就労状況や資産額を問わず、最低限の水準の生活を送るために必要な金額を、政府が全ての国民に支給する「ユニバーサル・ベーシックインカム(Universal Basic Income/最低限所得保障制度)」。

最大のハードルである財源確保をクリアしていないことに加え、過去の実験から十分な恩恵を立証できていないことなどを理由に、実現は難しいとの見方が強かった。

しかし新型コロナウイルスの感染拡大を機にスペインが導入準備を進めるなど、コロナの影響による経済立て直し策として、各国で議論が再燃している。

「コロナ終焉後も継続」を視野に入れているスペイン

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(画像=VectorMine/Shutterstock/ZUU online)

ワールド・メーターズのデータによると、5月13日までにスペインの感染者数は約26万9000人、死亡者数は約2万6000人を突破。ロックダウンから1カ月後の4月14日には、建設、製造業などリモートワークが不可能な労働者は仕事に戻ることが許可されたものの、第1四半期の国内総生産(GDP)は前期比マイナス5.2%と大幅に減少した。

国際通貨基金(IMF)は最新の見通しで、2020年のスペインの実質GDPをマイナス8.0%(前年比10ポイント減)、消費者物価をマイナス0.3%(前年比1ポイント低下)、失業率を20.8%(前年比6.7ポイント悪化)に引き下げた。

現在承認待ちのベーシックインカムの導入には、こうした自国の経済的打撃を緩和する意図がある。ホセ・ルイス・エスクリバ社会保障・移民相の説明によると、手始めに最も経済的苦境に立たされている最低所得層への支給を開始後、コロナ終焉後も国の経済構造の一部として定着させることを視野に入れているという。

所得データベースSalary Explorerによると、スペインの2020年の平均月収中央値は5020ユーロ(約59万円)だが、「最大2割の世帯の月収入が246ユーロ(約2.9万円)未満」と所得格差が存在する点を、エスクリバ社会保障・移民相は指摘している。そのため、こうした格差を緩和すべく、コロナが爆発的に拡大する以前から、ベーシックインカムを組み込んだ政策が進められていた。