自分自身に相続が発生した場合に「どの財産をだれに渡すか」を決めるには「遺言書の作成」が必要です。しかし他にも「死因贈与」という方法で財産を渡すこともできます。今回は死因贈与とは何か、その内容と活用する際の注意点などについて解説します。

死因贈与とは

遺言
(画像=New Africa/Shutterstock.com)

死因贈与とは読んで字のごとく、死亡を原因として贈与する行為です。例えば「贈与者(財産を渡す人)甲の死亡を条件として受贈者(財産を受け取る人)乙に不動産丙を贈与する」という内容を約束することを指します。贈与という名が付くものの、受贈者が取得した財産は贈与税の課税対象ではなく相続税の課税対象です。

遺言と似た行為ですが、遺言は自身の財産を「どのように・誰に渡すか」を記す「遺言者の意思表示・単独行為」になります。その内容を相続や遺贈を受ける側に必ずしも知らせる必要はありません。一方、死因贈与は「贈与者・受贈者双方の明確な意思・合意によって行われる契約行為」です。贈与する財産が明確になっている生前に、受贈者に渡す財産を伝えることができる点が大きな違いです。
また遺言は自筆証書遺言・公正証書遺言など書面で行うことが必要になります。死因贈与は通常の贈与と同じく、書面で契約書を交わしても、口頭で約束をしても契約が成立します。
ただし契約書を交わさない場合、その内容が贈与者・受贈者当人以外は知ることができないため、通常は契約書を交わしその内容を書面で残しておくことが一般的でしょう。

死因贈与の種類

このように遺言とは異なる特徴を持つ死因贈与ですが、単純に贈与者の死亡を条件として受贈者に財産を贈与する契約の他、以下のような贈与も行うことができます。

・負担付死因贈与
こちらは死因贈与をする条件として生前に受贈者に何らかの負担・義務などを負わせる契約をするものとなります。例えば「死後に不動産を贈与する代わりに、生前に贈与者の介護など、身の回りの世話を行う」といった内容です。ちなみに死因贈与については「その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する」とされています。

民法
(死因贈与)
第五百五十四条 贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する

出典:電子政府の総合窓口e-Gov(イーガブ)

そのため死因贈与の撤回についても遺贈に関する規定に基づき、いつでも撤回することが可能となります。

(遺言の撤回)
第千二十二条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる

出典:電子政府の総合窓口e-Gov(イーガブ)

ただし、「負担付死因贈与で負担を受贈者が全部、またはこれに類する程度履行した場合、特段の事情がない限り撤回することができない」という判例があります。これにより、受贈者は、「負担・義務などを負わされたあとに契約を撤回される」というリスクを軽減できると解釈できます。また「特段の事情」が無い限り、負担・義務などを履行することにより財産を取得できる権利が得られることになります。

・始期付所有権移転仮登記
死因贈与によって渡す財産が不動産の場合、贈与者の承諾があれば「始期付所有権移転仮登記」を受贈者が単独で申請することができます。こちらは死因贈与契約書を公正証書で作成し、その中に「贈与者が仮登記の申請について承諾すること」「死因贈与契約の執行者を受贈者と指定すること」について記載しておくことが必要です。

これを行うことで受贈者が該当の不動産について単独で所有権移転登記の手続きを行うことができ、確実に財産を取得することができます。単なる遺贈では仮登記はできません。

活用する場合の注意点

このように死因贈与には遺言とは異なる特徴があるため、活用方法によってはメリットを享受することができるでしょう。しかし受遺者が法定相続人で死因贈与によって不動産を取得した場合には、遺言と比較して登録免許税・不動産取得税の税率が変わってきます。登録免許税は遺言の場合には0.4%に対して死因贈与は2%、不動産取得税は遺言の場合には非課税に対して死因贈与は3~4%と負担額が大きくなります。

また上述した通り、贈与契約は必ずしも書面で行う必要がないものの、後々トラブルなどを起こさないためにも書面で契約内容を残しておいたほうが望ましいでしょう。生前に自分自身の財産の処分方法について決められる死因贈与ですが、遺言など他の方法と合わせてできるだけ自分の意思が反映できる方法を選択することが必要です。(提供:相続MEMO


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