出遅れ3銘柄特選
世界が新型コロナウイルス一色に染まった2020年前半。株式市場では主要指数の暴落と、その後の驚異的な戻りが相場史に刻まれた。こうした中、大きな物色テーマとなったのが昨年から続く「5G」に加え、企業のあらゆる業務をIT化する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」、そして「コロナ対策」だ。改めて焦点を当て、その出遅れ銘柄に注目する。
●5G:santec――中国向け拡大余地、 円安も見直し材料に
santec(6777・JQ)は5G商用化で業績に追い風を受ける小型株だが、コロナ・ショックからの戻りはまだ限定的。今3月期は世界経済の減速を跳ね返し前期比増益を計画する。
同社は光パワーモニターなどの光通信部品と、独自技術を駆使した測定器が主力。5Gの本格稼働に伴う基地局投資が、需要の拡大につながる。新型コロナで世界経済が混乱したものの、連結営業利益は前期が前々期比2割増の9.4億円に拡大した。今期も9.5億円と続伸を目指す。
5Gをめぐっては、中国が米国との覇権を賭けて振興を強化している。santecは同国の通信機器大手ファーウェイにも測定器を販売しているとみられ、伸び代は大きい。足元の円安進行もプラス材料に、年初来高値をまだ25%程度下回る株価を見直したいところだ。
●DX:クレスコ――IT投資意欲は旺盛、半値戻しから上値試す
DX関連株は、独立系システムインテグレーターのクレスコ(4674)を狙いたい。
同社はソフトウエア開発が主力で、顧客は金融、公共サービス、流通など多岐にわたる。あらゆる業界で加速する投資を取り込み、前3月期はDX案件が収益を下支えした。
特にクラウドやAI(人工知能)に関連した需要が強く、今期の連結営業利益の見通しは34億円(前期比4.4%減)と落ち込みは軽微だ。企業のDXへの投資意欲は中・長期的に高水準の伸びが見込まれ、新型コロナをきっかけに定着しつつあるテレワークも追い風となる。
株価は1月高値2040円から3月安値1007円までの下げ幅の半値戻しを5月末に達成した。有力テーマに乗る銘柄としては依然出遅れ感がある。
●コロナ対策:アイカ工――抗ウイルス技術で飛躍、業績見通し底堅く
ウィズ・コロナ(新型コロナとの共生)の時代において、抗ウイルス加工品の需要が高まることが予想される。建材のアイカ工業(4206)の技術に注目が集まりそうだ。
同社の抗ウイルス作用のある「ウイルテクト」を使ったメラニン化粧板などを展開する。家具や什器(じゅうき)の表面のウイルスを4時間で99.9%減少させるほか、消毒剤と併用しても効果が落ちない。
クラスター(感染者の集団)発生の恐れが強い介護・医療施設や教育現場に広がり、昨年には床材も投入した。新型コロナの発生源とされる中国でも病院などに採用されるなど、大型案件の獲得にも成功した。
今3月期の連結営業利益予想は145億円(前期比31%減)と、経済の悪化を考慮した。ただ、既に中国工場が再稼働したほか、ベトナムなど新型コロナの影響が少ない国にも同社は強い。原材料の輸入ナフサ価格が値下がりしたことも追い風だ。(6月5日株式新聞掲載記事)
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