DeNAが発表した最新決算、四半期利益が前年同期の黒字から一転。まさかの500億円超の赤字に転落した。2005年に上場して以来、初の最終赤字になる見通しだと発表した。なぜこれほどの損失を計上する結果となったのか。決算資料を読み解いていこう。
赤字の大きな原因は「のれん代」
DeNAが2月5日に発表した2020年3月期の第3四半期の連結業績(2019年4〜12月)では、売上収益は前年同期比3.7%減の911億6,200万円と小幅な減少に留まったが、営業利益は前年同期の85億8,300万円のプラスから441億6,100万円のマイナスに転じた。そして前述の通り、四半期利益も赤字に転落している。
収益が大幅にマイナスとなったのには、ゲーム事業に関連した「のれん代」などで多額の減損損失を計上したことが主な理由だ。その減損損失の額は実に493億円に上る。
のれん代とは、企業が過去に行った買収で支払った金額とその買収先の現時点での純資産の差額のことを指す。今回の決算発表で響いたのが、2010年にDeNAが300億円超で買収した米エヌジーモコに関するものだ。
ただ今回大幅な赤字を招いたとはいえ、その主な要因はのれん代が絡む減損損失であったことから、具体的なキャッシュアウトは無いためそこまで大きな問題ではないという見方もある。では実際のところ、DeNAの現時点での実事業の業績は良いのか悪いのか。
主力の「ゲーム事業」はどうか?
DeNAの事業は大きく5つに分類され、その各セグメントについての業績が決算書類の中で説明されている。このうち売上収益が最も大きいのが「ゲーム事業」だ。
そのゲーム事業の売上は前年同期比3.8%減の601億1,900万円、利益も同32.6%減の89億100万円と不調だ。その理由についてDeNAは「ユーザ消費額は前年同期比で減少し、前年同期比で減収減益となりました」と説明。また、「新たにリリースしたタイトルが貢献を始めた」と説明しつつも、現時点では既存のタイトルを核とした展開になっていることに触れている。
この「新たにリリースしたタイトル」とは、ポケモン社と共同開発して去年8月にリリースした「ポケモンマスターズ」や、同じく昨年に任天堂とともに開発した「マリオカートツアー」などのことを指すと考えられる。両ゲームはDeNAが当初想定していたほどのヒットにはならず、今後どこまで巻き返せるか注目を集める。
「スポーツ」事業は好調!利益は約22.6%増
主力のゲーム事業の数字が厳しいものとなっている一方で、ゲーム事業に次ぐ売上を計上している「スポーツ事業」は好調だ。
決算発表資料によれば、売上収益は前年同期比19.4%増の188億4,900万円に上り、利益も同22.6%増の37億800万円を確保している。横浜DeNAベイスターズの主催試合では入場者数が伸び、同チームがクライマックスシリーズに進出したことも業績の向上に大きく貢献した。
スポーツ事業は売上的にはゲーム事業の3分の1程度だが、このスポーツ事業の好調ぶりはDeNAに関するポジティブなニュースの一つととらえて差し支えないだろう。
また、まだまだ売上は小さいものの、タクシー配車アプリ「MOV」の展開で話題になった「オートモーティブ事業」も売上が急拡大しており、今後の同社の業績にどれだけ貢献していくのかにも関心が集まる。
ゲーム事業の立て直しが鍵か
ゲーム事業に関連するのれん代による巨額損失は、やや大雑把な言い方とはなるが「一時的なもの」であるとも言える。とはいえ、DeNAの主力は現時点でゲーム事業。スポーツやオートモーティブ事業を次なる協力な柱に育てていくという戦略の基礎になるゲーム事業の立て直しが急がれるところだ。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/MONEY TIMES
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