試算しておこう。

物件の購入にかかる手数料は自己資金で用意すること

物件を購入する際、仲介手数料などの諸費用が必要となる。こちらも実質利回りを計算するうえできちんと計上しておかなくてはならない項目だ。また諸費用は銀行からの融資には組み込めないことが多いため、フルローンで物件を購入するとしても、自己資金で用意しておかなくてはならない。

具体的には、不動産仲介業者に支払う仲介手数料、印紙税、登録諸費用、融資諸費用、不動産取得税などだ。これらは物件を購入する際、一度だけ支払うものだが、物件購入費用に加えておくと実質利回りがよりリアルな数字となる。

修繕費用は利益から別に差し引いておく

賃貸物件をはじめとする不動産は、新築の時点が一番価値が高く、経年劣化により価値はどんどん下がっていく。人が住む家は少しずつ傷んでいき、ある程度の年数がたった時点で修繕しなくてはならない。

大規模なマンションであれば、全体としての修繕積立金を管理組合に支払い、プールしていく。この修繕積立金はランニングコストの中に含まれる。それとは別に、部屋ごとで起こるトラブルや故障を修繕するための費用も、収益の中からあらかじめ差し引いておくことが必要だ。

賃貸物件の設備が壊れた場合、借り手に故意や過失がなければ修繕費用は貸し手側が負担しなくてはならない。これは国土交通省が作成した「賃貸住宅標準契約書」にも記載されており、正当な理由がないまま修繕されないときは借り手側が修繕し、費用は貸し手に請求できるとされている。

例えば経年劣化で備え付けのエアコンが壊れた場合や、配水管が壊れて水が溢れた場合などは、すべて貸し手側の負担で修繕しなくてはならない。これらのリスクに備えてある程度修繕費用をプールしておくことが大切なのだ。

ローンの返済比率

ローンの返済比率とは、物件の家賃収入に対してどれくらいローンの返済額が占めているかという割合のことだ。家賃収入が年間100万円に対して、ローンの返済額が元本利息あわせて年間40万円の場合、返済比率は40%となる。

返済比率があまりに高すぎると、収益が出ないだけでなく、少しでも空室が出た場合にキャッシュフローが滞り、不動産投資が行き詰まってしまう。返済比率は40%から、多くても50%までに抑えておくとよいだろう。

空室リスクも織り込んでおく

実際に物件を購入し、運用していくうえで忘れてはならないのが空室リスクだ。実質利回りは支払うべき費用を計上しており、表面利回りよりも、より現実に即したキャッシュフローを想定することができる。しかしそのキャッシュフローを実現するには、「物件に常に借り手がつき、家賃収入が入ってくる」ことが前提だ。しかし借り手がつかず空室の状態では、収益はゼロとなり利回りはたちまちマイナスとなる。不動産投資にとって空室リスクは何よりも怖いものだ。

しかし空室リスクは不動産投資をするうえで避けては通れないものでもある。引っ越しなどで空室が生じた場合、次の借り手が見つかるまで一定の期間資金繰りができるようキャッシュフローを組んでいなければ、不動産投資は行き詰まる。資金繰りができず、ローンの返済が滞るようなら物件を売却しなくてはならない場合もあるのだ。

空き室リスクを軽減し、キャッシュフローに余裕を持たせるには、自己資本率を高めることが効果的である。例えば自己資本100%で物件を購入していれば、極端な話、すべて空き室であってもプラスはないがマイナスとなることもない。自己資本とローンの比率でバランスを取ることで空き室リスクの対策は取れるため、しっかりとキャッシュフローを立てておくことが大切だ。

高利回りの物件を探す方法とは

不動産投資で収益を出していくには、高利回りの物件を探すことが重要となる。利益が出せる物件はどのように探せばいいのだろうか。

都市部で高利回りの物件を探す

まずは都市部で高利回りの物件を探す方法だ。都市部で利回りがよい物件を探す場合は「どれくらいの需要があるか」を重視して物件を見極めていく必要がある。都市部では土地の価格が高いため、相対的に物件の価格も上がる傾向にある。不動産情報サイトでは表面利回りのみが表示されているが、これはあくまで「借り手がつき、想定される家賃が入ってきたらこれだけの利益が出ますよ」という目安でしかない。まずは表面利回りだけでなく、ランニングコストなどを計算して、実質利回りを出しておくことが必要だ。

実質利回りが好条件であっても、それだけで判断してはいけない。収益を出すには「借り手がついて家賃収入が継続して入る」ことが必要だからだ。いくら利回りがよくても借り手がつかないままでは実際の収入を得ることはできない。その物件が「借り手がつく」、つまり「需要がある」物件であることも大切だ。

都市部であれば、独身者向けのワンルームマンションの需要が高いことが予想される。それだけでなく、駅からの近さ、収納の充実度、インターフォンやオートロックなどの設備、周辺の住環境、日当たりや外観など、さまざまな観点から「需要があるか」をチェックする。

物件の周辺に大学や専門学校があるエリアであれば、学生の需要を見越し、単身者向けで家賃が割安である物件が特に好条件となる。利回りや築年数といったすぐにわかる情報だけでなく、物件の細かい部分までしっかりチェックすることで、需要が高い物件かどうかがわかるようになるだろう。

郊外で高利回りの物件を探す

郊外で高利回りの物件を探すときも、都市部と同じくまずは実質利回りを確認することが大切だ。表面利回りだけを見ていては、ランニングコストなどがかさみ、実際には利益が出ないこともある。物件を維持するためにはどれくらいの支出が必要になるか、まずはしっかりと計算してから判断すること。

次にチェックしておきたいのが物件に需要があるかどうかだ。郊外の物件は、都市部よりも需要を見極めるのが難しくなる。都市部であれば、駅が近く交通の利便性が高ければ、部屋が多少狭かったり、日当たりが悪かったりしても借り手がつく可能性が高い。しかし郊外の物件では、どのような層に需要がある物件なのかをよく見極めて、借り手の求める物件を探す必要がある。

例えば駅から遠い物件であっても、駐車場が割安で確保できるのであれば、車を主な交通手段として利用する借り手がつきやすい。また郊外ではファミリー向けの広めの物件であっても、都市部より割安に購入できるため、ベッドタウンにあるファミリー層に人気の物件に狙いを定めるのもよいだろう。その場合、マンションだけでなく中古戸建なども投資対象となる。

高利回りの物件を探して所得を増やす

不動産投資は利回りをしっかりと計算し、キャッシュフローを組んでおくことで利益を出せる。高利回りの物件を探すには、不動産会社が提示する想定利回りだけでなく、実質利回りをきちんと計算したうえで、物件の需要を見極めることが大切だ。

部屋の広さや日当たりなどの条件が悪くても、家賃でバランスを取ることで借り手はつく。不動産会社が提示する想定利回りの家賃をうのみにせず、実際の物件や周辺の家賃相場を見比べ、実際に借り手がつく家賃を想定しておこう。家賃を下げると利回りは下がるが、借り手がつかなければ不動産投資で利益を出すことはできない。

一度借り手がつけば不動産投資は安定して収益を出し、所得を増やすことにつながるため、まずはきちんと物件を見極めて不動産投資を始めてみてはいかがだろうか。(ZUU online 編集部)