日本は長年財政赤字が拡大し、金融緩和によるインフレ目標の未達も続いています。その中で今、注目を集めているのが現代貨幣理論(MMT)です。「自国の通貨で借金をできる国は債務不履行に陥ることがない」という、ある種夢のような理論は、どのようにして登場して受け止められているのでしょうか。

財政政策による直接的な需要創出を

MMT,肯定派
(画像=cosma/Shutterstock.com)

MMTは米国の経済学者らが唱え始めた理論です。自国通貨の発行などいくつかの前提を満たす国について、金融政策による金利低下を通じた間接的な需要刺激よりも財政政策による直接的な需要創出を重視すべきだとします。物価の水準についても政府がコントロールできるとの考え方が基本です。もし財政出動で物価が上昇する場合は、政府が歳出減や税収増を通じてインフレを抑制できると想定しています。

米国では2007年の金融危機後、景気回復が進む中でも貧富の格差は依然として続き、政府が雇用創出を目指す積極財政策に一定の支持が集まる環境があります。その中でMMTは基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字脱却を目指す財政均衡主義と対峙し、抑制的な財政運営を批判する理論的な礎の一つです。

MMTの米国内での広まり

MMTの提唱者の一人、ステファニー・ケルトン氏は2016年の米大統領選挙の民主党予備選で、ヒラリー・クリントン元国務長官と最後まで争ったバーニー・サンダース上院議員の経済顧問を務めていました。「民主社会主義者」を自任するサンダース氏は、国民皆保険制度の導入を訴えるなど積極的な財政政策を掲げ、2020年の次期大統領選挙にも出馬を表明しています。

2018年の中間選挙で史上最年少の下院議員となったアレクサンドリア・オカシロコルテス氏もMMTを受け入れる姿勢を示し、温暖化対策で積極的な公共投資を行う「グリーン・ニューディール」の実施を主張。財政均衡主義に縛られるべきではないとの考えを示しています。

日本はMMTの想定にマッチしている?

MMTの支持者から見ると日本の現状はどうでしょう。政府債務がGDPの2倍を超え、中央銀行である日本銀行が国債を大量保有する一方で、低金利を維持する日本について、国が積極的な財政出動を続けても破綻しない実例と見る向きもあります。ただし日本の財政政策と金融政策は独立して決定されていて、安倍首相も政府が「MMTを実行しているわけではない」と否定。

一方、これまでの金融政策には限界も指摘されています。ゼロ金利制約の下で「異次元」の量的・質的緩和やマイナス金利政策に踏み込んでも、2%のインフレ目標は達成できない状況が継続。利ザヤの少ない地方銀行の収益環境が悪化するなど副作用も出てきています。こうした中で新たな突破口としてMMTに注目が集まっている側面もあるのです。

否定派の主張とMMTの今後

ノーベル経済学賞受賞者のクルーグマン米ニューヨーク市立大学教授や著名投資家のウォーレン・バフェット氏など多くの学者や経済人が、財政赤字を拡大してもインフレや破綻につながらないとのMMTの主張を批判しています。黒田日銀総裁もMMTには同意できないと明言し、日銀の独立性は確立されているとも強調しました。

MMTの積極財政運営の提案は、ともすれば政治家には魅力的なものに映るかもしれません。永田町でも議員の勉強会が開かれるなど、関心が高まっています。財政破綻を回避しつつ景気を浮揚させ、金融政策の行き詰まりも打破したい……そうした意識の中で主流派の考え方にどのような一石を投じるのか、今後も注目を集める場面が続きそうです。(提供:JPRIME


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