矢野経済研究所
(画像=PIXTA)

5月31日、新型コロナウイルスの感染者数が世界で600万人を越えた。米ジョンズ・ホプキンス大によるとこの10日間で新たに100万人が感染、南米、ロシア、中東、インドで急増しているという。とりわけ、ブラジルの感染者は1ヵ月で5倍に拡大しており、冬を迎えてもう一段の感染拡大が懸念される。
日本はようやく落ち着きを取り戻しつつある。とは言え、第2波、第3波のリスクが燻る中、正常化への道は手探り状態である。
こうした中、米国と中国、それぞれの振る舞いと対立が世界の危機と不透明さを助長する。

米国の感染者は180万人、死者は10万人、失業者は4,000万人を越える。大統領選を控えたトランプ氏は、非難の矛先を中国に向ける。「ウイルスの発生源は中国であり、当局の初動対応の失敗がパンデミックを招いた」と。
もちろん、中国はこれに反発、WTOを “親中国” 機関と決めつけ、そこからの離脱を表明した米国を「国際協調主義に反する」と批判する。
しかし、中国もまた国際社会への挑発を続ける。4月、中国は周辺国との領有権問題が残る南シナ海に新たな行政区を一方的に設置、実効支配の強化をはかる。5月には「国家安全法制」の香港への適用を決定、英中合意にもとづく「一国二制度」を有名無実化、民主派から “高度な自治” の可能性を奪う。

米国はこれに直ちに反応、制裁措置の発動を表明する。特例として香港に認めてきた関税や査証における優遇措置を取り消す。
一方、その米国も社会の深層に根付く差別と分断が露わになる。白人警察官による黒人への暴行死を契機としたデモは、やがて騒乱となり、暴動を呼び込み、40都市以上で夜間外出が禁止された。トランプ氏は暴力の制圧に向けて “連邦軍の投入も辞さない” と警告する。

2018年3月、米国が表明した対中貿易赤字の是正措置に端を発した両国の対立は、知的財産権、安全保障問題を巻き込み、新型コロナウイルスで増幅され、収束の見通しはまったく立たない。 米中2大大国の対立に翻弄されてきたこの2年間、世界が見てきたのは両国の指導者に共通した覇権主義的、非民主的、強権的な資質である。つまり、いずれも世界の希望とはなり得ない、ということだ。奇しくも今日は6月4日、何事もないことを祈る。

今週の“ひらめき”視点 5.31 – 6.4
代表取締役社長 水越 孝