(本記事は、越川 慎司氏の著書『科学的に正しいずるい資料作成術』=かんき出版、2020年2月3日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

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「対角線」を意識して配置する

パワポ,プレゼン,資料作り,テクニック
(画像=gomao/Shutterstock.com)

人は資料を見るとき、左上から右下に向かって目線が動きます。

調査を通じて、この対角線上に重要なものを置いた場合は、相手の印象と記憶に影響を与えることがわかりました。

次ページのようにルールなく配置された場合と、対角線上に配置した場合では、 65%の意思決定者は「後者がわかりやすい」と答えました。それも瞬間的に後者が良いと判定をしたのです。

対角線の原則は、スライドを10秒見てどれが頭に残りやすいかを答えてもらった結果、カラーや文字の大きさといった要素の他に、左上に配置された文字や図形に目が留まっている傾向に気づいたことで生まれました。

その次にどこに印象が残るかを聞くと、やや中央に移動して目線が右下に移っていることがわかりました。

類書では、「資料を見るときは視線がZ型に動く」と書かれています。

Z型とは、左上から水平移動して右上へ、その後右上から左下へ目線が落ち、最後は左下から右下へ横スライドするという目の動きです。

しかし実際は、短時間に目に留まったものが印象に残り、そこに書かれた文章に興味を持てば、目線を右に移動してさらに文章を読むという傾向がわかったのです。

「矢印」は5つ未満

今回の調査を通して、多くの資料で矢印とアイコンが多く使われていることに気づきました。

しかし、矢印やアイコンを使いすぎると、相手を疲れさせ、視点の誘導もできません。実際、調査では「矢印は1 スライドに5つ以上あると頭が疲れる」と答える意思決定者が多いことがわかりました。

できる限り、1スライド内の矢印は5つ未満にしましょう。

もし工程表やフロー図を使って、ステップごとに時系列で表現したいのであれば、矢印を1つに集約します(巻頭カラーページの「ルールその3」参照)。

アイコンはできるだけ使わない

アイコンは、文字表現をよりわかりやすくするために使う表現手法です。

例えば、リンゴと文字で表現するよりも、りんごのアイコンを1つ資料に載せたほうが相手は疲れずに理解することができます。

ただ逆に、意味もなくアイコンを使うと効果が下がるので注意しましょう。

意思決定者は、資料の中にアイコンがあるとそこに視点を移してしまう傾向があります。すると、そのアイコンが何を示しているのかマッチングを始めてしまいます。

そのマッチングがわかりやすければ良いのですが、多くの場合、空白を埋めるために使われることが多いため、むしろ相手を疲れさせてわかりにくい資料になってしまいます。

良かれと思って、空白にアイコンを置いてしまいがちですが、むしろそれはわかりにくい資料へと格下げしてしまうのです。

「アイコン」は3つ以内

前項のアイコンの続きです。意思決定者は資料の判定を最初の10秒で行いますので、繰り返しになりますが、相手に頭を使わせるアイコンは使わないほうがいいでしょう。

もし使うとしても、1スライド3つ以内に抑えてください。

「人を動かした資料」でアイコンが使われるケースは、1スライドに3つ以内が78%以上で、平均利用個数は2.2個でした。

アイコンを使うのであれば、文字をイラストに変換するという目的ではなく、意図的に視線を誘導するために使ってください。

例えば、対角線の中にアイコンを配置すれば、目が留まる可能性は高くなります。そのアイコンの右横に重要な文字を入れれば、それを読んで頭に入れる可能性が高まります。アイコンはそれだけ威力があるのです。

アイキャッチのためなら有効な場合も

アイコンによって相手の興味を引き寄せることはできます。最初に興味喚起して、その後説得しながら詳細な情報を提供していく手法は成果につながることが実証実験でわかりました。

