個人年金は、一定の節税効果を受けながら、老後のための資金を準備することができる保険です。個人年金は、年金の受け取り方の違いから「終身型」と「確定型」の区別があります。「平均寿命が延びている今の時代には終身型は安心なのかな?」「確定型ってどういう内容?」と気になっている人も多いのではないでしょうか。終身型は確定型と比べて、どのようなメリット・デメリットがあるかを解説します。
終身型の個人年金は長生きしないと損
終身型の個人年金は、「トンチン年金」と呼ばれ、イタリアの17世紀の銀行家ロレンツォ・トンティ氏により提案された制度に由来します。解約したときや被保険者が亡くなったときの返戻金を低く抑えて、その増やした年金原資を長生きする被保険者に年金として支払う仕組みです。長生きすると多くの年金が受け取れるということですね。
日本生命の“Gran Age(グランエイジ)”を例にとって、シミュレーションしてみましょう。加入は50歳以上が対象になっています。50歳の男性なら毎月5万790円、女性なら毎月6万2,526円の保険料を70歳まで払い込むと、70歳から毎年60万円を一生涯受け取ることができるという契約内容です。
70歳までに支払う保険料の総額は、男性で1,218万9,600円、女性で1,500万6,240円です。男性91歳、女性96歳から払い込んだ保険料の総額より多く受け取ることができるようになります。
逆に、ここまで長生きをしないと損になってしまうということですね。
確定型個人年金と終身型のメリット・デメリット
確定型個人年金と終身型、それぞれの特徴と加入した場合のメリットとデメリットについて紹介します。
確定型個人年金のメリット・デメリット
年金を受け取る期間や受取総額が決まっているタイプの年金保険です。保険料の総額を何年間で受け取るかによって、5年確定年金、10年確定年金、15年確定年金などの種類に分かれています。
メリット
○年金受取人や保険料払込期間、年金支払期間の各要件を満たし、個人年金保険料税制適格特約を付加することで、個人年金保険料控除が受けられ、所得税と住民税の負担が軽くなる。
○元本割れになる可能性が低い。
デメリット
○年金を受け取ることができる期間が決まっている。
○インフレーションに弱い。
終身型個人年金のメリット・デメリット
終身型は、契約時に決めた年齢から、一生涯ずっと年金を受け取ることができるタイプの年金保険です。5年、10年など保証期間を設けてあり、保証期間中に被保険者が亡くなった場合には、保証期間に支払われる年金の残額を遺族が受け取ります。
メリット
○個人年金保険料税制適格特約を付加することができる。
○生きている限り、年金を受け取ることができる。
デメリット
○死亡保障はない。
○確定型個人年金より解約返戻金を低く設定している。
○長生きしないと返戻率が低くなる。
個人年金を終身型にするのがオススメの人
個人年金を終身型にした方がメリットの大きい人を考えてみました。
老後資金に余裕がある人で、70歳までは働いて70歳からは公的年金と終身年金で生活費をまかなおうと考えるなら、残った財産は家族に残すことができそうです。
厚生労働省の「平成30年簡易生命表」によると、男性の平均寿命は81.25歳、女性の平均寿命は87.32歳、男女の差は6.07歳になっており、女性の方が長生きする場合が多いと考えられます。妻が年下のケースでは、妻に個人年金保険を掛けて、夫が亡くなった後の妻の生活費を確保するために、夫の遺族厚生年金とあわせて活用できるのではないでしょうか。
個人年金は必要経費?加入はよく考えて
個人年金の終身型に加入して保険料を払い込むと、死ぬまで年金を受け取り続けることができるのですから、とても魅力があるように思えます。
総務省統計局が発表した「2018年の家計調査報告」では、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみ高齢無職世帯での家計収支不足分は毎月4万1,872円、60歳以上の高齢単身無職世帯では3万8,670円となっています。月に4~5万円の不足分を個人年金の終身型でまかなうことができるのなら安心です。
先ほどのシミュレーションを参考に考えてみましょう。毎年60万円を一生涯受け取るには70歳までに約1,200~1,500万円の保険料総額が必要ですから、月々の払込額は大きくなっています。そのため、途中で解約すると損をしてしまいます。
5年、10年などの保証期間中に亡くなった場合でも、その期間に払い込んだ保険料の全額を受け取ることができない点は注意しておかなければなりません。保証期間を過ぎた後に亡くなってからは年金を受け取ることはできなくなるので、被保険者が一定の年齢以上長生きをしなければ、払い込んだ保険料総額より受け取る年金の方が少なくなってしまいます。
日本人の平均寿命は毎年長くなっており、2065年には、男性84.95歳、女性91.35歳になると見込まれています。個人年金の終身年金は、長生きをすることを前提にして加入する商品だと認識して、検討することが大切です。
文・藤原洋子(ファイナンシャル・プランナー)/fuelle
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