NISA(少額投資非課税制度)には、2014年にスタートした現行NISAと、2018年からスタートしたつみたてNISAがある。2つのNISAは併用できず区分を切り替えていずれかを選択するのだが、選ぶポイントと変更前の口座の資産の扱いについて解説する。

つみたてNISAと現行NISAとの違い

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(画像=Watchara Ritjan/Shutterstock.com)

国が推進している少額投資非課税制度には、現行NISAとつみたてNISAがある。一般NISAはつみたてNISAに先立って導入されたこともあり、新しいつみたてNISAに対し、現行のNISAという呼ばれ方もする。

現行NISAとつみたてNISAでは拠出方法に違いがある。現行NISAは買いたい株式や投資信託を一括で購入するため、まとまったお金を投資に回したい場合に向く。それに対してつみたてNISAは月々3万円など決めた額を投資信託の買い付けに拠出するため、少額ずつ積み立てて投資をしたい場合に適している。

投資枠と非課税期間にも違いがある。一般NISAは年間120万円まで新規投資が可能で、非課税期間は5年間。つみたてNISAは年間40万円を最大20年間非課税で運用できる。

1年で投資できる額は現行NISAのほうが大きいが、5年間を累計すると600万円で、つみたてNISAの800万円のほうが非課税投資枠は大きいことになる。

投資対象の範囲も大きく異なる。現行NISAは国内株式、海外株式、投資信託、ETF、REITと幅広い。ネット証券大手のSBI証券では投資信託だけでも2,560本の取り扱いがある。

つみたてNISAは金融庁が許可した投資信託およびETF計173本に限られる。手数料が安く極端な値動きが少ないインデックス型の投資信託が中心だ。(※2019年10月時点)

つみたてNISAと現行NISAの併用はできないので切り替えをおこなう

現行NISAをしている人がつみたてNISAを始めたくなったらどうすればよいか。現行NISA口座とつみたてNISA口座を同時に保有することはできない。同じ証券会社内はもちろん、A証券で現行NISA、B証券でつみたてNISAといった持ち方もできないため、NISA口座を切り替えて使用する。

切り替えは1年に1回のみ可能で、同じ年に両方の投資を行うことはできない。まだ買い付けをおこなっていない場合は口座のある証券会社に「金融商品取引業者等変更届出書(勘定変更用)」を提出すれば年内に切り替え可能だ。

期限は証券会社によって異なるが、9月末までが目安となる。期限を超える場合、もしくはその年の枠をすでに一部でも使ってしまっている場合は、翌年から切り替えるための「非課税口座異動届出書」を提出する。手続きの手順は、現行NISAからつみたてNISAの場合でもその逆でも同じである。

現行NISAとつみたてNISA変更前のNISA口座の資産は?

例えば現行NISAからつみたてNISAに切り替えた場合、現行NISA口座にある資産は自動的に換金されると誤解している人もいるようだが、実際には次の3つの選択肢から選ぶことになる。

売却する

今のNISA口座にある株や投資信託を売却し、含み益があれば利益を確定し、含み損があれば損失を確定させる方法である。NISA口座なので売却益にかかる20%の税金は非課税。損失が出ても現行口座と損益通算して節税につなげることはできない。

課税口座に移す

一般口座や特定口座といった課税口座に移すという方法もある。移管時の時価が取得価額となるため、当初の購入価格より値上がりしていた場合、その差益には課税されない。ただしNISAでの購入時より値下がりしている場合には移管時の低い価格が取得価額となるため、その後値上がりした場合は課税の対象となる。

保有を継続する

切り替えをしても取得後5年以内なら切り替え前の商品を非課税で保有し続けることができる。2018年に現行NISAで買い付けた商品なら、2022年まで非課税扱いのままだ。その間つみたてNISAで買い付けをおこなうと、現行NISAとつみたてNISAの両方で運用するのだが問題ない。そういう意味では現行NISAとつみたてNISAの「併用」は可能なのだ。

NISAはできるだけ継続したほういい

年に1回切り替えが可能ということで、現行NISAからつみたてNISAに区分変更してすぐにまた元に戻すことも可能だが、あまり一貫性なく切り替えを繰り返すことは意味がない。

つみたてNISAは長期的な資産形成を目的とした制度であるため、こつこつと少額ずつ積み立てて運用することに意味があり、短期的なリターンを求めるには適さないからだ。

現行NISAは新興国株式やレバレッジ商品を扱うなど比較的ハイリスク・ハイリターンな商品も購入可能である。非課税制度の最大のメリットは売却益に税金がかからないことなので、積極的にリターンを取りに行く投資スタイルも決して間違いではない。

大切なのはそれぞれの特徴を十分に踏まえた上で、計画的に使い分けることである。現行NISAは5年、つみたてNISAは10年、20年でどう運用するかを考えたい。どちらが儲かるか、どちらが得かといった話ではなく、どのようにNISAを活用するのかイメージができてから選択するのが良いだろう。

NISAは2024年以降、2階建の新NISAに

2020年度税制改正大綱でNISAは2024年に新NISAに刷新されることが盛り込まれた。新NISAでは積立枠(1階)と、株式などに投資できる枠(2階)の2階建になるという。

一方のつみたてNISAは、2037年までの期限を2042年まで5年間延長し、2023年までに始めれば20年間の投資期間が確保できるようになる。今後の動向にも注目したい。

文・篠田わかな(フリーライター、ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES

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