(本記事は、矢田 祐二氏の著書『年商10億円ビジネスを実現する、最速成長サイクルのつくり方』セルバ出版の中から一部を抜粋・編集しています)
5年後に年商10億円を超えるための準備
年商10億円ビジネスのための3つの条件
年商数億円の会社が、年商10億円を目指すのであれば、その多くをつくり変える必要があります。年商数億円は、年商数億円の条件を満たしているからこそ、その規模で「安定」をしているのです。年商10億円に進むためには、次の3つの変革が、必要となります。
変革1 年商10億円を売る事業モデル
年商数億円の事業モデルは、職人型の企画提案や技術力、柔軟な対応を売りにしています。 そのため、社長と優秀な社員しかできないという状態になります。そして、その質の高いサービスに対し単価が低いため、忙しいわりには儲かっていないという状況に陥ります。
「大きくなる可能性のある市場を選ぶ」、「クリエイティヴを下げる」、「手間に見合った単価にアップ」などの条件を満たす年商10億円以上に育つ事業モデルへの変革が必要です。
変革2 年商10億円をさばく分業
仕組みと呼ばれるものは少なく、属人的な業務の仕方をしています。仕事に人がつくのではなく、人に仕事がついている状態です。そのため、人が辞めると、混乱することになります。それがそのまま会社のノウハウや顧客情報の喪失に繋がります。仕組みがないために、採用した社員の戦力化に時間がかかります。そして、育った頃に退職の繰り返しです。仕組みに向かわず「社員教育」に向かうと、いよいよ抜け出せなくなります。
分業を進めると同時に、部門間のバトンリレーの設計と業務の標準化に取り組みます。
変革3 年商10億円、20億円に育つ成長組織
今までは社長以下、横並びの文鎮型組織でした。管理者を任命しても、名ばかりの管理者で機能せず、実質は他のスタッフと同じように作業に埋没しています。問題が起こっても、相変わらず考えるのは、社長と一部の優秀な社員だけという状態です。
組織としての機能、すなわち、分業と統制を機能させる必要があります。各部門では、管理者を中心として目標達成のために邁進しています。方針の実現や問題の再発防止のために仕組化に取り組んでいます。成長サイクルにより、改善が積みあがっていきます。
組織をつくることで、年商20億円、30億円とその後も成長を続けることができます。本書では、この組織と成長サイクルのつくり方について解説しています。
年商10億円ビジネスのこの3つの条件が揃ったときには、驚くほど早く、事業を拡大することができます。年商10億円の事業モデルの獲得だけでも、売上は急激に増えることになります。しかし、その拡大に内部でさばく仕組みが伴っていないと、不良やクレームを大量に発生させることになります。そして、組織ができていないと、各部門がタイムリーに仕組みをつくり変えることができません。また、先を見越した取り組みがされないために、すべてが後手になります。
その結果、年商は元の規模に戻ることになります。または、その身の丈に合っていない売上を維持するために、社長と一部の優秀な社員が、毎日作業漬けの日々を送ることになります。その状態を何年も続けている会社は少なくありません。当然、仕組みや組織をしっかり整備しても、事業モデルが悪ければ、期待したほどの拡大はできません。沢山の売上は、多くの人の願望を満たした結果であり、それなしには企業の発展はありえないのです。
事業モデル、こなす仕組み、成長組織、このすべてを繋げてつくっていく必要があります。1つの事業モデルを回すためには、その事業のための機能的な仕組みが必要になります。そして、その仕組みをどんどん成長させる組織が必要になるのです。
これらがつくれないために多くの会社が年商数億円、社員十数名という規模で停滞をしています。この事業モデルと仕組みのつくり方については、前著「社長が3か月不在でも、仕組みで稼ぐ、年商10億円ビジネスのつくり方」で詳しく説明をしております。
スピードをもって仕組みをつくり変えるために、組織がある
仕組みとは「その瞬間に最適化されたもの」と言えます。それに対し、組織とは「その仕組みをある方向に変化させるもの」と定義できます。
