日本の年金制度は非常に複雑で分かりにくくなっている。しかし分からないままにしておくと不利益を被るのは国民自身だ。強制加入の公的制度だけあって、無料の相談窓口だけは充実している。相談窓口の種類を目的と特徴ごとにまとめた。

年金の相談はまずは日本年金機構へ

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(画像=Pressmaster/Shutterstock.com)

年金について相談したいなら、まず思い浮かべるべきは公的年金の運営を担う日本年金機構である。日本年金機構の業務は各種記録の管理、届出処理、保険料徴収、年金の給付、ねんきん定期便の送付などさまざまだが、相談業務も重要な業務のひとつである。窓口機関は本部ではなく全国各地の年金事務所に配置されている。

相談窓口は年金事務所へ

年金事務所は日本年金機構の業務のうち地域に密着した対人業務をおこなう機関で、全国に312ヵ所ある。年金に関する質問や相談、結婚・転職・退職などによる各種変更手続き、年金手帳・年金証書などの再発行など、ありとあらゆる窓口業務に対応する。自分で調べても答えが出ず、電話では説明しにくい場合は、やはり対面で相談したほうが話は早い。

年金事務所の受付時間と予約方法

受付時間は月曜から金曜までの平日の8時半から17時15分まで。また週初めの開所日であれば19時まで相談時間を延長している。どうしても週末にしか時間が取れない場合は、第2土曜日に限り9時半から16時までの週末相談がある。

受給者の増加や年金不安から、相談窓口は混雑することが多い。日本年金機構のホームページに混雑状況が表示されているので参考にすると良いだろう。基本的に週明けの月曜日は混雑しやすい。時間帯としては9時から10時と、お昼前後が混みやすいようだ。

年金相談は予約受付専用電話での予約制になっている。2018年時点では約6割の相談者が予約のうえ訪問しているため、飛び込みで行くと待たされる可能性が高い。予約は希望日の1ヵ月前から可能だ。

社労士連合会が運営する「街角の年金相談センター」

「街角の年金相談センター」の存在は聞いたことがあるだろうか。日本年金機構が全国社会保険労務士会連合会に運営を委託している、年金の窓口業務を請け負う機関だ。年金事務所と同様に年金相談や各種手続きができ、利用も無料である。全国に80ヵ所存在する。

街角の年金相談センターのメリット

街角の年金相談センターのメリットは年金事務所よりも混雑していないことだ。駅の近くやショッピングセンター内、市役所の近くなどに所在していることもあり利便性も高い。ただし首都圏や大阪・兵庫などの都市部をのぞけば都道府県に1つあるのがせいぜいなので、地方在住者には不便かもしれない。その代わり、一部のセンターでは出張相談が可能である。

街角の年金相談センターの受付時間と予約方法

予約は年金事務所と同じ予約受付専用電話の回線からできる。受付時間も年金事務所とほぼ同じで平日の8時半から17時15分まで、月曜の時間延長や第2土曜日の相談もセンターによっては対応している。

電話での年金相談窓口は3つ

日本年金機構は電話による相談も受け付けている。電話相談には目的に応じて「ねんきんダイヤル」、「予約受付専用ダイヤル」、「ねんきん定期便・ねんきんネット専用番号」の3種類が設けられている。以下は電話番号と相談例だ。0570で始まる電話番号はナビダイヤルで、全国どこからかけても一律市内料金で通話できるが、無料ではないので注意しよう。

「ねんきんダイヤル」

・年金はいつから受け取れるのか
・請求の手続きはどうすればよいか
・年金を受給している人が亡くなった、など

年金に関する一般的な相談はこちらで受け付けている。ねんきんダイヤルは一時期繋がりにくいことが問題になったことがある。多少は解消したかもしれないが、今でもかかりにくい時間帯があるようだ。特に月曜日や休日明け、ねんきん定期便発送直後は混雑しやすい。ねんきんダイヤルに関しては当月と来月の混雑状況が日本年金機構のホームページで公開されているので、参考にすると良い。番号(0570-05-1165)

