ネット証券の口座は簡単と言われるが、マイナンバーの提出や何を審査されるのか、どのくらいで開設できるかなど、初心者は戸惑うことも多いはず。今回は、ネット証券で口座を開設する手順や、口座開設にあたって知っておきたい基礎知識を紹介しよう。
1,ネット証券の口座開設に必要な開設期間 最短1日で
ネット証券各社ではWEBによる口座開設申込が主流となっている。
従来型の総合証券にみられるような店頭での口座開設手続きを行う方法や、証券会社から申込書を取り寄せて、記入後返送する方法に比べると、WEB申込はかかる時間や手間を大幅に省くことができる。時間に制約の多いビジネスパーソンには最適な方法だろう。
口座開設から取引開始までの時間を短縮したいなら、申し込みの際に、本人確認書類の提示方法としてWEBアップロードを選択すればよい。
申込受付後にネット証券で審査が行われる。その後、口座開設完了と初回ログイン情報が、郵送あるいはEメールで口座開設者に通知される。この初回ログイン情報をネット証券のログイン画面に入力してから入金すると、実際に取引を開始できる。
どのネット証券を選んでも、口座開設費用は無料だ。もちろん口座管理費も無料なので、気楽に口座開設するとよいだろう。
口座開設完了通知が郵送されるネット証券の場合――申し込みから4営業日~1週間程度
申し込み後に口座開設完了通知が郵送されるのは、以下のネット証券。
SBI証券
楽天証券
松井証券
auカブコム証券(SMART口座開設アプリを含む)
岡三オンライン証券
GMOクリック証券
ライブスター証券の
申し込みから取引開始までは、4営業日~1週間程度かかる。
本人認証までオンラインで完結するネット証券の場合――最短当日中
口座開設完了通知は、郵送ではなく早々にオンラインで届けられる。
マネックス証券とDMM.com証券 株、GMOクリック証券(ICカードリーダーでマイナンバーを提示する場合)の口座開設では、朝一番に申し込めば最短で当日中に取引を開始できる。
2,ネット証券口座開設の3ステップ
このように、口座開設方法はネット証券によって多少の違いはあるものの、手続きの大まかな流れは共通している。
ステップ1,口座開設申し込みフォームに必要事項を入力&本人確認書類をアップロード
↓
ステップ2,口座開設完了通知を受け取る
↓
ステップ3,ログイン後、入金して取引開始
この3ステップだ。それぞれを詳しく解説していこう。
ステップ1,フォームへの必要事項入力と本人確認書類のアップロード
各ネット証券サイトの「口座開設」ボタンをクリックして、口座開設申込画面に遷移する。提示する本人確認書類を確認してから、申込フォームに必要事項を入力。
同じタイミングで、個人番号カードを含む本人確認書類も撮影してアップロードする。
DMM.com証券 株では手順が若干異なる。最初にWEBサイトから口座開設を申し込むと、DMM.com証券 株から申込受付メールが届く。記載されている専用URL画面に必要事項を入力して、同時に本人確認書類をアップロードする。
なお、auカブコム証券のSMART口座開設アプリを使用した場合は、本人確認書類を撮影すると、読み込んだ個人情報が自動的に入力項目に反映されるので、個人情報を入力しなくてすむ。
ステップ2,口座開設完了通知を確認する
【郵送による通知の場合】
個人情報や本人確認書類をアップロードすると、ネット証券で審査が行われる。問題がなければ口座開設完了となり、ネット証券から口座開設者に口座開設完了通知、ログインID(口座番号)と仮パスワードが届く。
【メールによる通知の場合】
・マネックス証券とGMOクリック証券(ICカードリーダー利用)
口座開設の審査後に、メールで口座開設完了と口座番号(ログインID)ならびに仮パスワードが通知される。
・DMM.com証券 株
URLが記載されたメールが届く。URLからアクセスして本人認証を行って、ログイン情報を受け取る
