国土交通省は「賃貸契約書面の電子化」を2019年10月1日から3カ月間の社会実験として進めています。その内容はどのようなものか、マンション経営などを行なっている収益不動産オーナーにとってどんな影響があるのか、見ていきましょう。

電子契約の社会実験とは?

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(画像=Mark Nazh/Shutterstock.com)

「ITを活用した重要事項説明(IT重説、以下同)」という言葉をご存知でしょうか。IT重説とは、不動産の売買・賃貸契約の場において宅地建物取引士が必ず行わなければならない重要事項説明を、テレビ会議等のITを活用して行うものです。2017年より本格運用が開始され、不動産の契約手続きを簡素化し、不動産業者や消費者の利便性を高めるものとして期待されています。ただし、オンラインでIT重説を実施したところで、実際の重要事項説明書のやり取りについては書面で行わなければならず、結局それほど手間は変わらないとも言われていました。

今回、国土交通省が進めている「重要事項説明書等の電磁的方法による交付の社会実験」とは、IT重説に加えて書面の交付もオンラインで行うことで、契約のさらなる簡素化を実現するためのものです。
この実験では、不動産業者は「重要事項説明書」を電子データとして作成して、説明の相手方である入居者などに電子メールなどを使って送り、入居者はその書類を確認し、IT重説によってオンラインで詳しい説明を受ける、という取り組みを行います。

今回の社会実験には電子契約サービスを提供している会社など、いわゆる「不動産テック」も参加し、盛り上がりを見せています。

「IT重説」で期待できる効果3つ

書面の電子化を行うことで得られるメリットを考えてみましょう。

業務効率化やコスト削減が実現できる

不動産事業者にとっては、業務の効率化やコスト削減が期待できます。紙ベースで書類を作成する場合、印刷や印紙の貼り付け、送付、保管などの作業が発生しますが、電子化すばこれらにかかる手間やコストを削減できるからです。

コンプライアンス強化に役立つ

紙の書類では紛失や破損、改ざんなどのリスクがありますが、電子署名された電子データであれば、そのようなリスクを抑えることができます。つまり、コンプライアンスの強化に役立つといえるわけです。

入居者の利便性が向上する

入居者にとっては、利便性の向上が挙げられるでしょう。説明を受けるためにわざわざ店舗に行かなくて済むため、時間の節約、交通費の節約になります。また、電子データであればオンラインストレージなどに保管しておけばいいので、紙の書類を受け取るよりも便利と思う人は多いでしょう。

オーナーにとってのメリットは?

オーナーにとってはどんなメリットがあるでしょうか。実は、今回の社会実験は、不動産事業者と入居者間のやり取りに関するものなので、オーナーにとって直接的な関係はありません。

ただ、今回のような取り組みにより不動産業界全体の業務効率化が進むことは、不動産事業者と取引関係にあるオーナーにとっても歓迎すべき動きといえるでしょう。

検証実験終了後の見通し

今回の社会実験の終了後、国土交通省や不動産業界は結果を検証し、今後の方向性について検討を行うことを予定しています。その後、改正法案づくりが進められ、2021年以降の開始を目指す模様です。またその先には、契約書の電子化も視野に入れられています。将来的には、内見から申し込み、重要事項説明、契約まで完全にオンラインでできるようになるかもしれません。

ただし、賃貸住宅はオンラインサービスではなく、現実にあるものを利用するサービスです。入居希望者にとっても、実際に部屋を見てみなければわからないことも多いはず。また高齢者などデジタルに慣れていない人にとっては、対面での手続きの方が安心感があるでしょう。そのあたりの課題をクリアしつつ、どこまで電子取引ができるようになるのか、今後の変化に注目したいところです。(提供:Dear Reicious Online

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