11月13日、「日経CNBC『トップに聞く』に学ぶ!Change & Innovation10倍速で『組織成長の壁』を越える、戦略的『組織モデル』の創り方」と題するセミナーが行われた。

本セミナーには株式会社ZUUの代表取締役 冨田和成と株式会社クレディセゾン 代表取締役会長CEO林野宏氏が登壇。それぞれ講演を行なった後に、両者による対談が実施された。本記事ではその対談の模様をお届けする。

企業の力は、そこに所属する社員の営業力の総和である

ZUU online編集部
(画像=ZUU online編集部)

「営業」と題した書籍の執筆経験を持つ冨田代表は、林野氏が講演中に口にした「企業の力は、そこに所属する社員の営業力の総和である」というフレーズに注目。その真意について尋ねるところから対談はスタートした。

このフレーズについて、林野氏は「日本の企業のROE(自己資本利益率)は低い。いわゆる管理部門は営業をしない。経営企画みたいな部署も自分たちでは売らない。どんないいものを作っても売れなかったら資本主義社会では意味がない。だからこそ企業の本当の価値、企業の力というのは、そこに所属する社員の営業力の総和なんだという結論にならざるを得ない」と解説した。

クレディセゾンの林野氏といえば、「サインレス」や「永久不滅ポイント」の導入など業界内で先進的な取り組みを行ってきたことで知られる。

こうしたアイデアの源泉を問われた林野氏は「社員が勝手にやってることですよ」と笑いながらも、「現場を知ること」の重要性を強調した。

例えば、サインレスについては、実際にスーパーのレジに行列ができているのを見たことから着想したという。

「スーパーのレジに行ってみるとカードが使われていない。なぜ使われていないかというと、並んでいるからです。サインが必要だから。サインなんかしてると、後ろに並んでいるお母さんに睨まれるわけですよ。『子どもの夕飯を用意しなきゃいけないのに何をやってるんだ』って。だったら、サインレスにすればいい」(林野氏)

当時は、他のカード会社に呼び出され、「ルール違反」「使った覚えがないと言われたらどうするんだ」などと言われたが、「そうしないと、後ろに並ぶ人の目が気になって。誰も使わない」と返したという。

ポイントなんて消えないほうがいいにきまってる

永久不滅ポイントについても林野氏は「ポイントなんて、消えないほうがいいに決まってる」とした上で、その取り組みが始まった背景を語った。

「カードの利用額の平均は1年間で30万円程度です。そうなると交換できるポイント約300ポイント。交換は200ポイントからだとすると平均利用額の人は最小ポイントのアイテムにしか交換できない。そのうえ、3月に一斉に電話がかかってくる。わざわざ交換して、包装紙に包んで、問い合わせてきた人に全員に郵送する。こんな割りに合わないことはありません」(林野氏)

そこから、「日本の企業は他のことは全部真似するのに、これだけはしない。みんなやればいいのにやらない。なぜかというと500〜600億円の引当金が必要だからです。同じ業界の会社に真似されるようなことをやるのがイノベーションの第一歩。そうやって先駆者になれれば評価が変わる」と持論を展開した。

林野氏が、社員にも常日頃から「イノベーティブでなければ評価されない」と語っているため、クレディセゾンは組織として様々なアイデアが上がってくる仕組みになっているという。

セゾンで最も成功しているのはグローバルビジネス

こうした様々な取り組みを推し進め、現在ではアジアで幅広く事業を展開するクレディセゾンには、「尖った」人材が多いという。冨田代表も、前職である野村證券時代に知り合ったクレディセゾンのシンガポール拠点のメンバーの名前を挙げ、「良い意味で金融機関っぽくない人が多い」「カード会社にも関わらず非常に攻めるイメージがある」と述べた。

実際、アジア圏で支持を受けているタクシー配車アプリ「Grab」に出資するなど、大きな成果を上げており、林野氏も「セゾンで最も成功しているのはグローバルビジネス」と胸を張る。

海外でのビジネス展開について林野氏は「インドが典型的ですが日本から行っているのは女性一人です。中国は二人、タイは四人、ベトナムは六人」と各拠点の社員数の少なさを紹介した上で、「株を51%持ってもその会社が成長しなければ意味がない。社員を大量に送り込もうなんてことも考えていません。基本的には現地の人に任せます」と話した。

冨田代表から、海外で活躍する人材の育成法について問われると、「ほとんど社内の公募です」と回答。そして、「素養は関係ないですよ、現地に骨を埋めるような覚悟で行ってくれないと。海外に行くと一年でものすごい成長しますよ」と熱っぽく語った。

最後に、こうしたアジアのビジネスについて林野氏は「将来的には、東南アジアで10万人、日本で1万人。それぐらいの規模の会社ができたらいいなと考えている」との目標を語り、対談を締めくくった。