衣料品大手のレナウンが2期連続で最終赤字を計上した。決算期を変更したことによって前期との比較はやや複雑になるが、赤字幅は39億円(2018年3月〜2019年2月)から67億円(2019年3〜12月)に広がる形となっている。何がレナウンの業績を悪化させているのか。
67億円の赤字!原因は暖冬による防寒商品の不振や貸倒引当金の計上
レナウンが今年2月に発表した2019年12月期の通期決算では、純損失を67億4,200万円計上する形となり、2期連続の赤字となった。赤字幅も前述の通り、拡大している。決算資料では赤字が拡大した理由として、主に3つの要因が説明されている。
1つ目は暖冬によって冬物コートなどの防寒商品の売れ行きが伸びなかったことだ。レナウンは防寒商品を主に百貨店などに対して販売・納入しているが、この百貨店向けの売上が低迷したという。消費税増税による消費マインドの冷え込みも少なからず影響したとみられる。
2つ目に説明されていることが、在庫が増えたことで評価損が増加し「売上総利益」が減少したことだ。最後に3つ目の要因として、香港企業からの売掛金の回収が滞ったことによって貸倒引当金繰入額を販売費及び一般管理費として計上したことが説明されている。
1カ月当たりの売上高は3億円以上の悪化
2019年12月期の純損失は貸倒引当金の影響もあって2期連続の赤字となったが、売上高で比較するとどうだろうか。
12カ月間を対象とした2019年2月期の通期売上高は636億6,400万円、10カ月間を対象とした2019年12月期の通期売上高は502億6,200万円で、1カ月当たりにするとそれぞれ、約53億5,000万円、約50億2,600万円となる。つまり売上高は最新決算の方が悪化していると判断できる。
こうした状況を考えると、貸倒引当金の計上だけを業績悪化の言い訳にすることはできないことは言うまでもない。つまり収益向上に向けた施策が必要になってくるわけだ。ではレナウンは収益向上に向けた施策として、どのような取り組みに力を入れていくことを考えているのだろうか。
基幹ブランドに経営資源を集中、EC事業強化で業績改善を狙う
レナウンが公表している販売施策に、経営資源を基幹ブランドに集中することによって収益を改善するという計画がある。経営資源を集中する基幹ブランドとしては「ダーバン」「アクアスキュータム」「アーノルドパーマータイムレス」が挙げられている。
またEC(電子商取引)事業に力を入れていくことも明らかにされている。ECに関しては新型コロナウイルス問題を機に需要の拡大が加速することが予想され、EC事業の成功がレナウンの今後の業績改善のカギを握っていると言っても過言ではないだろう。
レナウンがサブスクリプション型事業として展開している「着ルダケ」にもさらに注力していくようだ。この着ルダケはビジネスウェアの月額利用サービスで、「スーツは『購入』から『利用』へ」などのキャッチフレーズで展開している。いま流行のサブスクでどこまで利用者を増やせるか注目だ。
レナウンはこうした販売施策のほか、「不採算・低効率な売場や取引の見直し」や「人員効率の改善などによるコスト削減」にも取り組んでいくことを公表している。こうした取り組みを進めた上で、2020年12月期の営業利益は現在の赤字の状態から1億円のプラスにまで持っていきたい考えだ。
株主総会で社長・会長を解任!厳しい状況は継続か
ただ、新型コロナウイルスの感染拡大は今期のレナウンの業績にも少なくない影響を及ぼす。また3月26日に開催された株主総会では業績悪化を受け、53%の株を持つ中国の山東如意科技集団が、北畑稔会長と神保佳幸社長の取締役再任を否決。神保氏が社長に就任したのは2019年5月。1年も経たず、社長職を退くこととなり、体制への不安感も否めない。
新社長に就任したのは、取締役城跡執行役員の毛利憲司氏。業績改善に向けては厳しい道のりが続くことが予想されるが、アパレルを代表する企業の新しい舵取り役の手腕に期待がかかる。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/MONEY TIMES
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