つまり、アイコンをアイキャッチで使うのであれば、問題はないのです。

しかし、その興味をわかせるアイコンがスライド内に複数あると、視線を誘導するどころか、相手を惑わせることになります。

安易にアイコンを配置することをやめて、相手の視線を誘導するための1つの道具として捉えて、事前にしっかりと戦略を練りましょう。

「下線」と「赤字」は極力使わない

意思決定者が好まない資料、人を動かすことができなかった資料の特徴として、下線と赤字が多いという傾向がありました。

文字を赤くしたり太字にしたり下線を引いたりすれば、そこに注目してもらえる「だろう」と作成者は思ってしまいがちです。

確かに原色の赤が使われていればそこに目が行きます。

ただし、高彩度の赤は人の目を疲れさせますし、その赤字が多ければどれが重要なのかもわからずぼやけてしまいます。

また、囲み枠を作ってその中に文字を入れれば重要なものとして読んでくれる「だろう」ということも、作成者の思い込みであったことがわかりました。

一般的に、上部に囲み枠でその概要や要旨を記載してある資料が多い傾向があります。

しかし、文字がぎっしり詰まった資料では、いくら囲み枠を作っても、そこに視点を誘導させることは難しいのです。

むしろ前後左右に余白を作った文字に視点が移り、結果的に長く記憶に残るという調査結果も出ました。

このことからも、相手の立場になって資料を見ること、そして勝手な思い込みは人を動かすどころか相手を惑わせてしまうことがわかります。

「変化」を強調する

意思決定者は無駄なくスマートに課題解決をしてもらいたいと考えています。きれいな資料を眺めるよりも、課題解決をしてもらいたいのです。

まだ解決がされていない現在の状況から抜け出して、解決された状態をイメージさせることができれば、相手は行動を起こしやすくなります。

この課題が未だ解決されていない現状(Aという状態)を解決された未来の状態(Bという状態)に変化させることが、人を動かすために最も効果的なコンテンツです。その解決されたBという状態をイメージさせ、そのBの状態に行くための具体的な方法を資料に込めます。

例えば、ダイエットを勧める場合、「痩せて健康的になり異性からモテる」という未来の状態を想像させれば相手は興味を示します。

さらに、その変化を実現する方法を具体的に説明すれば、「あ! そういうことなのか。こうやれば変化が起きるのか!」と相手に伝わり行動につながるのです。

こういったAからBへの変化を資料に入れているかどうかが重要です。

ですから、資料の中にランニングマシンが揃っているとか、駅の近くにジムがあるとか設備や機能、仕様(スペック)をいきなり提示するのではなく、AからBへの変化が伝わることに注力しましょう。

Bという変化後をいかに現実的に想像させることが重要ですので、次ページのように資料の中でイラストを使って表現するのが効果的です。

相手に伝わった状態というのは、伝え手が思い描くイメージと同じものが、相手の頭にも浮かんでいるということです。

そのためには、文字ではなく画像やイラストを使ったほうが相手は考える必要がないので、疲れず正確にイメージが伝わります。

具体的なイメージを忠実に共有できますので「わかりにくい」と思われるリスクが減るのです。

「この姿になりたい」という感情を持つと、顧客はその感情に価値を感じてお金を出してくれます。これを「感情価値」または「未来創造価値」といいます。労働時間ではなく価値を提供して稼ぐには、この未来イメージを鮮明にすることが重要です。

「数字」を多く用いる(できれば奇数)

数字で表現することの重要性は、ビジネスパーソンなら一度は耳にしたことがあるでしょう。

相手を動かした資料には、数字が多く含まれていました。特に冒頭とまとめのスライドに数字が入っている確率は、そうでない資料の7倍以上あったのです。

のちに数字の効果についてヒアリングしたのですが、特に数字を意識していなかったものの、「納得や信頼」が決定の背中を押すと答えた方は75%もいて、その裏づけとして数字が用いられるケースが多いことに気づきました。

例えば、「1000社の導入実績」「59社中47社で成功している」「トップ3で全体の7割」といった感じで実績や調査結果を数字で表現していたのです。

また、変化を数字で説明している資料が多いことも特徴的でした。

「利益が上がる」と書くよりも「利益が20%上がる」と書いたほうが相手の関心を引き寄せられます。

実際に「人を動かした資料」では、提案内容や事例を数字で表現していることが多く、その数字の頻度はそうでない資料の4倍以上ありました。

また、 4513人の実証実験でも、数字を使って変化を説明するように指示したところ、明らかに提案内容の成約率が上がり、その影響度の高さを実感できました。

そして、この数字は偶数よりも奇数のほうが効果があることも判明しました。これは「アンカリング効果」というバイアス(考えや行動の偏り)の影響で、人はキリの良い数字に揃えようとするために、 98といったキリの良い数字に近い端数や、奇数のように揃っていないように見える数字が気になって視線が留まる傾向にあるようです。

