遺言は自身の死後にその意思を残す方法のひとつです。さまざまな内容を記すことができますが、その中に「遺産分割方法の指定」というものがあります。今回は遺産分割方法を指定した遺言とはどのようなものなのか、その内容や遺言書を作成する際の注意点などについて解説します。
遺産分割方法の指定の仕方
民法では、遺産分割方法の指定について以下の規定があります。
“(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)
第九百八条 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる”
遺産分割の方法を指定するにはいくつかの種類が考えられますが、代表的なものは「Aに甲不動産を相続させる」といった特定の相続人などに特定の財産を相続させる旨の内容です。このような遺言は、2019年の民法改正から「特定財産承継遺言」と呼ばれることになりました。
“(特定財産に関する遺言の執行)
第千十四条
2 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる”
現預金・不動産・有価証券等を現物のまま相続人が承継する遺産の分け方は、「現物分割」と言います。また「財産を売却して現金にした後、相続人全員で均等に分割しなさい」という旨の遺言を作成することもできます。財産を現金に換えて分割する方法で、このような分け方は「換価分割」と言います。不動産等分割しづらい財産が多く現金が少ない場合に活用されることが多いでしょう。
さらに「Aに自社株式と不動産を相続させるのでAはBに現金○○万円を自身の財産から渡しなさい」という遺言を作成することも可能です。このような、財産を多く相続する代わりに、その相続人が他の相続人に自身の財産を渡す分割のしかたは「代償分割」と言います。特定の相続人が多くの財産を相続し他の相続人が受け取る財産が少なくなってしまう場合や特定の相続人の遺留分が侵害される場合に活用されます。
第三者に委託することも可能
「事業は長男が引き継ぐものとする」といった内容を遺すことも可能です。ただしこの場合、個人事業であればどの範囲までを長男が相続するかがあいまいとなり、法人であれば自社株式が分散している場合などはその後の経営に支障が出てしまう可能性もあります。他の財産とあわせて具体的にどのような分割を望むのかを明記しておくことが必要です。
この遺産分割方法の指定を第三者に委託することもできます。ただしこちらは遺言をする人が遺産分割の内容を決めるのではなく第三者その内容を委ねることになるのです。もめごとの原因になりかねないため、特段の事情がないかぎりはこのような遺言は残さないことが賢明といえます。
遺言書を作成する場合の注意点
せっかく作成した遺言でも内容によっては遺された相続人間でトラブルとなってしまう可能性があります。そのため、作成する場合には「誰がどの財産を相続するか」について具体的に明記することが必要です。あわせて「付言事項」で作成にいたるまでの想いなどを記しておくことで相続人へ円滑に財産を継承できることが期待できるでしょう。
作成にあたっては各相続人の遺留分を侵害しないように配慮することも重要です。また自筆証書遺言の場合には記載のしかたによっては遺言書自体が無効となったり、その意志の通りに実行されなかったりすることもあるため、専門家のアドバイスなどを仰ぎながら作成することが大切となります。(提供:相続MEMO)
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