3月の緊急会合以降、FRBは2兆ドル規模の資産購入や融資枠の拡大などを実施してきた。また米ドルの下落は、金先物が1800ドル台を突破するに当たっての追い風となっている。

経済活動の再開

しかし、金がすぐに1800ドル台を突破するとは限らない。米国や世界経済の再開がどのように影響するか考慮する必要がある。

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金週足チャート(画像=Investing.com)

米国における経済活動の再開は、以下のような状況である。

  • 14の州で経済活動が段階的に開始、もしくは再開計画を発表している。
  • アラバマ州は30日から、オハイオ州は1日から、ミズーリ州は4日から経済活動を再開し、アイオワ州では1日からレストランやモール、フィットネスセンター、図書館、小売店を限定的に再開する。
  • 各州の知事による自宅待機命令とそれに続く経済活動の再開は、政治的にも重要な焦点となっている。
  • ミネソタ州やミシシッピ州、コロラド州、モンタナ州、テネシー州、ジョージア州、オクラホマ州、アラスカ州、サウスカロライナ州は、数週間に及ぶ都市封鎖の後に経済活動を再開する予定、もしくは既に再開している。
  • テキサス州は先週、部分的に経済活動を再開したが、外出禁止令の期限は30日までと発表した。
  • 新型コロナウイルス流行の中心となっているニューヨークは、12段階の再開計画を立案してる。
  • ニュージャージー州はロックダウン解除前に到達すべき基準を設定しているものの、財政破綻の可能性もある。

新型コロナウイルスによる米国における死者数が約6万人、感染者数が100万人となっている。

経済活動の再開で感染拡大

米保健当局は、経済活動の再開が感染拡大に繋がる可能性を指摘している。国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ氏は、効果的な治療方法が見つからない場合、米国は「悪い方向へ向かう可能性がある」と述べた。

しかし、ダウ平均株価は年初来で15%安に留まっている。

カーネギーメロン大学で公共政策を教えるジョナサン・コールキンズ教授は「以前のように経済が再開できると考えるのは現実的ではないだろう」と述べた。その一方で「しかし、人々の移動制限を緩和し、経済を活性化する必要がある」と語った。

さらに、以下のように述べた。

「レストランの厨房と工場では、多くのレストランの労働者が工場よりもずっと密接に働くことを余儀なくされている」

金は短期的には1700ドル~1720ドル

経済活動の再開には時間を要するため、悲惨な第2、3四半期GDPを回避しようとするトランプ政権にとって向かい風だろう。

OANDA社のアナリストであるJeffrey Halley氏は「大局的に見れば、金は長期的には1オンス1640ドルから1740ドルのレンジで推移し、短期的には1オンス1700ドルから1720ドルのレンジで値動きするだろう」と述べた。

テレビでは、営業を再開している閑散としたレストランが映し出されている。テネシー州のCool Springs BreweryのオーナーであるChristopher Hartland氏は「店舗の業績は90%減速している」と述べた。

世界的現象

しかし、これは米国だけの現象ではない。

インドでは、新型ウイルスの感染がほとんど確認されていない地域での外出規制を緩和したが、当局は新たな課題に直面している。

インドのケララ州とグジャラート州では、店舗の再開にいち早く動いている。一方、タミル・ナードゥ州やマハラシュトラ州のような主要な州は、少なくとも5月3日までは店を閉めたままにしておくことを示唆している。

ロックダウンの影響により、イタリアでは債務対GDP比が155.7%まで上昇し、失業率は11.6%にまで上昇する可能性がある。予想では、成人の5分の1に当たる1000万人のイタリア人が貧困へ陥ると見られている。

このような状況は、金にとって追い風となるだろう。(提供:Investing.comより)

著者:バラーニ・クリシュナン