ネット証券と総合証券の違いはなんだろうか?違いから発生するそれぞれのメリットとデメリットを把握することで、資産運用もよりストレスなくできるだろう。ここでは、それぞれの証券会社がどんな投資家タイプに向いているかも紹介していこう。

ネット証券と総合証券の3つの違い

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(画像=Rawpixel.com/Shutterstock.com)

最初に、ネット証券と総合証券の大きな違いを確認しておこう。証券会社選びは、この違いにもとづいて、自分にとって都合の良い証券会社はネット証券と総合証券のどちらなのかを判断することから始めたい。

違い1,実店舗があるか、ないか

ネット証券と総合証券の最大の違いは、以下のとおりだ。

・ネット証券は基本的に実店舗を持っていない
・総合証券には顧客対応窓口が設けられている店舗がある

実店舗を保有・運営しているかどうかは、施設維持費や人件費などの経費に大きく影響し、結果的に証券会社ごとの取引手数料が決まる要因になる。

実店舗があると、顧客が選択できる注文チャネルが「店頭、インターネット、コールセンター」の3チャネルになり、実店舗がないと「インターネットのみ、もしくはコールセンターも利用可(ネット証券による)」となる。

違い2,顧客一人ずつに営業担当者が付くか、付かないか

ネット証券では、顧客に営業担当者がつくことはない。

ネット証券への各種問い合わせは、メールやAIチャット、コールセンターへの電話で行われる。電話注文ができるネット証券でも、コールセンターのオペレーターが注文を受け付けるのが通常だ。

それに対して総合証券(対面取引コース)では、顧客1人につき、営業担当者が1人ずつ割り振られる。この専任担当者が基本的に顧客の窓口となって、来店時対応や電話相談受付、新商品の案内、投資運用の相談、注文受付まで、サービス全般を請け負う。

違い3――すべて自己判断による投資か、コンサルティングを受けられるか

ネット証券では、原則的にすべて自己判断で取引を行う。銘柄は、ネット証券のサイト上にある検索機能を利用して選択する。あるいは、さまざまな投資情報を参考に銘柄を選ぶ。注文も、ネット証券サイトにログインして、注文画面から自分で発注する。

総合証券の対面取引コースでは、投資運用方法に困ったり、銘柄選択に迷ったりした時は、専任担当者に相談すれば適切な助言を受けることができる。取引も、担当者を通して発注する。

これらの違いは、手数料に反映される。店舗の賃料や人件費を削れる分、ネット証券は総合証券に比べて手数料が割安に設定されている。

ネット証券と総合証券、それぞれのメリット・デメリットは?

これらの違いは、手数料に影響を与えるだけでない。ネット証券と総合証券のメリット・デメリットを簡単に比較すると、以下のようになる。

ネット証券と総合証券 メリット・デメリット比較表

  ネット証券 総合証券
取引手数料 安い 比較的高め
投資の助言 なし あり
IPO ・個人投資家向け配分が多い
・完全平等抽選のネット証券が多い
・一部ネット証券では、
IPO取扱件数が少ない
・機関投資家向け配分が多い
・個人投資家向けの抽選による
配分割合は多くない
・主幹事案件や取扱件数が多い
投資信託取扱本数 取扱件数が豊富 取扱件数が限定的
外国株取扱本数 ・SBI証券、楽天証券、
マネックス証券の3社のみ取り扱い
・米国株、中国株中心に
多くの銘柄を取引できる
・米国株と中国株など、大和は取扱本数が多い
・野村や日興などでは主要銘柄のみ取引できる
・総合証券によっては、注文が店舗か
コールセンター受付に限定される場合あり
投資情報の内容や量 ・検索機能や投資情報ツールが充実
・外国株の投資情報は限定的
・非常に多彩で豊富
・専属アナリストや自社作成レポートなど多数

