確定拠出年金制度は多くの企業で導入されていて、自ら個人型の確定拠出年金に加入する人も増えている。転職や退職によって勤務先や職業が変わる際には各自の年金資産を持ち運ぶ仕組みとなっているが、自分で手続きを行う必要がある。

確定拠出年金は転・退職時にも持ち運べる年金・退職金準備制度

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(画像=Seasontime/Shutterstock.com)

確定拠出年金は自助努力で老後資金を準備するための制度であり、次のような特徴がある。

自分で運用方法を選択できる

確定拠出年金には個人で加入する個人型確定拠出年金(iDeCo)と、退職金制度の一貫として企業が掛金を負担する企業型確定拠出年金(企業型DC)がある。

いずれも掛金の運用方法や受取方法(年金受取・一時金受取)は自分で選択する。また掛金や運用益には税制面での優遇があり、運用成果によっては受取額を大きく増やすこともできる。

元本保証ではなく原則60歳までは引き出せない

確定拠出年金は老後に備えて長期的な資産形成を図る制度であり、原則60歳まで年金資産の引き出しはできない。また元本は保証されておらず、運用次第では受取額が掛金総額(積立総額)を下回る可能性もある。

転退職時には年金資産を持ち運べる

確定拠出年金では一人ひとりが個別に資産の管理・運用を行う。そのため転退職により勤務先や職業が変わったとしても、資産を引き出すことなく管理・運用を続けられるのが特徴だ。

60歳未満の確定拠出年金加入者が転退職する際には、年金資産を持ち運ぶため、状況に応じて年金資産の移換や登録情報の変更といった手続きが必要となる。

個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入していた人が転退職したときに必要な手続き

会社に勤めながら個人型確定拠出年金に加入していた人は、転退職後の状況に応じて次のような手続きが必要となる。

転職先で企業型確定拠出年金に加入する場合

転職先が企業型確定拠出年金を導入している場合、転職先の担当部署の指示に従い、個人型確定拠出年金の資格喪失と転職先の企業型確定拠出年金への資産移換手続きが必要だ。

資格喪失の手続きは「加入者資格喪失届」と「加入者資格の喪失理由・喪失年月日を証明する書類」を運営管理機関(金融機関)に提出して行う。

個人型確定拠出年金と企業型確定拠出年金の両方に加入できる場合もある

転職先が企業型確定拠出年金を導入している場合であっても、規約で個人型確定拠出年金への同時加入が認められていれば、引き続き個人型確定拠出年金に加入し、掛金の拠出と運用を継続できる場合もある。

加入を継続する場合には登録事業所変更の手続きが必要となる。変更手続きは「加入者事業所変更届」と、転職先の会社が記入した「事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」を運営管理機関に提出して行う。

転職先に企業型確定拠出年金がない場合

転職先に企業型確定拠出年金がない場合には、転職後も引き続き個人型確定拠出年金に加入できる。

加入を継続する場合には登録事業所変更の手続きが必要だ(手続きの内容は前述と同様)。

転職先に確定給付企業年金があり、規約で確定拠出年金資産の受け入れができると定められている場合には、確定給付企業年金へ年金資産を移換することもできる。

再就職しない場合

退職後に会社には再就職せず、自営業者(国民年金第1号被保険者)や専業主婦(国民年金第3号被保険者)となる場合、引き続き個人型確定拠出年金に加入できる。

加入を継続する場合には国民年金の被保険者種別変更の手続きが必要だ。変更手続きは「加入者被保険者種別変更届」を運営管理機関へ提出して行う。

企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入していた人が転退職したときに必要な手続き

企業型確定拠出年金に加入していた人は、転退職後の状況に応じて次のような手続きが必要となる。

転職先に企業型確定拠出年金がある場合

転職先の会社でも企業型確定拠出年金が導入されている場合、転職先の担当部署の指示に従って年金資産移換手続きを行う。これにより転職先の企業型確定拠出年金制度のもとで掛金拠出と運用を継続できる。

再就職しない場合や転職先に企業型確定拠出年金がない場合

次のような場合には、企業型確定拠出年金の資産を個人型確定拠出年金に移す必要がある。

・会社に再就職しない場合
・企業型確定拠出年金のない会社へ転職した場合
・役員に就任して企業型確定拠出年金の加入資格がなくなった場合

資産移換の手続きは、個人型確定拠出年金を取り扱う運営管理機関(銀行・証券会社など)に口座を開設し、「個人別管理資産移換依頼書」を提出して行う。運営管理機関の選択や連絡などは基本的に自分で行わなければならない。

資産移換と同時に個人型確定拠出年金へ加入すれば掛金拠出を続けることもできる。加入申出の手続きは、「個人型年金加入申出書」とそのほか必要書類を運営管理機関に提出して行う。

必要な手続きを行わないと自動移換される

企業型確定拠出年金に加入していた人が転退職により加入資格を失った場合、期限内に年金資産の移換(または脱退一時金の請求)手続きをしなければ、資産は国民年金基金連合会に自動的に移換される。

移換手続きの期限は、企業型確定拠出年金の加入者資格を喪失した月の翌月から起算して6ヵ月以内(加入者資格は退職日の翌日に喪失する)。

(例)
退職日:2019年9月末日(資格喪失日:2019年10月1日) → 移換手続き期限:2020年4月末日

自動移換時には特定運営管理機関への移換手数料3,300円(税込)と、自動移換に関する事務手数料1,048円(税込)の計4,348円(税込)がかかる。

さらに移換された資産はその後運用されず、毎月管理手数料52円(税込)が発生してしまう。個人型確定拠出年金に加入して掛金の拠出を続けるかに関わらず、資産の移換は期限内に忘れずに行うようにしたい。

企業型確定拠出年金の加入資格を喪失した後、新たに個人型確定拠出年金に加入する場合、移換の申し出をしなくても年金資産は個人型確定拠出年金に移換される。

勤続3年未満の退職では掛金を会社に返還する場合も

勤続3年未満の退職では、規約によって会社が拠出した企業型確定拠出年金の掛金を返還しなければならないこともある。返還が必要かどうかは退職する勤務先の担当部署に確認の上、指示に従う必要がある。

転退職時には余裕を持って確定拠出年金の手続きを

確定拠出年金加入者が転退職する場合には移換や変更の手続きが必要だが、基本的には書類の提出といった簡単なものだ。しかし期限を過ぎてしまうと手続きが煩雑になったり、通常必要のない手数料がかかったりすることもある。そのためなるべく余裕を持って早めの手続きを心がけたい。

文・竹国弘城(ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES

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