M&A(企業買収)の手順の中で、専門家選びは結果を大きく左右する工程です。各専門家にも得意分野・苦手分野があるので、相談先は慎重に決めなくてはなりません。そこで今回はM&Aの基本的な手順に加えて、各専門家の役割や選び方のポイントを解説します。

専門家にはどのタイミングで依頼する?中小企業のM&Aの基本的な手順

M&Aにおける弁護士・税理士の役割とは?
(画像=PIXTA)

M&A(企業買収)は企業の今後に大きな影響を及ぼすため、売り手・買い手のどちらも慎重に物事を進める必要があります。まずは、中小企業がM&Aに取り組む場合の大まかな手順を確認していきましょう。

M&Aの一般的な手順 概要
【1】M&A戦略の計画 M&Aに取り組む目的を明確にし、今後の計画を立てる。
【2】仲介会社や専門家の選定・契約 目的に合致する相談先を決めて、依頼内容や秘密保持に関する契約を結ぶ。
【3】相手企業の探索と選定 事業分析や業界調査、紹介資料の提示などを経て、相手企業を探索・選定していく。
【4】相手企業との交渉や調整 トップ面談や諸条件の交渉などを行い、お互いの契約内容を調整する。
【5】基本合意の締結 基本合意書や意見表明書を作成し、仮契約として基本合意を締結する。
【6】デューデリジェンスの実施 譲渡企業の財務状況などに関して、譲受企業が専門家に調査を依頼する工程。
【7】クロージング ここまでの工程に問題がなければ、最終譲渡契約を締結してM&Aを実施する。

上記を見てわかる通り、一般的なM&Aでは早い段階で専門家に相談をします。各専門家はその後の工程に深く関わっていくので、専門家選びがM&Aの結果を左右すると言っても過言ではありません。

弁護士・税理士はなぜ必要?M&Aで専門家が必要になる3つの理由

仲介サービスの登場によって、最近では独自にM&Aの相手を探す企業も見られるようになりました。しかし、成約までの工程が複雑なM&Aにおいては、専門家に依頼することが望ましい理由がいくつかあります。

ひとつ目は、M&Aでは専門知識や経験が求められる工程が多いこと。交渉や調整などさまざまな場面で高度な知識が求められるので、不利な契約を結ばないためにも専門家の力が必要になります。

また、「財務・税務・法務」に関するリスクが潜んでいる点も、M&Aでは注意しておきたいポイントです。M&Aでは成約の直前にある問題が発覚し、破談になるケースも少なからず存在します。破談になると、貴重な時間やコストを無駄にする恐れがあるので、財務・税務については税理士、法務や契約に関しては弁護士のように、各専門家からのサポートを受けることが望ましいでしょう。

さらに、大きな資金が動くこともあるM&Aでは、「節税対策」も意識しなければなりません。特に売り手側の企業は、多少のコストをかけてでも節税に関するアドバイスを受けたほうが、税利益負担減少を抑えられる可能性があります。

専門家・相談先選びで押さえたい3つのポイント

M&Aの相談先としては、M&A仲介会社や金融機関、各士業の事務所などが挙げられます。いずれも専門家と呼べる存在ですが、M&Aを成功させるには以下の点を意識しながら、慎重に専門家を選ぶことが重要です。

1.料金体系と価格の透明性

相談をする専門家選びにおいて、「コスト面」は特に意識しておきたい部分です。M&Aの料金は様々で業界にも悪徳業者は存在していますし、M&Aでは成約後に数百万円~数千万のコストが発生するケースも珍しくありません。

事前にコストを把握するためにも、「料金体系と価格の透明性」は外せないポイントです。ただし、料金の安さが成功につながるわけではないので、コスト面は判断基準のひとつとして認識しておきましょう。

2.専門性の高さや実績

「業種・業界に関する知識があるか?」や「地域に精通しているか?」などの専門性も、事前に確認しておきたいポイントです。専門家ごとに得意分野は異なるので、自社が求めるアドバイスをしてくれるかどうかは慎重に見極めなくてはなりません。

取り扱ってきた案件の数だけではなく、規模やジャンルに関する実績も意識しながら、しっかりと情報収集をしておきましょう。

3.自社との相性

豊富な知識や経験を有していても、自社との相性が悪ければ各工程はスムーズに進みません。当初の計画通りにM&Aを進めるには、円滑にコミュニケーションを図れる専門家や、親身になってくれる相談先を選ぶことが大切です。

自社との相性は担当者によっても変わってくるため、実際に相談をしてから「最終的に依頼するかどうか」を検討することが望ましいでしょう。

成功を左右する専門家は、できるだけ時間をかけて選ぶ

M&Aを専門家に相談する場合は、ほとんどの工程でサポートを受けられます。その点は非常に心強いですが、専門家の動きによってM&Aの契約内容は変わってくるため、相談先は慎重に決めることが重要です。

専門家選びはM&Aの結果を左右するので、できるだけ情報収集や分析に時間をかけたうえで、納得できる相談先を選ぶようにしましょう。(提供:企業オーナーonline


【オススメ記事 企業オーナーonline】
事業承継時の「自社株評価」どのような算定方法があるのか?
不動産を活用し、事業承継をスムーズに進める方法とは?
法人税の節税対策をご存知ですか?
職場の「メンタルヘルス対策に関わる課題・悩みあり」が6割以上
経営者必見!「逓増定期保険」で節税する時のメリット・デメリット