今の年商数億円の規模を維持するだけなら、実は組織の必要性は高くはありません。お客様の要望や仕入状況の変化などのイレギュラーには、社長1人で十分対応が可能です。その時々に自分の目で状況を確認し、指示を出せば事足ります。拡大を目指した取り組みが少ないために、問題の発生も少なくなります。社員への負担が小さい分、人の入れ替わりも抑えられるために、仕組みの整備の必要性も低くなります。
しかし、年商10億円を目指すのであれば、全くそれでは間に合わなくなります。増える量に合わせ、また、変化するお客様の要望や環境に合わせ、仕組みをつくり変えていく必要があります。
事業とは、人と異なることをするから儲かるのです。時代がどう変化するのか、それを読み、先回りすることが必要になります。また、競合他社に打ち勝つためには、それ以上のスピードが必要になるのです。
そのスピードの程度は、社長がどれぐらいを望むのかに寄ります。現在年商が3億円であり、5年後に10億円行きたいのであれば、それだけのスピードが必要になります。これは、毎年35%の伸びを意味します。
3億円が、翌期に4億円です。その翌期が5.4億円。そして、7.3億円、9.9億円になる計算です。そのときには、顧客数、案件数、物量、データの量、取引先、すべてが急激に増えます。そのたびに、仕組み、そして、分業を再度組み立て直すことが必要になります。
人数で見るともっとわかります。年商3億円で粗利率50%の事業を15名でやっているとします。翌期には20名、27名、37名、50名となります。実際には生産性が上がるため比例して人数が増えていくことはありませんが、拡大に先駆けて人数を増やすとこれぐらいの数字にはなっていきます。
よく「5年後に年商10億円」のような目標を掲げる社長がいます。これだけの年商の伸びを数字でみると、そのすごさがわかります。
年商3億円のときの仕組みは、年商5億円ですべて使い物にならなくなります。集客のサイクルの回数を増やしていきます。新たな集客方法も開発します。データを処理するためのシステムの入替えが必要になります。取引先や代行業者の活用も進めます。現場のスタッフ数も拠点も増えていきます。それに合わせ部門を増やします。
そして、できあがりつつある年商5億円のための仕組みは、年商7億円を手前に問題を起こし始めます。再度、仕組みをつくり直す必要があるのです。それも、スピードを持ってとなります。
多くの会社が、いま現在の年商3億円を仕組みで回せていません。それなのに、昨年対比10%、20%の伸びを目標にして、売上を増やそうとしています。
また、多くの会社が、いま現在の年商5億円で、「考えているのは社長と一部の優秀な社員」だけという状態です。それなのに、年商7億円に増やそうとしています。この先に待つのは、混乱しかありません。
各部門がそれぞれの仕組みを受け持ち、課題の発見と改善を繰り返している状態をつくらなければなりません。本格的に拡大期に入る前に、つくる必要があります。
それがあるからこそ、増える量や新たな施策のための仕組みを、1つひとつつくっていけるのです。この成長を支えるのが、組織となります。組織をつくらなければ、スピードを持った成長は無理となります。また、組織をつくらなければ、すべてを社長が考え続けるということになります。組織という「仕組みを成長させるための機能」の獲得が必要です。
すべての社員をまとめ、動かすための要所
組織づくりの第一歩は、その組織の『目的』を明確にすることにあります。組織の『目的』を明確にすることで、組織づくりのスタートを切ることができます。
組織という言葉の意味を確認すると次のようにあります。「ある目的を目指し、何人かの人で形づくられる、秩序のある全体」。組織と似た言葉に集団があります。集団の意味は、「多くの人が集まった、まとまり」となります。
組織と集団の違いとは、そこに『目的』があるかどうかです。言い換えれば、集団に目的を与えると、組織になるということです。
例えると、次のようになります。近所のお父さんたちを公民館に集めました。まだ特別な目的はありません。目的がないので、話すこともなく、雑談で暇を潰すしかありません。そして、酒を飲み始めます。これが、集団です。そこに、目的を与えます。