※上記比較早見表は、ネット証券と総合証券各社のホームページを参照し、要点をまとめたもの
※太字表記はメリット

ネット証券のメリット・デメリット 手数料が安い反面、自己判断が求められる

次からは、ネット証券のメリット・デメリットを具体的な例を挙げながら、個人投資家が特に注目したい点を確認していこう。

ネット証券の3つのメリット――手数料の安さ、取引のしやすさなど

ネット証券のメリットは、「手数料」「取引のしやすさ」「銘柄検索ツール」の3つに集約されるだろう。

・メリット1,手数料が安い
「手数料の安さ」は、ネット証券の最大のメリットだ。ネット証券業界の手数料無料化が進んでおり、「買付時手数料無料」の商品が増えている。

ネット証券大手・SBI証券と総合証券大手・野村證券(店舗)の国内株式1注文の約定代金にかかる手数料を比べてみよう。

約定代金 SBI証券の手数料
(スタンダードプラン)
野村證券
(店舗)
の手数料
野村證券
オンライン専用支店
(オンラインサービス)
の手数料
5万円以下 50円 2,860円 152円
5万円超
10万円以下
90円
10万円超
20万円以下
105円 330円
20万円超
30万円以下
250円 1.43%
30万円超
50万円以下
524円
50万円超
70万円以下
487円 1.1%+1,650円 1,048円
70万円超
100万円以下
0.946%+2,728円
100万円超
150万円以下
582円 0.847%+4,378円
150万円超
300万円以下
921円

5万円以下の株を購入した場合、1取引につき2,810円もの違いがある。

ネット証券では、1日の約定金額の合計額に対して手数料がかかるプランも用意されている。その場合、SBI証券、楽天証券、松井証券の1日定額制料金は1日の約定代金合計が50万円以下なら手数料はかからない。

外国株の手数料も安い。米国株を取り扱う主要ネット証券3社(SBI証券、楽天証券、マネックス証券)では、米国株の取引手数料は約定代金の0.495%(税込)、為替スプレッドは片道0.25円。さらに、マネックス証券の買付時の為替スプレッドは2020年4月までの期間限定ながら0円だ。

ネット証券で取り扱う投資信託についても、「買付手数料無料」が主流になっている。

・メリット2,取引がしやすい
ネット証券はインターネットを利用する取引なので、メンテナンス時間を除けば、自分の都合の良い時にいつでも注文を出すことができる。さらに、アプリをダウンロードすれば、スマートフォンやタブレットからでも取引できるので、場所を気にせずどこでも取引ができる。

SBI証券や楽天証券、松井証券のように、PTSを利用したリアルタイムの夜間取引ができるネット証券もあるため、夜間しか取引できない人には便利だ。AIチャットも導入されているため、週末や夜中でも簡単な質問なら回答が得られる。

これは、本業がある会社員にとっては手数料の安さと並ぶ大きなメリットだろう。

・メリット3,銘柄検索のためのツールや情報が充実している
ネット証券では、銘柄検索で使用できるスクリーニング機能やランキング情報、分析チャート情報などが充実している。これらを駆使することで、自分の投資方針に適した銘柄を選別しやすくなる。

SBI証券のメインサイトにある「スクリーニング」や「チャート形状銘柄検索」、楽天証券のトレーディングツール「マーケットスピード」、マネックス証券の銘柄分析ツール「銘柄スカウター」、auカブコム証券のツール「kabuカルテ」や「kabuスコープ」などは、特に使い勝手が良いと評判だ。

ネット証券の2つのデメリット――すべてが自己判断、加えてセキュリティ上のリスクも

さまざまなメリットがあるネット証券だが、デメリットも押さえておきたい。

・デメリット1,銘柄選びから取引まで自分で行うため手間がかかる
ネット証券の最大のデメリットは、顧客に営業担当者がつかないため、投資家は常に自分で銘柄選びから取引まで行う必要があることだ。

総合証券のように店舗窓口で新規取扱投資信託の案内や、電話で新発債の勧誘を受けることもないので、何に投資するかも含めて、すべて自分で一から探す必要がある。

銘柄選びで迷ったり、保有する株式の売却時期に悩んだりしても、状況に応じたプロのアドバイスを受けることはできない。自分で投資情報を収集し、企業分析を行って、答えを見つけなければならないのだ。

・デメリット2,セキュリティ上のリスク
もう1つのデメリットは、インターネットならではのセキュリティリスクだ。自分の資産を守るために、ログインIDとパスワードの管理や、定期的なパスワードの変更など、セキュリティ対策を自分自身で徹底しなければならない。

