日本初のコンビニエンスストア・チェーン「セブン-イレブン」を立ち上げ、「小売の神様」と呼ばれたカリスマ経営者・鈴木敏文 氏が、経営に際し掲げ続けた二大スローガン「変化への対応と基本の徹底」。43年間、それを実践するため、繰り返し繰り返し幹部・社員に語った肉声の言葉から、222項を厳選し、簡潔かつ明快な解説を加えた言行録3冊セット『鈴木敏文の経営言行録』(税込14,850円、日本経営合理化協会出版局)は、多くの経営者に“気づき”と“感動”を与えています。
本記事は、同書3巻「仮説と検証の仕事術」のP26-35から、一部を抜粋・編集して掲載しています。
目次
「仮説と検証」はすべての仕事において成果と改革を可能にする。
仮説を立て、結果を検証し、次の仮説に活かす。仮説と検証は、商品の販売や開発だけに限らず、すべての仕事にあてはまる。
話は飛ぶが、東日本大震災が発生した夏、電力の供給不足への対策として、東京電力および東北電力管内で大口需要家については、前年の夏と比べ、15%の電力使用制限が義務づけられた。これに対し、数多くの店舗を展開するセブン-イレブンでは自主行動計画を策定し、最大25%削減という非常に高い目標を設定した。
この目標を一店一店の店舗でどのように実現するか。一つは本部負担による省エネタイプの設備への入れ替えだ。しかし、新しいハードやシステムによる節電対策では、約10%の削減が限界だった。
残る15%減の達成に向け、期待を担ったのがスマートセンサーの設置だった。店内の設備ごとの電気の使用状況を細かくモニターできる。
このスマートセンサーを設置したねらいは、電気の使用状況を「見える化」することによって、オーナーをはじめ、パートやアルバイトのスタッフ一人ひとりに「気づき」を与え、意識を高めて、省エネに積極的に取り組んでもらうことにあった。なぜなら、仮説と検証は、節電対策においても成り立つと考えたからだ。
複数ある空調のうち、店内がどのようなときにどれだけ空調をオフにできるか。店内の温度も、外から入ってきたお客様の体感温度で考えたとき、何度が適温か。揚げ物を揚げるフライヤーも、調理時間をどう調整すれば、消費電力をおさえられるか。仮説を立て、実行し、結果をスマートセンサーのデータで検証する。