老後のための資金を今から準備しようとiDeCoの口座を開設してみたものの、どのように運用したらいいかわからず、とりあえず定期預金で運用している人も多いのではないでしょうか。しかし、iDeCoを利用するなら投資信託も考えてみたいところ。今回はiDeCoで投資信託に投資するメリットをご紹介します。
iDeCoでは3種類の税制優遇が受けられる
iDeCoを利用すると、普通に証券会社の一般口座(もしくは特定口座)で運用するのに比べ、税金などがお得になると聞いたことがある人もいると思いますが、それはこれからご紹介する3つの税制優遇制度が主な理由です。
1つ目は、掛金が全額所得控除になることです。例えば、年収500万円の人であれば課税所得に対してだいたい所得税を10%、住民税を10%払っているのですが、仮に毎月1万円をiDeCoの掛金として拠出すると、その全額が税額軽減の対象となり、1年間の掛金12万円の20%である2万4,000円税金が軽減されます。
2つ目は、運用益が非課税で再投資できることです。普通に投資を行うと、利益が出た場合20.315%の税金がかかりますが、iDeCoなら非課税で再投資できます。
3つ目は、受け取るときにも大きな控除があることです。iDeCoでは毎年お金を受け取る年金と、一度に全部受け取る一時金から、受け取り方法を選ぶことができます。どちらも所得ですから税金がかかりますが、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金の場合は「退職所得控除」の対象となり、その負担が軽減されます。
iDeCoで投資信託へ投資する3つのメリット
複利の効果を生かせる
金利の付き方には「単利」と「複利」があります。単利では元本にのみ利息が付き、複利では元本だけではなく発生した利息に対しても利息が付きます。
投資信託の投資では通常、ある投資信託の収益分配金から税金を控除したお金を、同じ投資信託を買い付ける資金に回します。つまり、一度発生した分配金をさらに運用することで、同じように複利効果が得られます。
毎月一定額の積立なのでリスクを抑えることができる
iDeCoでは毎月少額ずつお金を拠出するので、大金を一度に運用するよりリスクを抑えることができます。毎月一定額ずつ投資信託を買うと、その投資信託の値段が上がれば買う数量が減り、値段が安くなれば多く買うことになります。つまり、購入価格の平均を抑えることができます。
投資をしていると、値段が上がっている時に一気に買ってしまい、そこから値段が下がって売れなくなるという失敗がよく起こりますが、iDeCoの積立ではそうした高値掴みのリスクが少なくなります。
運用益が非課税なので利益が出る分だけ得をする
iDeCoの税制優遇のうち、特に投資信託に有利なのは運用益が非課税になるためです。
まず、運用益が大きくなればなるほど、運用益非課税のメリットが活かせます。iDeCoには投資信託の他に元本確保型の商品もありますが、運用益はそれほど期待できないので、この税制優遇のメリットが期待できません。
次に、iDeCoで投資をすると上で述べた複利の効果がさらに高まります。通常、投資信託では収益分配金から税金を引いた額を再投資しますが、iDeCoの場合は収益分配金に税金がかからないので、再投資できる額が増え、その分配収益金にさらに分配収益金が付き、資産が増えていきます。
貯金とiDeCoのバランスが一番大事
iDeCoでは定期預金などの元本確保型の商品よりも投資信託の方がよりメリットが多いことをご紹介しましたが、あくまでそれはiDeCoで運用するならという点に注意しましょう。投資信託には損をするリスクもありますので、みなさんが持つ資産には預貯金なども必要です。大切なのは、自分の投資全体でバランスを取ることです。
例えば、月に2万円ずつ投資に回せる人であれば、iDeCoの元本確保型商品に月5,000円、投資信託に5,000円、iDeCo以外の貯金に5,000円、投資信託に5,000円とするよりは、iDeCoの投資信託に1万円、iDeCo以外の貯金に1万円とした方が、iDeCoの税制優遇を活かせるのではないでしょうか。間違ってもiDeCoの投資信託に月2万円まるまる投資しないように気をつけましょう。
iDeCoのデメリットにも目を向け、できる範囲で投資をしよう
iDeCoで投資信託に投資するメリットをご紹介しましたが、iDeCoには運用がうまくいかないと損をするリスクや、原則として60歳までお金を引き出せないデメリットもあります。メリットが多いからと極端にiDeCoに拠出することなく、投資信託に投資する一つの選択肢として、自分ができる範囲でうまく利用しましょう。
文・松岡紀史(ファイナンシャル・プランナー、ライツワードFP事務所)/fuelle
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