ソフトバンクグループは、23日、米「ウィーワーク」の経営再建に向けて最大95億ドルの金融支援を行なうと発表した。ウィーワークは2019年内のIPOを目指していたが、成長性、収益性への懸念に加え、創業者アダム・ニューマン氏のガバナンス上の問題が決定打となり9月30日に上場を断念、予定していたファイナンスが閉ざされ資金不足が懸念されていた。
年初に470億ドルと評価された同社の株式価値は80億ドルに急落、ソフトバンクグループは上場撤回による投資収益の逸失に加え、有利子負債の拡大と数千億円規模の評価損を余儀なくされる。
従来、ソフトバンクグループは経営陣の自主性を尊重し、出資先企業を子会社化しないことを投資方針としてきた。発表された支援スキームにおいても種類株等を活用することで議決権ベースでの連結子会社化を回避している。とは言え、今回については発行済み株式の8割をもつ事実上のオーナー経営者としてウィーワークの再建に踏み込まざるを得ない。事業拠点の再編、人員削減といった構造改革から収益力に軸足を置いたビジネスモデルの再構築まで、ベンチャーキャピタリストとしての “目利き力” とは異なる総合力が試される。
一方、ウィーワークの躓きは、事業拡大を最優先に大量のマネーを繰り返し投下することで企業価値を一挙に高める大型ユニコーンの育成モデルに対する警鐘でもある。
未公開株の評価は投資家サイドの思惑で一方的に決定される。そして、起業家と出資者の一部には早期の“成功”を目指すあまり、短期の出口戦略のみを関心事とする者もいる。成功とキャピタルゲインがGOALであって然り。ただし、“上場” での実現を目指すのであれば事業の継続性を担保する確かな収益力と高い企業統治能力が必須であり、ファンドにはそれを客観的に評価する仕組みと投資家への情報開示が求められる。
本件を契機に起業家はこれまで以上に厳しい選別に晒されることになるだろう。そして、唯一それこそがもう一段の投資を自身に呼び込むための近道でもある。
今週の“ひらめき”視点 10.20 – 10.24
代表取締役社長 水越 孝