(本記事は、矢田 祐二氏の著書『年商10億円ビジネスを実現する、最速成長サイクルのつくり方』セルバ出版の中から一部を抜粋・編集しています)
組織を動かすために最も重要なものとは
組織を組織として機能させるためには、会社としての『考え方』をしっかり共有する必要があります。それにより、各部門は、活動の方向性を得ることができ、自分たちの役割を正しく理解することができます。また、根本となる共通の『考え方』があるからこそ、役割が異なる各部門が、一致団結することができます。
『考え方』を共有するためには、努力が必要になります。『考え方』というだけあって、それは目では見ることはできません。そのままでは、他の人と共有することはできないのです。
『考え方』ゆえに、文字で表現することになります。文字にすることで、初めて『考え方』すなわち『意思』を正しく伝えることができます。そして、それを大人数と共有することができます。
文字という形で見せたうえで、対面で説明をします。文字だけでは、そこに込める意図や強弱までは伝えられません。双方向のコミュニケーションにより、認識合わせをします。文字と対面により、初めて『考え方』の共有に至るのです。
考え方とは、過去の経験から積みあがった信念であり、価値観と言えます。また、未来に向けた方向性であり、狙いであると言えます。その過去と未来が交錯した瞬間が『今』となります。
『考え方』こそが、会社なのです。目に見えないところに、会社の実態は存在しています。社屋、設備、机、そこで動く社員、それらの目で見える部分は、会社の極一部でしかありません。
社屋や設備や机などすべては、何かしらの意味がありそこに存在しています。そこで動く社員たちは何かしらの方向性を持って動いています。
会社概要や登記簿をみれば、資本金や役員名、沿革などを知ることはできます。しかし、その情報からは、創業時の苦労や社屋建設に至る決断など、当時の事情を読み解くことはできません。そこには、多くの人の生きた軌跡や想いがあります。そして、この瞬間も『考え方』に従い、1年後、3年後に向けてすべてをつくり変えていっているのです。
会社の事業定義や戦略や方針の変更に伴い、仕組みが変わり、サービスが変わっていきます。その変化のために組織があります。その実現のために社員に協力を依頼しているのです。社員は、その会社の『考え方』に納得し、共感しているからこそ力を発揮してくれます。
登記上は会社でも、会社じゃない会社が多すぎる!
会社の『考え方』のできが悪いときには、やはり好ましくない状況になります。事業定義が見当違いであれば、売上は減ることになります。戦略で遅れれば、他社に先を越されることになります。方針を間違えたときには「売れば売るほど損をする」や「在庫が山積もり」という状況になります。
また、方針を共有できていないときに、多くの問題を抱えることになります。部門間の連携が上手くいきません。管理者が間違った判断で指示を出しています。社員は、創造性を働かせたり、自主性を発揮したりすることができません。また、その業務を何のためにやっているかがわからないために、やる気も起きません。
会社とは、『考え方』でできています。「自社はどのような特色あるサービスを提供していくのか」、「どのようにシェアをとっていくのか」、「何を重点商品とするのか」、「在庫は、何を、どれぐらい持つのか」。ここにこそ会社はあり、ここにこそ会社のノウハウや特色があるのです。この実現のための会社なのです。
しかし、残念ながら、世の中の多くの会社は、登記上は会社でも、実際には会社ではありません。『考え方』の共有ができていないために、会社でもなければ、組織としての機能を発揮することもできていないのです。ただ、その場その時を共有しているだけになっています。
いままで社長が考えたことが、現実化した結果が『今』の状態といえます。いま存在する事業も、それを支える仕組みも、職場の約束事も、いままでの社長の考え方が具現化したものです。または、流れに任せた結果なのです。そして、この先の『未来』の事業も仕組みも、社長の考え方が現実化することになります。
この先の、自社の事業定義―戦略―方針を考え、決定することが社長の役目になります。「新たな事業の特色をどこに築いていくのか」、「人口が減少する商圏の中で、誰を重点顧客とするのか」、「材料の高騰に対し価格政策はどうあるべきか」、「老朽化する設備の入替えはいつ頃するのか」。すべてを社長が、決めなければなりません。
管理者や社員に意見を求めることはできます。しかし、最終的には、1人によって意思決定がされます。『考え方』ゆえに、その人の生きざまや信念、価値観が強く反映します。大きな会社も小さな会社も、それは変わりません。ただ1人の『考え方』が、会社の『考え方』になります。
そして、その『考え方』を組織全体に行き渡らせます。管理者や社員に、その実現の協力を依頼します。採用の際にも、『考え方』を説明し、賛同する人だけに来てもらいます。銀行に対してもその『考え方』を担保に、借入を起こします。
よい未来を実現するために、全員が同じ『考え方』を持って、行動することになります。資源の限られた小さい会社だからこそ、一致団結する必要があります。熟考し選ばれた的に向かい、同じ価値観を判断軸にして、スピードを持って動くのです。
しかし、残念ながら、多くの社長は、自分の『考え方』を示していません。また、上手に伝えられていません。そのため、組織を動かすどころか、つくることでさえもできていません。社員はその能力を十分に発揮できずにいます。その結果、事業の成長も展開も遅くなっています。
考え方を明確にすることは、恐いことでもあります。社長が出した『考え方』で、すべてが決まってきます。事業が儲かるのか、会社が繁栄するのかが決まります。
そして、社員の生活のレベルも決まります。その責任の大きさに臆して、何も示さなければ、やはり平凡な会社で終わることになります。「運動体」としても、「共同体」としても、弱く、そして、小さい存在のままとなります。
社長は、事業を構成する事業定義―戦略―方針を決定し、文字にする役目があります。そして、それを使って彼らにその実現の協力を依頼するのです。それにより組織をつくることができます。社員のやる気と行動を生むことになります。この先の事業も会社も、素晴らしいものに変えることができます。
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