今年3月に、創立20周年を迎えたサマンサタバサは、著名なモデルやアスリートを起用するなど、非常に力のあるブランドのひとつだ。

財布からキャリーバッグといった「小物」と「鞄」、そしてプライベートデザインによる「ジュエリー」が主力の商品。服飾から靴、時計、小物、貴金属といったファッションブランド展開の拡大が多いなか、あくまでもバッグとジュエリーに的を絞ることで、強烈な個性が訴求されている。

現在は、メンズも含め約15ブランドを展開。ターゲットはジュニア世代から20代~40代までと幅広い。手頃な価格感、シンプルなデザインが多く、ほとんどは無地だ。ブランド名が入らないこともあり、持って出かける場所を選ばない、という気軽さが付加価値になっている。

サマンサタバサは、その独自のマーケティング戦略が際立っている。サマンサタバサを、海外ブランドと信じ込んでいる女性は非常に多い。また、アジアからの観光客がサマンサタバサの鞄を指名買いすることも多い。韓国や台湾などのモデルやアーティストとのコラボも行うことで、アジアマーケットに食い込んでいる。

サマンサタバサは、著名モデルのヴィクトリア・ベッカム、道端ジェシカの2人とプロモーションモデル、そしてデザイナーとして契約。これ以外にも数多くの著名なモデル、女優、アーティスト、アスリートなどを起用し、デザインの提供を受けている。

通常、製作した商品をモデルに持たせることで宣伝効果を狙う。しかし、サマンサタバサの場合は、先にモデルと契約し、彼女たちに持たせたい商品を製作する手法を取っている。結果、商品とモデルは一体化し、非常に高い訴求効果が得られているのだ。

逆転の発想から生まれた、サマンサタバサのバッグ。実は自社生産はしておらず、すべてアウトソーシング。拠点は中国が多いといわれている。

ブランド開拓には「生産地」を活用したイメージ戦略が重要と言われているが、生産地よりもユーザーの「鞄を持って出かける」イメージ作りを重視し、いきなりアメリカの著名モデルと契約して商品を宣伝することで、市場を作り上げた。

また、他業界とのコラボレーションにも積極的だ。「サマンサタバサ ガールズコレクション・レディーストーナメント」は、日本女子ゴルフ協会の公式大会であり、賞金総額6000万円。その他、自動車レースのスーパーGT(国内レース)で鈴木亜久里のチームサポート、サッカー日本代表GKの川島選手とのコラボなど、非常に積極的な姿勢が目立つ。スポーツを全面に押し出した男性ブランドへの進出は、サマンサタバサのアクティブなイメージ作りに貢献するだろう。

創立20周年という節目を迎え、「世界中のお客様に勇気や勢い、感動を感じていただける、魅力的なブランドを育てていきたい」と語る社長の寺田氏のもと、常に新たなチャレンジを目指すサマンサタバサ。その次なる一手から目が離せない。