百貨店,高額品
(画像=Thinkstock/GettyImages)

1月27日、山形の老舗「大沼」が自己破産を申請した。大沼の創業は元禄13年(1700年)、名実ともに老舗中の老舗である。しかし、近年は経営不振が常態化、2017年には創業家からPEファンド「マイルストーン ターンアラウンド マネジメント」に経営権が譲渡される。しかし、ファンド側の不透明な資金運用が発覚するなど経営は混乱、再建計画の遅れに業を煮やした従業員と地元財界が株式を買い戻し、EBOによる再建を目指していた。

記者会見で長沢光洋代表取締役は「昨年10月の消費増税以降、売上が前年比3割以上減少、資金繰りが急速に悪化し、1月末の支払債務4億円の目途が立たなかった」と突然の破産理由を説明した。要するに百貨店業態の競争力の低下、地方における総需要の縮小、そして、実質賃金が伸びない中での増税、これらを前に320年の名門企業が力尽きた、と言うことだ。
一方、長沢氏は「高コスト体質の是正が進まなかった」とも述べた。高コストの象徴は百貨店固有の接客サービスを担ってきた “人” に対する費用である。つまり、これまで顧客に対して無償で提供されてきた「おもてなし」のコストを吸収するだけの余力が失われていたということであり、言い換えれば、サービスを捨てる、あるいは、サービスに投下された販促費用を新たな収益原価に振り替えるという意味での改革が出来なかった、ということだ。

昨年、コンビニエンスストア業界では24時間営業を巡って本部とFCが対立した。日本のコンビニ業界のサービス水準の高さは言うまでもない。それを支えてきたのはセブンイレブン方式に象徴されるビジネスモデルである。しかし、本来、利益共同体であるはずの両者の対立は、サービスの担い手である “人” に対するコスト配分の有効性、すなわち、従来型ビジネスモデルが限界に達したことを意味している。業界全体の成長が鈍化する中にあって、サービスをタダで提供し続けることは出来ない、という単純なことである。

サービスはタダではない、近年の物流業界を見ても一目瞭然である。サービスに対する対価、すなわち、費用は誰が、どういう形で負担するのか、そして、対価に見合う便益、費用に見合う利益とはどうあるべきか、ここが根本である。つまり、三木谷氏がどんなに声高に叫んでも送料の “無料” など、そもそもあり得ないのである。

今週の“ひらめき”視点 1.26 – 1.30
代表取締役社長 水越 孝