ステップ3,受け取ったIDとパスワードでログイン&入金して取引開始
ネット証券サイトのログイン画面で、ステップ2で受け取ったログインIDと仮パスワードを使ってログインする。
ログインしたら、セキュリティ強化のため、仮パスワードから任意のパスワードに変更しよう。インターネットバンキングや即時入金サービスを利用してネット証券口座に入金したら、取引を開始できる。
3,ネット証券の口座開設に必要なもの「マイナンバー」
現在、証券会社で口座を開設する際には、所得税法などによってマイナンバーの提示が義務付けられている。どの証券会社でもマイナンバーの提示と、必要に応じた本人確認書類の提示が口座開設手続きに組み込まれているので、必要な手順として覚えておいてほしい。
証券会社の口座開設にあたっては、マイナンバーの提示は個人番号カード(マイナンバーカード)または通知カードのどちらで提示してもよいことになっている。ただし、個人番号カードか通知カードか、個人番号カードや通知カードが手元にある場合とない場合とでは、マイナンバーの提示方法や必要になる本人確認書類が違ってくるので、自分に該当する方法を以下で確認しておくとよいだろう。
個人番号カードが手元にある場合
個人番号カードが手元にあると、手間が一番少なく最短で口座開設ができる。個人番号カードの表面の顔写真と裏面のマイナンバーが読み取れるように、両面をデジタルカメラやスマートフォンで撮影するか、スキャンしてからパソコンに保存する。口座開設ページのマイナンバーカードの提示方法で「アップロード」を選択して、保存したマイナンバーカード画像をアップロードする方法が一般的だ。
どのネット証券でも、マイナンバーカードがあれば、本人確認書類として提示するのはこの1点(表面と裏面)だけでよいので簡単だ。
中には、auカブコム証券のSMART証券口座開設のように、スマートフォンのNFC機能で直接マイナンバーカードを読み取ることができるシステムも出てきている。ただし、現在では一部のAndroid端末のみの対応なので、使用している携帯が対応機種であれば利用してみるのもよいだろう。
個人番号カードがなく、通知カードが手元にある場合
通知カードは通常、本人確認書類にはならない。そのため、証券会社に通知カードを提示する場合は、他の本人確認書類を一緒にアップロードする必要がある。
通知カードで必要になるのは表面のマイナンバー部分なので、撮影・スキャンした画像でマイナンバーが鮮明に写っているかを必ず確認してからアップロードする。裏面にも記載があれば裏面も忘れずに。
通知カードと一緒にアップロードする本人確認書類は、運転免許証をはじめ、住民票の写し・パスポート・印鑑登録証明書・健康保険証・福祉手帳・在留カード・特別永住者証明書など。顔写真が付いた本人確認書類なら1点、顔写真が付いていない本人確認書類であれば2点の提示を求められるのが一般的だ。
個人番号カードも通知カードも手元にない場合
マイナンバーを記載したどちらのカードも手元にない場合は、証券会社によって対応に若干違いがある。
書面の「口座開設申込書」とあわせてマイナンバー確認書類と本人確認書類を郵送するケースが多く見られる。一方で、SBI証券のように、口座開設手続きはWEBで行い、マイナンバー確認書類や本人確認書類だけを郵便で送ったり、メールで送ったりできることもあるので、詳細については必ず各証券会社のホームページで確認を。
4,選べる3種類の口座とその違い――特定口座(厳選徴収あり)、特定口座(源泉徴収なし)、一般口座
証券会社に口座を開設する際に、必ず選択しなければならないのが「特定口座(源泉徴収あり)を開設する」、「特定口座(源泉徴収なし)を開設する」、「特定口座を開設しない」(一般口座)の3つの選択肢だ。その後の投資運用と納税方法に密接に関わるので、ここで3種類の口座の概要を確認して、自分の投資スタイルに合った口座を選ぶべきだろう。