「地域の子供のために祭りを開催してください」。この目的があることで、議論が始まります。どんな祭りにするのか、場所や日程、予算なども意見が出ます。そして、誰かが役割分担の表をつくりだします。イベント班、屋台班、運営班のメンバー割りと、そのリーダーが決まっていきます。
そして、スケジュールも作成されます。
目的を与えることで、集まった人たちの脳は動き出し、想像力を働かせます。そして、その共通の目的のために討論を行います。共通の目的があるので、お互いを尊重し合いながら、落としどころを探すことができます。役割分担すなわち分業、そして、合わせて統制も機能し始めます。
1つの目的に向かう、チームとしての団結力が生まれます。そして、自分たちのやっていることにも、意義を感じます。和やかな祭り会場と子供たちの笑顔が想像できています。
目的が、人の集まりを、組織に変えます。目的が、組織に、多くの力を与えるのです。どのような組織にも、この原則が当てはまります。
民間企業でも、公の機関でも、同好会であろうとも、明確な目的が必要になります。目的が曖昧な集まりは、いずれ消滅することになります。
組織にとっての目的には、必ず「奉仕する対象」が含まれることになります。組織は、奉仕する対象があるからこそ、その存在を許されるのです。
「我々は、〇〇で困っている人たちに、〇〇を提供し、〇〇という社会を実現する」「我々は、〇〇病の解明を行い、医薬品開発のための基礎研究を行う」「我々は、〇〇のシステムを普及することで、〇〇の多くの無駄を削減する」
就職に関する記事に、頻繁に「社会貢献型企業」の言葉が出てきます。世の中に存在している組織は、民間にしろ、官公庁にしろ、必ず世の中の役に立っています。民間企業では、その役立った度合いを売上で、その効率を利益で測ることができます。目的が達成されたとき、または、貢献できなくなったときに、その組織は解散することになります。
1つの目的を達成するために、すべてが最適化されることになります。サービスを提供するための仕組みはもちろんのこと、組織体系や構成員も、その目的に最適化されることになります。
社長は、自社をどのような目的、どのような方向に最適化させるのかを決めなければなりません。その目的を示したときに、組織は動き出し、最適化が始まります。
1つの目的を、構成するメンバー全員が共通に持っていることで、その組織の力は発揮されることになります。
「当社は組織ではありません。ただの集団です」
この説明を聞いて、M社長は言われました。「いまの当社は、組織ではありません。ただの、集団です」。食品メーカーという定義はあるものの、共通した1つのイメージを、社員全員が持っているとは思えません。どのような食品メーカーを目指すのか、何を特色としていくのかが、示されていないのです。
いまの状況は、まさに「集団」だからこそ起きる現象ばかりです。会社全体がお客様のために団結しているとは感じられません。各部門がバラバラであり、統制が取れていない状態です。
M社長は、1枚の書類を出しました。「矢田先生、これは当社の経営理念になります。意味されるものは、これとは違いますね」。一見し私は、「はい、これとは、違う意図になります」とお答えしました。
M社長は、さっそく自社の事業の目的づくりに取り掛かりました。案をまとめては、矢田にメールを送ります。3回ほどやり取りをしたところで、私は、一様のOKを出させていただきました。しかし、M社長、どうもしっくりしていません。
「この目的では、漠然としています。これでは、読んだ社員は、イメージできないはずです」。
実際に、その書かれたものは、漠然としており、組織を引っ張るだけの十分な力の発揮は期待できません。それでも、これ以上のつくり込みは一旦止め、事業の構築のほうに注力することを提言しました。
そのとき、М社長は、年商10億円になる事業モデルの開発を進めていました。その事業モデルの構築に注力するようにお願いしたのです。その理由は、自社の事業の特色こそが、組織の目的になるからです。
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