金先物は1500ドル台を下回り、上値が重い展開となっている。また、米中貿易協議では部分合意で景気懸念が後退したことにより安全資産である金の下押し圧力は加速している。

米中貿易戦争は金価格を左右する大きな要因として見られてきたが、今後も両国の紛糾は本当に金の好材料となりえるのだろうか。また、年末までに金は1600ドルを上回ることができるのだろうか。本記事では、貿易戦争と金価格のいままでの相関関係を取り上げる。

Gold 週足 TTM
(画像=Investing.com)

貿易戦争の懸念の高まりと、金価格は必ずしも逆相関ではない

米中貿易戦争が始まったのは2018年1月、ドナルド・トランプ米大統領は中国製の太陽光パネルや家庭用洗濯機に関税を課した。

その後、トランプ大統領は中国の鉄鋼に25%、アルミに10%の関税を課した。そして2018年7月、8月、9月と立て続けに関税が課された。

現在、米中貿易戦争に突入してから460日以上が経過しており、米国は5500億ドル相当の中国製品に対して関税を課している。一方、中国は1850億ドル相当の米国製品に対して報復関税を課している。

それでは、過去20ヶ月間の金価格の推移を確認しよう。2018年1月の金は1オンス当たり1300ドルを上回っていたが、10月には1200ドルまで下落した。注目すべきなのは、貿易戦争の不確実性が高まっていた2018年4月から8月にかけて、金は最も下落していたことである。

2019年の夏には、2013年4月以来の最高値の1560ドル付近まで上昇した。そして、現在の金は、不安定なレンジ相場へ突入している。金価格と貿易戦争は必ずしも相関していないように思える。現在、一部の市場関係者は、米中貿易戦争やブレグジットは合意間近であると考えている。これら2つの不確実性が終息する可能性を考慮すると、金の買い方は長期的に減少するかもしれない。

中国の宝飾品用途の需要と金価格、下押し圧力はドル高によるもの

我々が普段意識することはないが、貿易戦争がもたらす中国の経済への悪影響が、中国における宝飾品や産業用の金需要を引き下げる可能性がある。

中国は世界最大の金の消費国である。中国人民銀行(中央銀行)は7月だけで10トン近くの金を購入し、金保有高を62.26オンス(約1945トン)まで引き上げた。他方、2018年における中国宝飾品業界の金需要は前年比3%増の672.5トンとなっている。しかし、第4四半期に注目すると、3%減となっている。

Forex.comのアナリストであるFawad Razaqzada氏は14日、以下のように述べている。

「例え米中貿易戦争が終息したとしても、これは必ずしも金にとって悪い事ではない。中国による強い金需要が価格をサポートし続ける可能性がある」

また、直近数週間で金を下押しした材料は、米ドルである。ドルインデックスは9月、2年半ぶりの高値である99.33付近まで上昇した。年初来では2%以上の上昇を見せている。このことは、最近の金価格にとって逆風となっている。Sunshine Profits社は以下のように述べる。

「理論に反して米中貿易戦争は金にとって好材料となっていない。一方で、米ドルは上昇し、金を下押ししている」

1600ドルの可能性はまだある

我々の考えでは金は年末までに1600ドルに到達し、2020年には過去最高値の1900ドルを突破する可能性はあると考える。

この予想は、10月と12月のFOMCで0.25ポイントの利下げが決定されるとの前提に基づいている。各FOMCで金が50ドルの上昇が期待できるとすれば、1600ドルを突破することも可能だろう。

また、我々は年末までに米中貿易が合意に向かうとは考えていない。米中貿易が合意に至らなければ、金は上昇を続けるだろう。

インベスティング・ドットコムのAndy Hecht氏は、世界的な金融緩和や米中貿易戦争、ブレグジット、トランプ大統領の弾劾などの不確実性は、金の上昇を引き起こす可能性があると言及しており、「ある朝、金が1600ドルを上回っていても不思議ではない」と述べている。

またforex.comのRazaqzada氏は、12月までに金が1600ドルまで上昇する可能性をテクニカル的な観点から述べる。同氏は、週足のRSIが、買われすぎの水準からゆっくりと中立へ近づいていると述べる。これは、金が大きく反落することなく、高値水準を維持していることを示しており、まだ上昇に向かう余地があるということを指摘している。

一方、金に連動する上場投資信託(ETF)が39億ドルの純資金流入となったことにも言及している。ETFの金現物保有残高は過去最高の2808トンとなっている。

ETFの金現物保有残高から判断するならば、金はさらに200ドル上昇する可能性がある。

Razaqdada氏は、「金は4ヶ月続伸となっており、過去12ヶ月の内の8ヶ月で上昇している。金は6年前から継続する持合いをブレイクしている」と述べ、引き続き金の価格は上昇する見通しを立てている。(提供:Investing.comより)

著者: バラーニ クリシュナン