特定口座の源泉徴収あり・なしについては、その年の最初の譲渡や配当金の受け入れのタイミングまでに切り替えることができる。投資方針が変わったりした場合には、年初に変更手続きすることを忘れないようにしたい。
特定口座(源泉徴収あり):譲渡益などの利益が出ると、その都度源泉徴収される
この口座で上がる譲渡益などの利益はその都度源泉徴収されるため、自分で確定申告する必要がない。配当金の受け取りも特定口座(源泉徴収あり)を指定しておくと、1年間通して譲渡損失が出た場合に自動的に配当金と損益通算されるので、忙しいビジネスパーソンに適した口座だといえる。
毎年、証券会社から1年分の「年間取引報告書」が交付されるため、複数の証券会社間で損益通算の確定申告をする予定がある人にも便利な口座だ。
特定口座(源泉徴収なし):源泉徴収されないので、原則確定申告が必要
原則的に確定申告が必要な口座だが、証券会社から1年分の「年間取引報告書」が交付されるので、それに基づいて簡単に申告できる。年間通して大幅な譲渡損失が発生し、損益通算しても翌年に損失が繰り越すときは、確定申告で「損失の繰越控除」が適用される。株式投資によって損失が発生するリスクがある場合には、あらかじめ特定口座(源泉徴収なし)を選択するのも手だ。
年間の給与所得が2000万円以下で、給与所得・退職所得以外の年間所得が20万円以下に収まる見込みの人についても、確定申告の必要がないので、譲渡益などが源泉徴収されない特定口座(源泉徴収なし)を選択するメリットがある。
一般口座:1年間の売買損益全てを自分で計算する。原則確定申告が必要
特定口座と違って、証券会社から「年間取引報告書」が交付されないので、一部の場合を除いて、全ての売買損益を自分で計算して毎年確定申告する必要がある。一般口座を選択している場合も、「損失の繰越控除」の適用を受けられるので、年間の譲渡損失がマイナスになって所得税を支払う必要がなくても忘れずに確定申告するとよい。
売買損益の計算など、管理に手間と時間が掛かるので、多忙な人にはあまり向かない口座だといえる。
5,口座開設後にやっておきたい3つのこと 株アプリ、口座連携、基本用語の把握
証券口座を開設したら、以下の3点が完了しているか確認して、取引環境を整えよう。その後のスムーズな取引に大いに役立つので、おすすめだ。
1,株アプリのダウンロード――スマホで取引できるようになる
ビジネスパーソンにとって、取引チャネルのポータビリティは重要だ。スマートフォンを使って、どこでも気軽に銘柄選択や株式取引ができれば、通勤途中あるいは昼休みなどの隙間時間を活用して資産運用ができる。
ネット証券では、高機能で使い勝手が良い株式取引のスマートフォン専用アプリを提供している。どれも無料で利用でき、iPhoneとAndroidのどちらにも対応している。ぜひダウンロードして株式取引に役立ててほしい。
代表的なスマートフォン専用株アプリ
証券会社名 | 株アプリの名称 | 特徴 |
SBI証券 | 「SBI証券 株」アプリ | ランキング機能が豊富で、 銘柄分析機能や絞り込み機能も充実 |
楽天証券 | iSPEED | 15種類のカスタマイズ可能な チャートとPC並みの豊富な情報量 |
マネックス証券 | マネックストレーダー株式 スマートフォン |
モバイルトレーディングに必須の 使いやすさとスピードを追求 |
松井証券 | 株touch | 先物・オプション取引や NISA口座取引もできる株アプリ |
auカブコム証券 | kabuステーション | PC用kabuステーションと同等の 機能を搭載しつつ快適な操作性を追求 |
※主要ネット証券5社のHPでスマホ専用株アプリの情報を参照し、一覧表示した
2.ネット銀行口座との連携――SBI住信や楽天と連携しておくとお得