予約受付専用電話」

・年金事務所での窓口相談を予約したい
・街角の年金相談センターでの窓口相談を予約したい
・予約の確認や変更、など

日本年金機構は2016年から年金の相談窓口に予約受付専用電話を開設している。年金事務所や街角の年金相談センターへの来訪予約をしたい場合は、こちらの番号にかけると良い。窓口に行って待たされた挙句、相談できなかったという事態を避けるため、予約は必ずしておきたい。番号(0570-05-4890)

ねんきん定期便・ねんきんネット専用番号

・ねんきん定期便が届かない
・ねんきん定期便の記載内容に不明点がある
・ねんきんネットの使い方や操作方法、など

郵送されたねんきん定期便やインターネットでの年金個人情報閲覧サービスに関する問い合わせを受け付けている。電話以外にも「よくある質問(Q&A)」をチェックしておくと良い。番号(0570-058-555)

年金の相談と並行してねんきんネットを活用する

感心なのが、日本年金機構が提供する「ねんきんネット」である。これがなかなかよくできている。パソコンやスマートフォンから個人の年金記録を閲覧できるサービスで、将来の年金の見込み額を知りたい場合や、保険料の支払い漏れが心配な場合などにオンラインで確認できる。主な機能は以下だ。

・自身の年金記録の確認
・将来の年金見込額の確認
・電子版「ねんきん定期便」の閲覧
・日本年金機構から郵送された各種通知書の確認

たとえば、過去にさかのぼっての納付状況、国民年金・厚生年金の加入記録が、郵送されるねんきん定期便より詳しく見ることができる。納付漏れがあれば一目瞭然だ。年金基金に加入していたかどうかも確認できる。

受け取る年金の見込み額が分かるのもうれしい。初期状態では現在の職業を60歳まで継続する仮定した見込額が表示される。たとえば3年後に転職して加入する年金が変わった場合はどうなるかなど、さまざまなケースに応じた試算も可能だ。受給中の人は支給漏れがないか確認することもできる。

最初にアクセスキーの登録が必要など面倒な点もあるが、インターネットの閲覧に慣れている人なら容易に使いこなせるだろう。わざわざ予約して窓口まで足を運ばなくても場所を選ばず24時間使えて、電話では伝わりにくいようなまとまった情報も得やすい。

その他の年金相談窓口

一般的な年金の相談については、年金事務所、街角の年金相談センター、ねんきんダイヤル、ねんきんネットでカバーできるだろう。それ以外に職業や目的により便利だと思われる相談先を以下にまとめる。

企業年金については「連合会年金相談サービス」

企業が社員に支給する年金である企業年金については、企業年金連合会の年金相談サービスが使える。厚生年金基金、確定給付企業年金、確定拠出年金等の企業年金を短期間で脱退した人の年金を一元的に管理してくれる団体である。転職や独立などを経験して自分の年金がどうなっているのか分からない人こそ利用したい。窓口相談はなく、インターネットで申し込んでメールまたは文書で回答がもらえる。

公務員の年金相談

国家公務員は企業年金ではなく共済年金に加入している。年金について質問がある場合は、「国家公務員共済組合連合会」に問い合わせると良い。問い合わせ先は千代田区の九段合同庁舎の2階に常設されている年金相談窓口か、電話窓口(0570-080-556)がある。また全国各地で年に1回ほど「年金相談会」が開催されている。

地方公務員は「地方職員共済組合」の本部または支部で年金相談を受け付けている。問い合わせの内容ごとに問い合わせる課が異なる。詳しくはホームページを確認するか「年金相談室(03-3261-9850)」で問い合わせ先を確認すると良いだろう。

国民年金の手続き関係は市区町村役場

自営業や個人事業主が加入する国民年金においては、一般的な相談や個別の相談は年金事務所が窓口となるが、届け出や請求などの事務手続きや免除に関する相談は管轄の市区町村役場でおこなっている。

年金の相談はまずは公的な無料相談を活用

個人的に社会保険労務士やファイナンシャル・プランナーに有料で相談する方法もあるが、公的年金の無料相談先は記事で紹介したように十分存在する。まずは年金事務所や相談センター、ねんきんダイヤル、ねんきんネット、職場や職業ごとの年金相談窓口にあたってみて、必要であれば民間のプロに意見を仰ぐのもひとつの手だろう。

文・篠田わかな(フリーライター、ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES

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