もし調査やデータ、ストーリーを数字で表現できるのであれば、できる限り奇数を使ってください(奇数にするためにデータを捏造するのは厳禁です)。

ただし、相手が意味を理解していないものを数字で表現しても効果は出ません。例えば、相手が理解していない成分が「1000 個も入っているビタミン剤」とアピールしても相手は購入しません。その成分によって自分にどのような変化をもたらすのかを想像できないからです。

「腸を整える成分が1000個入っているチョコレート」という説明であれば、チョコレートの甘さを味わえて、かつ健康にも良いのだな、と腹落ちして商品に手を伸ばすことがあるでしょう。

しかし例えば、私はタウリンという成分が何であるか、その成分が自分にどのような変化をもたらすのかがわかりませんので、栄養ドリンクのCMでタウリンの量を示されても購入しようとは思いません。

意味のない数字を提示されるよりも、「翼を授ける」という未来イメージを提示されたほうが、疲れているときに飲みたいと思います。

「タイトル」は35文字以内、カタカナと数字を入れる

表紙とタイトルには影響力があります。

特にタイトルが重要で、そこで興味をわかせて一気に最後まで引き込む必要があります。

説明開始直後が最も相手のエネルギーが高く集中していますので、タイトルを油断してはいけません。相手を動かすためには、相手の課題を解決する内容を提供して腹落ちしてもらわないといけませんので、相手に与える変化がわかるタイトルにします。

実証実験でわかったのは、人を動かすタイトルに共通する2つの特徴です。1つめは、文字数。

35文字以内でタイトルを作れば、相手は集中して見てくれます。

この法則は826 人に対するヒアリングにおいて、わかりやすいと評価されたスライド、もしくは自分の意思決定に影響があったスライドを分析したところ、スライド内のタイトルの平均文字数が35.4文字だったことから導きました。

この結果をもとに約4000人で実験したところ、成約率アップなどの効果が出ましたので再現性はあります。もちろん、中身によってタイトルの文字数は変わりますが、35文字以内を意識して重要なことに絞ったほうが相手に伝わりやすくなります。

2つめはカタカナと数字の影響です。

これはクライアント企業の社内で飛び交うメールや企業が客に送る宣伝メールの開封率や閲覧率の分析でわかったのですが、タイトルはひらがなと漢字だけでなく、カタカナと数字を含めたほうが相手の目に留まります。

漢字が多いと読む気が失せますし、具体性がないとチラッと見ただけで無視されてしまう傾向があります。

一方、カタカナと数字が含まれたメールは開封される確率が高く、それをパワポ資料のタイトルにも応用してみたところ、カタカナが入ったほうが文章としてバランスが保たれて、数字が入ると信頼度が上がり自分ごととして見る傾向が強くなることがわかりました。

前述したように、相手はA(解決されていない今の状態)からB(解決された未来の状態)への変化を望んでおり、その変化を数字で表現できると信頼度が上がり、自分ごととして捉えます。

意思決定者のヒアリングでは、「スライド内に数字が入っていると主張の裏付けになるので信頼を持つことができる」「そのテーマに関心を持ち、しっかり調べてきたことがわかるので好感が持てる」というコメントが多数ありました。

カタカナを入れてバランスを整え、数字を入れて信頼性を高めることができれば、メールでも資料でも相手の関心が高まり、自分ごと化して情報を取り込んでくれるのです。

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越川 慎司
株式会社クロスリバー代表取締役社長。株式会社キャスター執行役員。元マイクロソフト執行役員・PowerPoint事業責任者。国内通信会社、外資系通信会社、ITベンチャーを経て2005年に米マイクロソフト本社に入社。その後、日本マイクロソフトに転籍し、PowerPoint事業責任者、Officeビジネスの担当役員を務める。2017年に株式会社クロスリバーを設立。AIをフル活用して週休3日でクライアント企業を支援。日本企業529社への支援を通じて業務変革を実現、年間110回以上の講演を提供するなど、幅広く活動。元PowerPoint事業責任者の経験を通じて、成果につながる資料作成等の講座を2万人以上に提供し、受講者満足度は94%。826人の意思決定者へのヒアリング、5万枚以上のスライドをAI解析した結果、「一発OKを引き出す資料作成術」を導き出す。このノウハウを9社4513人に実施したところ案件成約率は平均22%上がり、作成時間は20%減少した。その成果をまとめたのが本書である。

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