SBI証券、楽天証券、auじぶん銀行、GMOクリック証券では、グループのネット銀行と口座連携ができるサービスを提供している。口座開設したネット証券に銀行との口座連携サービスがあれば、ネット銀行口座の開設と口座連携設定をしておくといい。
証券と銀行の口座連携によって利用できる主なサービスは、以下の2つだ。
・ネット銀行の普通預金に優遇金利が適用される
・証券口座と銀行口座間の自動入出金機能を利用できる
さらに、各社独自のポイントサービスや外貨入出金無料サービスも利用できるので、口座連携サービスを使わない手はない。本格的に株式取引を行うようになると、サービスの便利さやお得感を実感できるはずだ。
ネット証券とネット銀行の口座連携サービス
証券会社名 | 銀行名 | 特徴的なサービス |
SBI証券 | 住信SBI ネット銀行 |
・外貨入出金手数料無料 ・銀行の為替コストが 米ドル/円で4銭(片道) |
楽天証券 | 楽天銀行 | ・普通預金の優遇金利が年0.10% ・取引ごとに楽天スーパーポイントが貯まる |
auカブコム証券 | auじぶん銀行 | ・銀行で保有する外貨を入金手数料無料で 外貨のまま証券口座に入金できる ・取扱通貨はネット証券最多の6種類 |
GMO クリック証券 |
GMO あおぞら ネット銀行 |
・普通預金の優遇金利が年0.11% ・信用取引専用の便利な サービスを利用できる |
※各社ホームページの銀行口座連携サービスから特徴的なサービスを抽出した
3,株式投資のための基本的用語の把握――指値、成行、PER、PBRなど
株式投資を始めるにあたって、売買注文や銘柄選択で必ず知っておきたい基本用語がある。まずは以下の4つの意味を理解しておくと、発注など操作がスムーズにいくはずだ。
・指値注文(さしねちゅうもん)
株式の売買価格を明示して、売買注文を出すこと。指値注文は約定すれば希望価格で売買できるが、なかなか取引が成立しないこともある。買付注文では指値が取引の上限価格に、売付注文では指値が下限価格になる。
・成行注文(なりゆきちゅうもん)
株式の売買価格を明示しないで、銘柄と数量だけを指定して売買注文を出すこと。取引は成立しやすいが、相場環境によっては想定外に高い、あるいは低い価格で約定するリスクもある。
・PER(Price Earnings Ratio;株価収益率)
「PER(倍)=株価÷1株あたり純利益(EPS)」で算出される投資指標。企業の収益力に対して、株価が割安か、割高かを判断する尺度として用いる。PERの数値が低いほど、株価が割安であると判断される。
・PBR(Price Book-value Ratio:株価純資産倍率)
「PBR(%)=株価÷1株あたり純資産(BPS)」で算出される投資指標。1株あたり純資産の何倍の値段(株価)が付けられているかを見る。企業の資産価値に対して、株価が割高か、割安かを数値化したもの。PBRは業種によって変わるので、同業他社に比べてPBRの数値が低ければ割安と判断できる。
6,株式投資の第一歩は証券口座の開設から
忙しい中でも株式投資による資産運用をしてみたいと考えるならば、スマホ通信環境があれば、低コストで取引できる環境が整っているネット証券が最適だ。
ネット証券で口座開設する場合は、申込書と本人確認書類をWEBでアップロードする方法が便利。株式投資での資産運用は、スキルを蓄積していくという意味でも、リスクを分散する時間を多くとるという意味でも、早めに始めた方がよい。さっそくネット証券で口座開設してみてはどうだろうか。
執筆・近藤真理
証券会社の引受業務やビジネス系翻訳携わったのち、個人投資家として活動。現在は総合証券、ネット証券の両方を使いこなし、経済、金融、HR領域で多数の媒体で執筆中。2019年にフィナンシャルプランナーの資格取得。
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