IDやパスワードを忘れてしまうからといって、クラウド上に保存することは避けたい。そのクラウドサービスから情報が抜き取られてしまった場合、自分の資産が危険にさらされてしまうからだ。

総合証券のメリット・デメリット IPOで有利、手数料が高いなど

総合証券には、店舗窓口での対面取引が主体であることによるメリット・デメリットがある。以下で、それぞれを確認していこう。

総合証券の3つのメリット――営業担当者が決まっている、IPOで有利になるなど

「固定の営業担当者」「IPOで有利」「投資情報の豊富さ」が、総合証券の主なメリットだ。

・メリット1,営業担当者が決まっている
顧客にはそれぞれ営業担当者がついているため、銘柄選びに困った時など、気軽に相談できる。担当者は顧客の運用目的や投資方針を把握しているので、的確な助言や運用プランの提案を受けられるだろう。

折に触れて新商品などの案内や勧誘を受けるので、その都度判断して、興味があれば投資するという流れを作りやすい。

・IPOで有利になる
大手総合証券はIPOで主幹事を務めることが多いので、当選チャンスが多くなる。預かり資産が多ければ、抽選によらない配分や優遇を受けることもあり、有利な条件でIPOに参加できる。

・投資情報が豊富
総合証券の投資情報は専門性・信頼性が高く、多彩で豊富だ。

専属アナリストによる個別銘柄調査レポートや最新のマーケット動向レポート、エコノミストやストラテジストによる資産管理アドバイスや相場アドバイスなどが掲載された季刊誌、ウィークリーレポート、マンスリーレポートなど、質の高い投資情報をいつでも閲覧できる。

もちろん店舗に行けば、知識が豊富な営業担当者から、さまざまな投資情報を得ることもできる。

総合証券の2つのデメリット――手数料が高い、取引時間に制約がある

総合証券には、デメリットもある。

・デメリット1,手数料が高い
総合証券(対面取引コース)の最大のデメリットは、専任の担当者がつき、手厚いサービスを受けられる分、手数料が高いことだ。

・取引は営業時間内に限られる
対面取引コースでは、基本的に取引は窓口で行われるので、営業時間内に店舗に赴くか、電話で注文する必要がある。日中多忙な会社員にとっては、対面取引コースは時間的な制約があるのが難点だろう。

ネットと総合、どちらの証券会社が向いている?投資家タイプ別診断

ネット証券と総合証券にはそれぞれ特徴があり、メリットを生かせる投資家のタイプが異なる。具体的に、どのようなタイプの投資家がどちらに向いているかを整理しよう。

ネット証券が向いている人は?コスト第一主義、すべて自己判断で進めたい人

近年ネット証券の低コスト志向、手数料無料化が進んでいる。それを踏まえると、ネット証券のメリットを最大限に活かせるのは、低コスト第一主義の人だろう。

また「証券会社からの勧誘は一切お断り」という人や、「銘柄選びから注文まで、自分で納得いくまで調査や分析を行い、自己完結したい」人は、デメリットをカバーできるという意味で、ネット証券が適しているだろう。

総合証券が向いている人は?効率性重視、預かり資産が多い人

投資情報の収集や分析に充てる時間を取れないが、何らかの資産形成をしたいと考える効率性重視の人は、手数料は高めだが、総合証券を検討してみるといいだろう。

商品知識が豊富な営業担当者が、運用方針に適した商品を吟味して、提案してくれるので便利だ。

預かり資産が多い人も、大口の資産運用商品が揃い、資産運用サービスだけでなくIPOを含めた各種優遇サービスを受けられる総合証券が向いているだろう。

ネット証券と総合証券の違い 証券会社選びの確認ポイントに

ネット証券と総合証券は、窓口対応の有無や手数料など、大きな違いがある。この違いは、証券会社を選ぶ際に最初に確認すべきポイントだ。

それぞれのメリット・デメリットを考慮して、自分の投資方針に合った証券会社を選んでほしい。

文・近藤真理(フリーライター)/MONEY TIMES

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