かつてCMソング「レナウン娘」が一世を風靡したアパレル大手レナウンが、まさかの経営破綻となった。新型コロナウイルスの影響による、初の上場企業の倒産だ。コロナ禍で厳しい状況にあるアパレル業界。コロナを機に破綻するアパレル企業は、今後も出てくるのだろうか。

アパレル大手がまさかの倒産

レナウン
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

5月15日、レナウンは東京地方裁判所から、再生手続開始決定および管理命令を受けたことを発表した。事実上の経営破綻である。民間調査会社の東京商工リサーチによれば、手形決済資金8,700万円の不足が直接的な原因となったようだ。

新型コロナウイルスの影響は大きい。感染拡大を防止するために外出自粛が要請され、同社の主要な販路である百貨店や量販店を訪れる人が激減。都市圏の百貨店や量販店の多くは、客足の減少に対応して休業を決めた。その結果、レナウンは「当社の商品は著しい販売減少をきたすこととなりました」と説明している。

売上減の中でも売掛金の回収に力を入れたが、最終的に支払いに必要な資金を準備することができなかったという。2019年10月の消費税の増税や、暖冬による防寒衣料の販売が不振だったことも響いた。

東京商工リサーチによれば、負債総額は138億7,900万円にのぼる。上場企業の倒産は食品製造・販売を手掛けるシーベル以来のことで、16ヵ月ぶりだ。

実は最終損益の赤字が2期連続で続いていた

コロナがレナウンの業績に打撃を与えたことは間違いないが、ビフォーコロナにおいても実はレナウンは経営不振に陥っていた。

同社は1902年に創業後、百貨店や衣料品店に対する卸売事業でビジネスを拡大してきた。しかし、近年は消費者の購買行動が変化し、節約志向によって衣類への支出も減ったことで、売上高が低迷していた。

直近3期の業績を見ると、売上高の減少が見て取れる。2019年12月期は変則的な10ヵ月決算であることを考慮しても、売上高の下げ幅は大きいと言わざるを得ない。

・2018年2月期の売上高:663億9,600万円
・2019年2月期の売上高:636億6,400億円
・2019年12月期の売上高:502億6,2000万円

最終損益も2期連続で赤字。2019年2月期はマイナス39億4,200万円、2019年2月期は赤字額がさらに膨らみ、マイナス67億4,200万円となっていた。

もちろん、レナウンは何も対策を講じなかったわけではない。共有経済の流行に乗り、ビジネスウェアのサブスクサービス「着ルダケ」の事業を本格化させ、EC(電子商取引)部門の売上強化にも努めていた。

しかし売上金の回収が進まず、資金調達もうまくいかなかったことから、最終的には業績の改善には至らなかった。

日本のアパレル業界に襲いかかるコロナ

レナウンと同じように業績が低迷しているアパレル企業は少なくなく、さらに新型コロナウイルスによるダメージも受けている。アパレル大手のオンワードも、その一つだ。

オンワードは、売上高は維持しているものの営業利益は下降気味で、経営状況が悪化しつつある。2019年10月には、日本国内や海外の600店舗を閉鎖するという計画が明らかになった。不採算店舗を削減し、利益率を高める狙いだ。

EC部門も強化し、大胆な構造改革によって業績改善を誓ったが、新型コロナウイルスの影響で百貨店の休業が相次いだことは、オンワードにとっても大きな痛手だった。年初は600円台だった株価も、新型コロナウイルスの影響で現在は300円台まで落ち込んでいる。

アパレル大手の三陽商会も、厳しい状況にいる。5月20日には、東京・銀座の旗艦店ビルを売却することを検討していることが明らかになった。コロナの影響で売上が低迷し、キャッシュフローを改善するための苦肉の策なのだろう。

大手だけではなく、中小のアパレル企業も経営も厳しさを増している。東京商工リサーチによると、コロナ関連の倒産件数は、アパレル関連企業だけで21件に上っている。

事業再生に向けて300名の希望退職者を募集

コロナによって、アパレル企業にとって売上減は不可避の状況だ。しばらくは、経営破綻を逃れるための資金調達やコスト削減が求められるだろう。一方で、アフターコロナに向けた「仕込み」も重要である。

事業再生に向けて経費削減や不採算店舗の閉鎖などの「仕込み」を行っているレナウンだが、5月28日、ついに約300名の希望退職者の募集に踏み切った。2019年12月時点の従業員数は905名なので、約3分の1も従業員数が減ることになる。

厳しい状況が続くアパレル関連業界だが、この状況を堪えて生き延びていくために、様々な選択を強いられていると言えるだろう。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/MONEY TIMES

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