生命保険には大きく分けて掛け捨て保険と貯蓄型保険がありますが、掛け捨て保険は損だと思っている方もいるのではないでしょうか。掛け捨て保険と貯蓄型保険はそれぞれに長所・短所があります。今回は「保障」を第一にした保険の選び方と、低金利時代では貯蓄型保険のメリットが生かしにくいことなどを紹介します。
掛け捨ての生命保険は一定期間の保障が手厚い
生命保険には掛け捨て保険と貯蓄型保険がある
掛け捨て保険とは、保険期間が一定期間の定期タイプのもので、支払った保険料が返ってこない保険商品です。対して貯蓄型保険は、保障機能と貯蓄機能が合わさった保険商品で、保険期間は生涯保障される「終身タイプ」のものや一定期間のものがあります。
掛け捨ての生命保険の特徴
代表的な掛け捨ての保険として、「保険期間20年の定期保険」などがありますが、このタイプの保険では20年経って何事もなく保険期間を満了すると保障がなくなり、保険料も戻ってきません。死亡保障だけでなく、医療保険の定期タイプのものも一般的には掛け捨てになります。
掛け捨て保険の考え方はシンプルで、みんなでお金を出し合い、何事もなく無事に過ごせた人はそれでよしとし、万が一のことがあった人はみんなで出し合ったお金を使えるというものです。
大きな特徴は、貯蓄では準備できない大きな保障に備えられることです。その代表的なものが、生命保険の死亡保障です。20代、30代の時に家族のために2,000万円〜5,000万円の貯蓄をできる方は多くないでしょうし、それだけの保障を貯蓄型保険の終身保険で準備しようとすると保険料もとても高くなります。万が一の時に大きな保障を受けることができる掛け捨ての保険は、ある意味保険の本来の姿であり、とても合理的な商品と言えるでしょう。
貯蓄型の生命保険はライフイベントの資金になる
貯蓄型の保険の特徴
貯蓄型の保険は万が一の時には保険金が支払われ、そうでない時もお金が返ってくるタイプの保険商品です。例えば、死亡保険の「終身保険」では必ず保険金の支払いがあるので、保険会社は保険料の一部を万が一の保障部分に、一部を貯蓄部分用に積み立てて運用します。終身保険の場合は「60歳まで」など保険料払込期間があり、一般的にその期間を過ぎるとそれまでに払ってきた保険料の合計額より積立金は増えていく仕組みになっています。
目的が決まっている貯蓄型の保険
死亡保険の終身保険は、何事もなかった場合に解約返戻金を老後資金や介護費用に回せますが、貯蓄型の保険には他にも「学資保険」や「個人年金保険」があります。これらは人生の中でも重要なライフイベントに備えることができ、目的がはっきりと決まっていれば保険に加入するだけで必要な資金が貯まるというメリットがあります。
ただし、貯蓄型保険の中途解約には注意が必要です。保険料払込期間中に解約をすると、返ってくる解約返戻金は払い込んだ保険料の合計額よりも少なくなる場合があります。つまり、保険の本来の目的以外で急にお金が必要になった時は、いつでも現金に換えられる預貯金などのいわゆる流動性の高い商品に比べ、不利になります。
低金利時代の保険は「保障」をメインに
保険の本来の目的は万が一の時の「保障」
保険を考える時は、保険でしか備えることができない「保障」を第一に考えましょう。もちろん人生には万が一の時の「保障」とライフイベントのための「貯蓄」どちらも必要ですが、保障が保険の本来の役割であるのに対し、貯蓄は預貯金や株・投資信託など他の商品でも替えが効くものです。
低金利の今、貯蓄型保険は貯金よりお得なのか?
例えば、個人年金保険などの貯蓄型保険は予定利率が銀行預金の金利より高いのでお得と紹介されることも多いのですが、注意しておきたいのは、こういった保険の予定利率は基本的に一度利率が決まるとその利率で運用されることです(固定金利)。対して、銀行の預金は世の中の金利が上がればそれに伴い上がっていく可能性もあります(変動金利)。
「お宝保険」と呼ばれる保険をご存知でしょうか。一般的に1990年代半ばごろまでに契約された保険は利率が高く、中には予定利率が6%近くのものもありました。昔この保険を買った人は、超低金利の今でもこうした高い利率で保険が運用されています。逆にいえば、もし将来金利が上昇した時も、今の低利率の保険は低金利のまま運用されてしまうのです。
「貯蓄」は保険以外の選択肢も考えよう
金利が高い時代であれば、固定金利の保険商品もメリットはありますが、金利がほぼ0に近い現在では「保障」と「貯蓄」の「貯蓄」部分は切り離して考えた方がいいでしょう。
もちろん必ず貯蓄型の保険を0にする必要はありません。解約返戻金が少なくなるというデメリットは、安易な理由で途中解約しないというメリットにもなり得ます。大切なのは保険商品こだわらず、現金化しやすいものなどさまざまなものと貯蓄を組み合わせて備えることです。
万が一の備えは掛け捨ての生命保険で、ライフイベントは他の貯蓄で備えよう
生命保険には掛け捨ての保険と貯蓄型の保険があり、それぞれ長所と短所がありますが、貯蓄が他の金融商品でも代替できるのに対し、万が一の時の保障に備えるのはやはり保険が一番です。まずは必要な保障を第一に考え、そのあとは保険にこだわらず、さまざまな方法でライフイベントに備えることが大切です。
文・松岡紀史(ファイナンシャル・プランナー、ライツワードFP事務所)/fuelle
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