健康保険証は日本在住のほぼ全員が保有している。しかし転職や退職に伴う保険証の切り替えや、紛失による再発行などで、保険証が手元にない期間が生じることもある。保険証の発行にはどのくらいかかるのか。万が一のときにどう対応すればよいのだろうか。

保険証の発行や再発行にかかる日数は加入する保険や状況によって違う

保険証,発行
(画像=Dragon Images/Shutterstock.com)

保険証の発行にかかる日数は、加入する保険の制度や発行する状況によって異なる。

国民健康保険の保険証の発行は当日〜1週間程度

国民健康保険の保険証は市区町村役場の窓口であれば当日中に発行してもらえる。自治体によっては郵送での発行となり、数日から1週間程度かかるケースもある。

退職に伴い新たに国民健康保険に加入する場合は、加入手続きの際に「健康保険資格喪失証明書」の提出が必要である。健康保険資格喪失証明書は、勤務先あるいはこれまで加入していた健康保険組合、年金事務所などが発行するもので、退職時に受け取るのが一般的だ。

証明書の発行が遅れていたり、受け取った証明書を紛失したりすると証明書が手元に届くまで国民健康保険に加入できず、その間は保険証も発行されない。

社会保険の保険証の発行は2週間〜1ヵ月程度

社会保険(協会けんぽ・組合管掌健康保険など)の各種手続きは勤務先が窓口となるが、運営や加入などの審査は外部の健康保険組合などが行っている。勤務先を介しての手続きのため、運営者である市区町村が直接窓口となる国民健康保険のように即日発行というわけにはいかない。保険証の発行には、通常2週間〜1ヵ月程度はみておきたい。

・協会けんぽの保険証の発行手順
協会けんぽの場合、運営や加入の審査などは全国健康保険協会および日本年金機構が行っている。保険証の発行は、次のような流れで行なわれる。

(1)勤務先での手続き
(2)勤務先から年金事務所へ届け出
(3)日本年金機構での審査
(4)保険証発行・郵送(審査完了から通常2営業日)
(5)保険証が勤務先に到着
(6)勤務先から従業員へ交付

4月など入社手続きの多い時期には審査に時間がかかるため、保険証の発行までに1ヵ月以上かかることもある。

・組合管掌健康保険の場合
運営や加入の審査などは各企業や同業者などが共同で設立した健康保険組合が行っており、各種手続きは勤務先の担当課などが窓口となる。保険証の発行にかかる日数は基本的に協会けんぽと同じくらいだが、各健康保険組合や社内の手続きなどによって異なる。

社会保険の任意継続保険証の発行は1〜3週間程度

会社を退職した後も、一定の条件を満たしていれば任意継続被保険者として、それまで加入していた社会保険(健康保険)に引き続き加入できる。

協会けんぽの場合、日本年金機構が前職の勤務先から提出される資格喪失届を受理し処理する。これが完了するまで、任意継続の保険証を作成できない。そのため「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出してから保険証の発行まで通常で2〜3週間程度かかることもある。

ただし2019年10月以降、退職日の確認できる証明書を提出すれば資格喪失届の処理完了前に保険証の発行が可能となり、発行にかかる日数は申出書の提出から1週間程度に短縮された。

保険証の紛失などにより再発行する場合は新規発行時とほぼ同日数

紛失などにより保険証を再発行する際には、通常加入している健康保険の保険証を新たに発行するのと同じくらいの日数がかかる。

国民健康保険であれば窓口交付で最短当日、郵送交付で数日程度。協会けんぽであれば「健康保険被保険者証再交付申請書」が協会けんぽに到着後、通常1週間程度で手元に届く。

保険証が発行される前に医療機関を受診する時の対応方法

保険証を提示せず医療機関を受診する場合、医療費は原則全額負担となる。しかし健康保険への加入手続きさえ済んでいれば、後日通常の自己負担分を超える医療費の払い戻しや還付を受けられる。それぞれの方法を見ていきたい。

保険証が発行前の対応法1……保険証の発行後に医療機関から払い戻しを受ける

診療を受けた同月内に保険証が届けば、ほとんどの場合は医療機関の窓口で通常の自己負担分との差額の払い戻しを受けられる。

窓口で払い戻しを受けたいのなら、医療機関の窓口で医療機関発行の「領収書」および「診療報酬明細書(レセプト)」の原本と保険証を提示すればよい。書類などの記入も基本的に必要なく、すぐに払い戻しを受けられる。月をまたぐと窓口での払い戻しはできなくなるため、早めの手続きが必要だ。

保険証が発行前の対応法2……療養費の支給申請により保険者から還付を受ける

医療機関の窓口で払い戻しが受けられない場合、保険者(国民健康保険であれば市区町村、社会保険であれば協会けんぽや健康保険組合など)に申請する。保険者が保険証を提示して受診することが困難であったと認めた場合、通常の自己負担分との差額を還付してもらえる。

保険証が発行前の対応法3……健康保険被保険者資格証明書で保険診療を受ける

健康保険被保険者資格証明書は、保険証が手元に届くまでの期間に被保険者が健康保険に加入していることを証明するものである。証明書は被保険者から申し出ることで発行してもらえる。

医療機関の窓口で証明書を提示すれば、通常通りに保険診療を受けられて、払い戻しや還付手続きの必要もない。自費診療となって自己負担額が高額になる心配も無用だ。保険証の発行に時間がかかると想定される場合や医療機関を受診する予定がある場合には、資格証明書の発行を申し出ておこう。

健康保険被保険者資格証明書は、けんぽ協会の場合だと早期交付を求めれば最短で即日交付される。早期交付を求めなかった場合は2週間~1ヵ月程度かかる。

保険証の発行や再発行待ちの場合の3つの注意点

保険証の発行や再発行をするときに、手元に保険証がない期間のある場合は以下を注意したい。

注意点1……保険証がないまま診療を受けると自己負担額が高額になることもある

保険証を提示せず診療を受けた場合には自費診療(自由診療)扱いとなり、医療機関は自由に診療費を設定・請求できる。一方で保険者から還付される療養費は保険診療を基準に計算されるため、実際の負担額が還付額を上回り、自己負担額が高額になってしまうこともある。

注意点2……国民健康保険の保険給付を受けられるのは届け出日以降の診療分から

勤務先を退職して社会保険の加入資格を失い任意継続もしない場合には、退職日の翌日から14日以内に自分で国民健康保険に届け出をしなければならない。届け出が済むまでの間は保険給付を受けられず、保険証も発行されない。

国民健康保険へ加入の届け出をしないまま医療機関を受診すると、全額が自己負担となる。さらに後日届け出を行っても遡って医療費の還付を受けることはでない。一方で保険料(保険税)は、加入資格が生じた日(社会保険の加入資格喪失日=退職日の翌日)まで遡って支払わなければならない。

国民健康保険を届け出ないことはデメリットしかないため、なるべく早く届け出を行うようにしてほしい。

注意点3……領収書と診療報酬明細書は捨てないで手元に置いておく

保険証がなくても健康保険の加入手続きさえ済んでいれば、立て替え払いが生じることはあるが、保険は使えるため過度に心配する必要はない。ただし後日払い戻しや還付を受けるためには領収書と診療報酬明細書の原本が必要である。コピーや再発行では受け付けてもらえないので、捨ててしまわないようしっかり保管しておこう。

文・竹国弘城(ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES

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